30 1996年7月号
唐突な介護保険制度創設

中途半端な法案は国民が迷惑 将来に渡る日本独自の制度を

 政府は秋の臨時国会に介護保険法案を提出する予定です。
介護保険とは高齢者になったときに介護サービスをうける制度で、病気やケガで使う健康保険のような
ものです。
厚生省が昨年の7月、唐突に言い出したもので1989年のゴールドプラン策定、94年の新ゴールドプランでも
介護保険法は述べられておらず、94年に先進諸国で初めてドイツが創設した公的介護保険に
飛びついたのが実態ではないでしょうか。
その背景は新たな財源確保策と推察されます。
ドイツの介護保険法からは財源確保に都合のよいところをモデルにしており多くの問題点があります。
 実施主体がだれなのか。
厚生省は市町村にと考えているが国民健康保険の赤字問題など財源確保が不明確であり、サービス
提供体制ができていません。
次に、要介護をだれが判定するのか。
判定機関や介護度基準が明確に整備されておらず判定基準は財政に左右される恐れがあります。
ドイツでさえ120万人が申請され20万人が不認定、そのうち約2万人が不服で裁判を起こしています。
 特に在宅介護の給付では現物給付のみで、現金給付はありません。
ドイツでは現物給付と現金給付(介護手当)があり、併用受給も選択できます。
現物給付ヘルパーは1時間当たり46マルクですが、民間ヘルパーは16マルクなので圧倒的に現金給付が
多くなっています。
日本の場合は現金給付(介護手当)が馴染むのではないでしょうか。
世界の高齢者の同居率は、日本56%でスウェーデン5%デンマーク4%、イギリス16%、アメリカ15%、
ドイツ14%と比べるとダントツに高く、また持ち家比率59.8%と在宅家族介護ができる環境にあります。
 現在の要介護状態の高齢者約100万人から急速に2020年には400万人に達すると予測され、現金給付が
ないだけ公的介護マンパワーが必要になり確保にも無理があります。
家族からも、近隣の人からも、親しい人からも自由に介護をしてもらえる現金給付が日本では重要です。
介護保険制度の財源も、税金か、保険かだけでなく民間保険を活用する方式もあります。
そして医療と介護の境目も明確でなく福祉とのかかわりも曖昧で制度の基本的なあり方が十分に論議
されていません。
薬害エイズ問題で国民から喝采を浴びた管厚生大臣としては官僚の尻馬に 乗るのはいかがなもので
しょうか。
いささか急ぎ過ぎです。
法案提出が政界再編 や総選挙に絡ませずに国民主役で行わなければなりません。


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