57 1998年11月号/58 1998年12月号
府財政再建プログラム案に対する提言

府民生活後退せず再建可能 自主財源確保に最大努力を

 財政再建準用団体への転落回避に向けた大阪府の財政再建プログラム案は、財政収入の落ち込みを
強調し、財政危機を招いた要因分析と責任を明らかにしていません。
事業シーリングが中心で抜本的な改革に乏しく、府民への負担増が目立ちます。
そこで、私も参画した府議会公明党で府財政再建プロジェクトチームを結成し、府の財政再建プログラム案を
検証し、1.面的開発プロジェクト、2.職員定数・人事システム、3.府単独の補助金制度、4.自主財源の確保と
民営化の視点から提言をまとめました。
 府は財政再建プログラム案で、施策再構築の美名のもとに、福祉分野で、老人医療費をはじめ、
障害者(児)・母子家庭・乳幼児医療費など、教育分野では私学助成費、府立高校入学金・授業料等の
値上げなど、府民サービスの後退につながる見直し案をしめしています。
府は、府民の暮らし、生活を守るために、全国を先導する形で高い水準のサービスを市町村と一体となって
実施してきましたが、安易に水準超過行政という一言で削減が図られ、府民に負担が転嫁されるとすれば、
自ら地方自治体としての責任と役割を放棄するものです。
府と市町村の協調関係を維持する上で重要な役割を果たしてきた市町村振興補助金も、府民サービスの
現場を担う市町村の役割を尊重し、安易な見直しを行うべきではありません。
私たちの提言によって十分これらの事業が継続できると確信しています。

1.面的開発プロジェクトの見直し
 莫大な事業費が必要な面的開発プロジェクトや鉄軌道整備等の主要プロジェクトは、
@継続中の分譲事業は、早期に完売を図るため、大手不動産会社や宅建関連組合等の民間活力を
結集し、販売の促進に積極的に取り組む。
A新たな鉄軌道整備事業は採算性を十分見極め、見通しがつかない事業については、抜本的な見直し
B計画段階の事業については、当面の凍結。

2.職員定数・人事システム等の見直し
【職員定数の削減】

4年連続の経常収支比率が100を超える異常事態は、人件費の増加が大きな要因となっており、義務的
経費の約4分の3を占めます。
府民サービスや教育水準が低下しない範囲で、思い切った人件費抑制を行う。
(一般行政部門)
 府財政再建プロ案では、今後10年間で2,200人(年間1.4%、10年間で13.4%)の削減だが、組織の
簡素化や事務事業の抑制に重きを置いており、事務処理方法の見直し、OA化等の取組みや非常勤職員や
民間の活用を図ることで最低20%(3,200人)を削減すべき。
(教職員)
 財政再建プロ案の教職員数削減案は、今後10年間で4,800人としているが、現在、50歳から60歳は全体の
約二割を占めており、実際にはこの間に約11,000人が自然退職し、実数には余裕があります。
教育水準を低下させず、契約制度導入や地域・民間人の活用で教育現場の活性化を図り、最小の経費で
最大の教育効果があがるよう努力すべき。
 府は、この数年、いじめや不登校などの教育課題に対処するためと教員総数の確保を図ってきたが、
一向に改善されていません。
単に教員総数を確保するだけなく、教職員の資質向上を図るための取組が重要。
【人事システムの見直し】
 従来の年功序列型の人事システムから、実力評価主義による人事システムを確立。
能力、業績、勤務成績を客観的に評価する基準を確立し、課の参事と主幹のようなスタッフ役職が重複する
職務内容を明確化や役職階級の整理も必要。
【情報化の推進】
 全庁共通のパソコンによる業務の効率化と情報公開の推進に努めるため、職員すべてにパソコン利用を
推進。

3.府単独の補助金の見直し
 国庫支出金を伴わない府単独の補助金 総額は、約423億円。445団体数(平成9年度)にのぼる。
そのうち、昭和49年度以前に発足し、根拠規定のない補助団体数は177団体で、全体の約40%で
約90億円に補助されている。
補助金制度は、まだ自立し得ない団体育成や事業振興を誘導する施策であったが歳月を重ねる中で
惰性的支出となり、府との関係・協力を維持するためだけの惰性的補助も見受けられることから、
昭和49年以前(約四半世紀前)に発足し、根拠規定(法律・条例・交付要綱)のない任意補助金は、
今日的にその役目を終えていると判断し、原則廃止。

