28 1996年5月号
府中央卸売市場の流通機能

複合施設化で効率経営が必要 価格決定は大型スーパー主導

 大正7年の米騒動がきっかけで安定した価格供給を目的に中央卸売市場法(大正12年)が生まれ、現在、
全国88カ所で卸売市場が開場しています。
府下では大阪市経営の本場(福島区)、東部市場(東住吉区)、府経営の中央卸売市場(茨木市)が府民の
台所を支えています。
ところが、府の卸売市場の取扱い金額は平成2年度1758億3900万円から同6年度は1602億4900万円と
減少傾向です。
経常損失も平成2年度の5859万円から6年度1億7391万4151円と毎年、赤字を計上しています。
6年度決算では府一般会計から3億9948万円を補填しており、実際は5億円を越える赤字になります。
 減少の原因は、外食産業や大型スーパーが産地直接取引(産直)で卸売市場を通さなくなったことや
輸入商社の直接販売農協の参入があげられます。
 注目は、市場外の取扱い増で価格決定は卸売市場や生産者でなく大口需要者の大型スーパー等が
主導権を握りつつあることです。
零細な生産者や小売店を保護するための卸売業者のセリが省略され、卸売市場の力が一段と弱くなって
います。
しかも、トラックの集中で交通渋滞、排ガス問題をかかえ卸売市場を取り巻く環境は厳しく、確実に
卸売市場の存在が破壊されつつあります。
法的規制や保護によって制度化してきた卸売市場システムの改革が急務です。
 セリが時代遅れとはいえませんが、卸売市場が物流センター機能に陥らないためにも国内の生産地や
経済連、海外とオンライン新しい情報センターを確立してセリに変わる価格決定の主導権を確保する
ことです。
 府中央卸売市場は、約7万7000坪の敷地や施設を提供して賃貸料、取扱い手数料を営業収益とする
一種の不動産業といえます。
午後10時から翌日の午前10時までが卸売市場の時間帯でそれ以降は広大な敷地として空いています。
有効利用で経営効率を高める必要があります。
 卸売市場は府民にとっては近寄りがたい存在で親しみのある市場に開放するために、だれもが自由に
利用できるレストランゾーン。
生鮮食料品の特別販売や各種イベントをおこなう「ふれあい広場」。
食文化や食品のすべてが理解できる「くいだおれ資料館」。
災害用食料備蓄倉庫など市場の利点を生かした食文化の殿堂として複合施設化を図るべきです。
 府として将来にわたる総合的な卸売市場経営の在り方を考えなければならない時代が来たのでは
ないでしょうか。


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