76 2000年7月号 |
検証 地方分権を探る@ 権限委譲と市町村合併が焦点 5割弱が特例市の移行に躊躇 |
地方分権を進めるためには、基礎的自治体である市町村にできるだけ多くの権限を委譲することと 市町村合併が望まれます。 権限委譲については今年4月の地方分権一括法の成立により、政令指定都市、中核市に次ぐ特例市 制度が創設されました。 特例市は、市町村の規模、能カの違いから一律に都道府県からの権限委譲を行うことは困難なので 政令指定都市、中核市の他に人口20万人以上の市に対して、一定の権限を一括して委譲するものです。 全国で59市。 大阪府内では、枚方市、東大阪市、豊中市、吹田市、茨木市、寝屋川市、八尾市の7市が対象になります。 委譲される権限は16法律20事務にわたります。 主なものは街づくり関係では、都市計画法の開発行為の許可、都市計画事業の建築許可、市街化 再開発法の市街化再開発事業の建築許可、宅地造成等規制法の宅地造成工事規制区域の指定、 宅地造成工事許可、環境関係では、騒音規制法の騒音規制地域の指定、規制基準の設定、振動規制法の 振動規制地域の指定、水質汚濁防止法の特定施設設置の届け出の受理、常時監視、立入検査などです。 これらにより都道府県並の権限で地域の実情に応じたきめ細かい対応が期待できます。 そのため枚方市を始め府内7市では平成13年4月1日の指定をめざし、6月定例市議会で「指定申し出に ついての議案」が議決されました。 これをうけ自治大臣への申請にあたり府知事の同意と府議会の議決が必要で、9月定例府議会の上程が 予定されています。 その反面、対象となる59市中、10市が平成12年11月、21市が平成13年4月の移行を希望していますが、 財源や人材の問題等の理由で残る28市は検討中か躊躇です。 地方分権が叫ぱれるなかで特例市の対象になりながら指定の意向を示さない自治体が約5割弱に 上るのは次ぎに続く市町村合併問題は至難の業と言わなければなりません。 明治の市町村制施行(1879年)、昭和の町村合併促進法施行(1953年)新市町村建設促進法 施行(56年)に続く「平成の合併」ができるのか。 市町村合併について検証します。 |
77 2000年8月号 |
検証 地方分権を探るA 府も合併推進に具体策を提示 住民も積極な参加意識が必要 |
地方の借入金残高は1999年度未で約176兆円、国地方を合わせた債務残高は、約600兆円(対GDP比 121%)にのぽります。 一般的に小規模市町村ほど税財政基盤が弱いなかで、本年4月の介護保険制度の導入でさらに市民から 高度な行政サーピスが求められています。 地方行政の責任が一段と重くなり従来の市町村単位では適切な対応が難しい状況にあります。 また、交通・情報通信の発達や経済活動の進展で市民の日常生活圏は市町村の領域を越え広域的な 行政サービスの提供が不可欠になっています。 そのために現行の市町村の行政体制を見直し可能な限り拡大、合併する必要があります。 合併は広域な視点からの街づくり、効果的な道路や下水道等の基盤整備、行政の効率化とマンパワーの 充実、議会のスリム化などのメリットがあります。 ところが総論は賛成でも、職員、議員数の削減など具体化するにつけ懸念の声が大きくなります。 新市役所の場所、名前をどうするかでセクト意識がはたらき難航している例もあります。 そうしたなか国は昨年7月16日、市町村の合併の特例に関する法律を改正し、都道府県に対し合併推進の ための情報の提供や助言をおこない市町村合併推進要綱の作成を要請しました。 大阪府でも懇話会を設置し、住民アンケート、市町村長の意向確認、市町村の合併パターンの具体的な 検討を行っています。 地方分権からいえぱ合併の推進は国や府の指導を待つまでもなく市町村が主体的に取り組むことと 住民側の積極的な参加意識がなけれは成功しません。 いままで市民発議から合併が実現した例はなく、住民か街づくりや行政サービスについて、単なる賛成・ 反対や要望するだけでなく自ら参加して行政とともにつくり上げていく意識が欠かせません。 市町村合併の議論を通じて住民が行政に参加できるチャンスと捉えるべきです。 議席が確実に減少する議員も市民の代表として勇断をもって対応する必要があります。 その延長線上に、都道府県制を見直した道州制が見えてくると思います。 客観的2市町村間の結び付き(交流率と地域的一体性の指標)
大阪府の「市町村の合併の推進についての要綱」の策定に関する懇話会が合併パ夕一ンの作成に
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78 2000年9月号 |
検証 地方分権を探るB 合併パターンで活発な論議を 住民や市町村の自主性がカギ |
政府から聞こえてくる「300自治体論」は、衆議院小選挙区にスライドさせたものであり、地域住民の 考え方と大きな相違があります。 1000自治体論も、300自治体への過渡的な考え方であり、最初から自治体数を特定すべきではないと 考えます。 市町村合併は、自治体や住民が主体的、自主的に行うべきもので、上級官庁から押し付けや自治体 同士の協議だけでも実現できるものではありません。 しかし、肝心な住民の関心や意識が少なく、一向に盛り上がりはありません。 大阪府の住民アンケート調査結果で、「市町村合併を考えて行くうえで感じる点は」という質問に対し、 「合併する必要性がわかりにくい」が47.6%。 「行政や市町村合併に関する情報が少ない」が34.0%と市町村合併の必要性やメリットがわかりにくい ことが明らかになっています。 今後、住民に対してわかりやすいパンフレットの作成やインターネットなど多彩なメディアで広告宣伝、 説明会やシンポジウムの開催で住民との意見交換を通じ、自治体が説明責任を果たすことです。 近畿地方では、府が初めて9月1日に、市町村や住民の間で合併問題を検討する際の参考や目安となる 市町村の組み合わせの合併パターン素案を発表しました。 素案では、市町村間の結び付きや広域行政の取り組み状況、人口・面積規模、合併の効果などを考慮し、 大阪市、東大阪市を除く42市町村を30パターンにまとめています。(図2 62KB) 私の枚方市は、交野市との2市で人口約48万人(画積約90.62ku)。 寝屋川市を含んだ3市で人口約74万人(面積115.35ku)の2パターンが例示されています。 合併によって、行財政基盤の充実強化、より効率的な行財政運営の確保、市街地生駒山山系・ 淀川水系などバランスのとれた市域でのより多彩な施策の展開、中核市移行による行政サービスの 拡充の効果があるとしています。 この素案をきっかけに市町村間で活発な論議を起こさなければなりません。 議会側からも積極的な取り組みを始めて行きたいと考えています。 |
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