65 1999年9月号
大阪・枚方 交通渋滞の検証@

自動車利用の工夫で渋滞緩和 公共交通サービス向上がカギ

 建設省の第三次渋滞プログラム調査によると、渋滞による全国の経済損失は年間12兆円。
国民一人当たり約10万円のロス。
時間的な損失も一人当たり年間約42時間になります。
近畿の渋滞ポイントは480カ所、そのうち枚方市内は9カ所もあります。
その原因に道路状況があります。
 大阪・京都間の幹線道路(国道)は、名神高速道路、国道1号、171号の3本ですが、東京・横浜間は、
東名高速道路、首都高速1号羽田線、同湾岸線、国道1号、15号、466号の6本の幹線が走っています。
比較すると大阪・京都間はあまりにも幹線道路が少なすぎます。
そのため慢性的な渋滞を引き起こし、名神高速が渋滞すれば、中間にある枚方市内は大渋滞です。
 第2名神高速、第2京阪道路の建設計画がありますが、道路増設だけでは一時的に緩和できてもいずれ
通過車両が増え渋滞を引き起こします。
抜本的な総合的な交通システムが必要です。
車の利用者が、地域で利用方法を工夫、変更することで渋滞が緩和できます。
 枚方市の交通事情を中心に大阪府の交通渋滞の検証を今月号から数回に分けて紹介します。

鉄道利用システム
1.パークアンドライド(マイカーを最寄り駅に駐車し、電車に乗り換えて会社まで通勤する)、
2.キスアンドライド(最寄り駅まで家族の人に自動車で送ってもらう)、
3.新しい鉄道の導入(高速、低床、低騒音の特徴をもった高機能路面電車=LRTライト・レール・トランジット。

バス利用システム
1.昼間割り引き料金制度、
2.高齢者、障 害者の利用サービス策、
3.バス優先策、
4.コミュニティバス。

物流の効率システム
共同輸送、共同荷捌きで合理化、効率化

高度道路交通システム
ITS=インテリジェント・トランスポート・システム。

その他
1.時差出勤、
2.フレックスタイム、
3.ノーマイカーデー、
4.大阪名物ゴト払い対策(5、10日)、
5.ノー出勤・自転車利用、
6.違法駐車対策

66 1999年10月号
大阪・枚方 交通渋滞の検証A バス利用システム

渋滞緩和と高齢者社会参加策 高齢者バス利用半額制度提言

 枚方市内のバス利用の課題は、
@マイカーの利便性でバス利用者が減少し採算性の悪化、
A朝夕ラッシュ時の道路混雑で鉄道駅へのバス運行の定時性の低下、
B屋根のないバス停や高齢者や障害者が乗降しにくい車両などがあげられます。
 改善策は、
@バスを小型化し均一料金制導入で採算性を確保。
Aバス優先レーン・専用レーン、バス優先信号の導入で走行性を向上。
B路線バスのない地域や生活道路にコミュニティバスを運行しバス網。
C屋根やベンチをつけたバス停やバスの接近を知らせるバスロケーションシステムを採用しバス利用
サービスを向上させることが考えられます。
しかし、枚方市内のバス運行は民間事業者であり行政の具体的な施策が求められます。
 欧米の街角では高齢者をよく見かけますが、日本ではほとんど見かけません。
高齢者は自宅にいるものだという風潮がいまだ根強いなかで、多くの高齢者が手軽に外出できる社会を
目指さなければなりません。
そのため身近な交通機関であるバス利用システムを提言します。
 高齢者・障害者がバスの乗降をしやすくするため低床式やリフト付きバス車両導入は当然です。
以前から高齢者のバス無料化の要望が強くありますが“枚方市営バス”でないため実現は困難です。
そこで、市内を走る京阪バスは昼間利用者を確保するため利用時間が午前10時から午後4時迄であれば
2割引の割引回数券(3,000円で1区間220円券が17枚)を販売していますが、その割引回数券を枚方市の
65歳以上の高齢者(約46,000人)に限り「高齢者昼間利用半額券」にしてはいかがでしょう。
 他市の例を参考にすれば高齢者の約60%の利用で27,600人が対象。
月1回、年12回の発行(17枚×220円×12回×0.5=22440円)で6億1934万円の売上を計上。
通常割引きから3割の減収分(同3億1188万円)を差引いても3億746万円のバス事業者の増収になります。
枚方市が割引券の発行郵送経費(約200万円)を負担するだけで高齢者の社会参加を促進するとともに
交通渋滞緩和策になります。
ぜひ実現に向け働きかけをして参ります。
67 1999年11月号
大阪・枚方 交通渋滞の検証B 新鉄道LRT