4.自主財源の確保と民営化
【自主財源の確保】

@収入未済額の取組(金額は平成9年度)
 収入未済額は579億7000万円。
そのうち、 延滞繰越金は336億2795万円。
不納欠損金は17,286件、59億9503万円にのぼる。
徴収率は94.9%で、平成8年度の94.5%より0.4%向上したが、全国平均96%から見ると低く、増収の
可能性がある。あと1%徴収アップすれば約6億円の増収になる。
A納税部門の徴収強化
 納税部門の徴収強化を図るため、知事または副知事を先頭に、プロジェクトチームを発足させる。
また、国・市町村との連携による徴収システムや安易な不納欠損金を計上しないために民間人を含めた
仮称・不納欠損金処理審査会を設置する。
B府有地の処分
 府有地の処分は、一定の取組が行われているが、本庁、土地開発公社などの全所有地(面積、評価額、
事業目的)を公開し、 低・未利用地を積極的に売却。
不用地の洗出し作業は専門家でつくる仮称・府有地活用審査会を創設、公平な判断をする。
【民営化対策】
@府立の病院の民営化
 府立の5病院経営(平成10年度予算)は一般会計からの繰出金が約207億円と府の財政に大きな負担に
なっている。
人件費の割合も、中宮病院81.3%、羽曳野病院61.7%、母子保健総合医療センター54.3%、成人病センター
51.0%、府立病院47.2%。
民間病院と比べ格段に優遇。
 府立病院、羽曳野病院、新千里病院は、当面、職員配置、勤務条件、給与体系等の見直し人件費を
削減する。
民間病院並みにすれば人件費は30%(約15億円)は削減可能。
3病院は性格上から民営化しても支障はないと判断し、民営化を推進する。
 中宮病院、成人病センター、母子保健総合医療センターは、高度・特殊医療など繰出金の細目を見直し
削減対象とし、各部門で積極的に民間委託を導入する。
A公的施設の廃止や移管・委託
 府の施設経営で、@採算性、A運営方法利用・存在価値を基準に当初の目的を達したもので、市移管・
民間委託に移行する等、一般会計の繰出金約3億円を削減。
B管理運営する法人の廃止や委託大阪センチュリー交響楽団、府民劇場、ワッハ上方等を施設運営する
府文化振興振興財団等を組織機構を省力化する。


大阪府の財政再建プログラム案の課題商都大阪の再生に英知の結集を

 長年にわたり、府が全国を先導し、府民のために高い水準の行政サービスの提供を市町村と一体となって
実施してきましたが、財政危機や基準超過行政の名のもとに削減が図られるとすれば、それは自ら
地方自治体としての責任と役割を放棄する自殺行為です。
これまでと一転して全国を先導し、時計の針を逆回りさせる結果となります。
 どんな厳しい時代が来ようとも、府民福祉に直結した行政サービスは、何より優先していく決断がなぜ
できないのでしょうか。
深刻な不況が続く今日だからこそ、社会的弱者を守るべきであり、次代の後継者を育てる教育への投資も
常に充実させていかなければなりません。
「入りを図り、出を制す」の通り、まず歳入増への取り組みを強化することが大切です。
ここを避けて歳出削減を叫んでも府民の理解は得られません。
自主財源の確保と国への支援要請はもちろんのこと、抜本的には、元気のない大阪経済を官民を挙げて
活性化させる以外に道はありません。
従来から大阪府では、新産業の育成や中小企業の振興策には重点政策として力を入れてきましたが、
従来からの取り組み手法の延長に他ならず、今日の危機的状況に対する対応策としては極めて具体性に
乏しく不十分です。
金がないなら知恵を出さなければなりません。
厳しい苦闘を潜り抜けてこそ有能な人材は育ちます。
広く内外の英知を結集し、職員全員が総力を挙げてこの危機に取り組まなければ後世に大きな禍根を
残すことになります。
その上で、本提言に示す徹底した行財政改革を断行し、とりわけ支出の大半を占める人件費に大胆に
切り込んでいくことが最大の課題といえます。



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