50 1998年4月号
沈没寸前の日本経済の景気浮上策

大幅減税で大胆な景気対策を ユニークな商品券方式を提言

 政府は減税より公共事業が勝ると16兆円の大型公共投資を低迷する景気浮上策としていましたが、
予算が可決された直後の4月9日、橋本首相は4兆円の減税を発表しました。
それまで政府は、昨年に成立させた財政構造改革法(財革法)で@赤字国債の発行を毎年縮減する、
A2003年までに赤字国債発行をゼロにする規定を主張。一方で建設国債には制約がなく景気対策は
建設国債に頼った公共事業しかできず、赤字国債を財源にした減税を行うには改正が必要としていました。
 数カ月前に作った法律を自ら改正するのは政府のこれ程景気が冷え込むと予想しなかった景気認識の
甘さを認めることになり、橋本首相の失政が指摘されます。
 自民党・加藤幹事長は「これから2兆円程度の減税でどの程度効果があるのか疑問である」と身内からも
否定的な意見が多く、発表翌日(10日)の東証株価が前日より250円35銭安の1万6286円31銭になったのは
経済界の失望感でしょう。
 2月実施の2兆円減税も小規模なため消費喚起に影響を与ず、長期不況を抜け出すためには政府の
小出しでなく大胆な対策で景気を元気づけることが大事です。
 公明では冷えきった個人消費を早急に呼び起こす景気回復の決め手として10兆円の大幅減税が必要と
主張しています。
そのうちの4兆円は国民一人当たり3万円の商品券を支給する特別戻し金を提言。
公共事業1兆円が、GDP(国内総生産)0.2%押上げるのに対し、同額の減税は0.08%に過ぎない試算が
ありますが、商品券方式の採用でタンス預金を防ぎ冷えきった個人消費を呼び起こす起爆剤になります。
 足かせになる財革法は、@建設国債と赤字国債の区分をなくす、A2003年の目標年次を先送りし2.3年
ずらす、B運用弾力条項適用の改正でクリアーできます。
財源は赤字国債ですが、深刻な不況から抜け出すために景気回復浮上策が急務であり、一時的に赤字が
増えても景気回復により増収効果が見込まれ、財政構造改革には支障をきたしません。
 実現に向け大阪府下で署名運動を展開していますので、ぜひご協力ください。

検証 秋田県の第3セクター破綻を調査

 大阪府の第3セクター・泉佐野コスモポリス破産を想定したケースを調査するため3月26日、秋田県林務部を
訪ねました。
 1982年に秋田県と県木材産業協同組合連合会、地元銀行が出資して秋田県木造住宅株式会社(本社・
東京)を設立。
知名度の高い秋田杉などの県産材の需要を拡大するため注文建築や住宅用木材を販売、一時期は収益を
上げていましたが、千葉県で土地を取得、宅地開発を行おうとしたところでバブルが崩壊、経営が破綻し
今年の2月破産宣告しました。
子会社と合わせ負債総額は182億円。
用地は評価額が低く今後の開発は難しく、県が地元銀行に要請し70億円の融資をしたことなど泉佐野
コスモポリスと類似しています。
 当初は任意整理を考えていましたが、県が深く関与してきたことで透明性を確保しなければ県民が納得
しないと判断し、破産の道を選びました。
代表取締役ら4人の役員(いずれも民間)が連帯保証人として一部を弁済、銀行から出向の取締役は
賞与50%カットなど当事者の責任も明らかにされだしています。
県の公的資金の投入はまだ論議されていませんが、当事者間で紛争もなく事務的に淡々と破産処理が
進んでいるのは意外でした。
実直な県民性なのでしょうか、泉佐野コスモとは異質な違いがあります。
秋田県でも、泉佐野コスモポリスの破綻処理には関心を寄せており、府の対応が注目されていることを
改めて認識しました。



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