人や環境にやさしい路面電車 地方都市で復活の機運高まる

 日本の都市交通は自動車を中心に発展してきました。
その反面、多くの都市では交通渋滞や排気ガスなどによる環境問題の反省から廃止傾向にあった
路面電車がクローズアップされています。
路面電車は1895年(明治28年)、京都市で米国製1両編成16人乗りが初めて運行されました。
1932年(昭和7年)の65都市、82事業者、営業距離1400Kmをピークに、急速なモータリゼーションの影響で
「自動車の通行の妨げ」「速度が遅い」と邪魔もの扱いされ廃止が相次ぎ姿を消していきました。
現在は19都市、20事業者(公営5、民営15)、250kmで運行されています。
 欧米では80年代から省エネルギーを目的にしたLRT(ライト・レール・トランジット)の導入が相継いで
います。
LRTは地球温暖化の原因となるCo2(二酸化炭素)の排出量が自動車に比べて約8分の1、ゴムパット入り
車輪を使用し騒音を押さえると共に床面を低くして高齢者にも優しい構造にした軽快電車(LRV)を使用した
輸送機関です。
バスに比べ時問が正確、階段の上り下りがなく高齢者や障害者でも乗りやすい、地下鉄より建設費が
10分の1程度で済むなどの理由から各地でLRTで導入の検討が進められています。
 札幌市交通局では既存路線のループ化を検討。
小樽市では、現在廃線になっている手宮線を復活させ大型商業施設マイカルまで約5kmを延伸する計画。
宇都宮市では栃木県と宇都宮市街地検討組合でJR宇都宮駅〜清原工業団地間の新交通システムとして
LRTを検討。
埼玉県浦和市と大宮市に挟まれた与野市では、3市合併構想のなかで3市結節の新交通機関として検討。
多摩東部地域の武減野市、三鷹市、調布市、田無市、保谷市の5市は南北方向の新交通システム(LRT)の
導入を東京都に要請。
岡山市では、市民団体(RACDA)が中心となり新路線計画を提言し行政も具体的な調査に着手。
既に熊本市交通局は、日本で初めて97年8月にLEVを導入、広島電鉄では市の深刻な交通渋滞に対応する
総合交通体系の見直しのなかで99年3月に5連接のLEVを購入する等新しいタイプの路面電車の導入の
機運が高まっています。
次号でLRT導入の可能性と課題を検証します。
68 1999年12月号
大阪・枚方 交通渋滞の検証C 高規格路面電車

自動車交通重視から人重視に LRT導入で街の活性化効果

 地下鉄は都市空間を走り抜けてしまうが、路面電車は階段もなく、街を眺めながら移動できる楽しみもあり、
200人以上の輸送力は連節バスの約2倍です。
路面電車は、急速な自動車社会から追い出されてきた過去から、近年は再び公共交通として脚光を
浴びてきましたが、LRV(高機能路面電車=ライト・レール・ビークル)を導入して走行させるだけでは車両の
改良にすぎず、かつての路面電車の二の舞いになり復活は難しいと考えます。
 現在、政府の交通政策が自動車交通の円滑化に重点を置いている大都市部では、街のなかで人が
自動車の通行を気にせずに歩行できる領域は狭められています。
60年代に流行した歩行者天国も今では地下街に"潜行"し見かけなくなりました。
高齢者や障害者にはバリアの多い空間です。人を地上の環境空間に取り戻さなければなりません。
そのため、ある程度自動車交通を抑制し、その代替交通手段としてLRTの導入をはかることです。
LRTを導入できるパターンは、@交通渋滞する郊外と都心のアクセス、A他の公共交通機関との結節
B交通不便地域等がありますが、今後LRTの最も有効的な活用は街の活性化に結び付けることです。
 自動車通行を規制した歩行者専用道路にLRTを走らせるトランジットモールは、欧州が先進国です。
オーストリアのウィ ーン市のトランジットモールは導入後、人が集まるようになり商店街の売上が増え
日用品より高級品を扱う商店が増えました。
ドイツのフライブルク市やフランスのストラスブール市でも同じ傾向で街に賑わいが出てきました。
 トランジットモール方式は確実に街の活性化に貢献する成果がでており、あえて困難と思える都心部に
導入することにより採算性を確保し、周辺の大型商業施設、映画館、スポーツ施設等の集客スポットを
掘り起こし、高齢者、障害者にも利用しやすいバリアフリーの実現にも寄与しています。
さらにサンフランシスコの路面電車のように観光効果も期待できます。
 地元でも枚方LRT研究会(長山泰久会長)が昨年、発足しLRTによる街づくりの大きな気運の高まりを
感じます。


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