63 1999年7月号
新しい公共事業手法・PFI 

民主導で効率的社会資本整備 財政健全化に積極的な導入を

 大阪府を始め自治体の財政悪化、民間の投資意欲の減退の中で、景気浮揚策として、1992年に英国で
導入されたPFI方式が注目されています。
 財政の健全化を図るため、これまで国や地方自治体など公共部門が主体で整備してきた道路、橋、
空港などの社会資本整備を民間主導で行おうとするものです。
民間資金を活用して社会資本を建設する一種のプロジェクト・ファイナンスです。
資金調達だけでなく設計、建設、維持管理、運営まで全面的に民間事業者が責任を負うシステムです。
したがって、公共部門は社会資本の生産主体から、サービスの調達主体に転換することになります。
 英国では、道路、地下鉄、高速道路、鉄道等の交通プロジェクト、病院、学校、刑務所等の施設建設、
橋・上下水道整備など広範囲の公共事業で、98年3月までに約90億ポンド(約2兆4000億円)の実績を
残しています。
従来型の公共事業と比べ約20%のコストダウンに成功しています。
PFIをうまく導入すれば、日本の多くの自治体が瀕死の財政状況からの脱出と民間需要の喚起の
切り札になります。
日本では、公共サービスは官の専売特許とされてきました。
公共サービスを民間が行うことに官側に強い抵抗がありますが、官主導の偏った概念を払拭しなければ
なりません。
従来の政府の公共投資手法では景気回復も望めず、根本的な改革が必要です。
 第三セクターと違い、PFIは民間にリスクがかかるので事業の成功性がないと民間は手を引きます。
官民の役割分担を明確にし、パートナーシップで立ち上げることが重要です。
具体的にPFIは、民間が施設の建設、運営管理を行い、その利用料金等でコストを回収します。
投資資金を回収後、公共にその施設を移管する方式(BOT)や、資金回収後も民間が施設を所有し続ける
方式(BOO)あります。
その他に、施設の建設・運営管理する民間に公共が一括して利用料金を支払うサービス提供型と
民間事業者と公共の双方が出資するが、運営は民間事業者が行うジョイント型と多様なタイプがあります。
64 1999年8月号
新しい公共事業手法・PFI 

資金調達の負担軽減の切札 自治体・民間企業・市民一体で

 枚方市が京阪電鉄枚方市駅前のクラボウ工場敷地の一部を購入し、総合文化会館建設を計画したが
折りからの財政縮減の下で全体構想を断念しました。
現在は広い敷地が残ったままです。
枚方市だけでなく税収が少なくなればお役所は公共事業を縮小します。
税収の範囲で予算執行するなら誰が首長になっても務まります。
税金を使わなくても公共事業を行う発想がなければこれからの自治体の将来はないでしょう。
 枚方市は古くから京街道の宿場町として栄え現在40万都市でありながら、シティホテルがありません。
既に自治体がホテル経営をする時代ではありませんが、PFIを活用すればホテル建設が可能です。
 例えば、市が所有するクラボウ跡の遊休地をホテル業者(開発業者)に無償提供し、ホテル業者にホテルと
文化会館を建設、維持、管理、運営してもらいます。
市は文化会館部分をホテル業者から数十年間、賃貸借することで資金調達の負担が軽減され初期投資が
少なくすみます。
浮いた財源を他の多くの公共事業を行うことで、民間企業の事業機会の拡大になり、地域経済の活性化に
つながります。
管理、運営を民間が行うので市民会館を24時間営業することも可能になり、利用者である市民にもメリットが
生まれます。
PFIは、コストを下げるだけでなく公共サービスのあり方まで改革できます。
 大阪府でも枚方市-高槻市間の仮称・淀川新橋の橋梁工事や浜寺公園のプール改装工事、
立体駐車場などの土木建設工事が中心ですが庁内プロジェクトチームで導入の検討に入りました。
府新庁舎建設もPFIが導入できますが、建設費約1365億円に対し民間所有になるので建物の固定資産税
約574億円を大阪市に支払わなければなりません。
 市町村が事業者の場合は還元があり負担がゼロになりますが、都道府県に対しては減免処置などを
取らなければ活用が困難で、実行への制度整備が急務です。
 さきの通常国会でPFI推進法が成立、自治体・民間企業・市民にとって意義のあるPFIを、日本でも課題を
解決し育てて行くべきです。


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