89 2001年8月号
靖国神社参拝問題

熟慮で政治問題化の責任重い 靖国の歴史経過から参拝無理

 米国のアーリントン国立墓地には、日本を始め訪問した外国要人が無名戦士の墓に献花する光景を
よく見かけます。
他国の戦没者墓地を訪れるのは、その国の歴史に敬意を表す外交上の慣習です。
一方、来日した外国要人が靖国神杜を参拝することはありません。なぜでしょう。
 靖国神社は幕未の戊辰戦争の官軍戦死者を祭るため1869年(明治2年)に創設され、以後、軍国主義の
なかで英霊として祭られ「戦のより所」とされてきました。
第2次世界大戦の戦没者246万6000人を神として祭る際、旧厚生省が軍人恩給受給認定と合わせ
合祀手続きを行い官民一体の運営や78年に東条英機元首相らA級戦犯14人が合祀されたことで
戦没者慰霊の中心施設としてアジア諸国からも右傾化の批判を受けることになりました。
 宗教法人である靖国神社は、西郷隆盛や白虎隊などの賊軍や太平洋戦争の空襲や原爆で死んだ人達は
祭ず、官軍の死者だけを祭る死者選別に異議が出ています。
 国のために犠牲となった特攻隊員の思い入れが強く、「戦没者への敬意と感謝を表すために靖国神社に
参拝するのだ」という小泉首相の論理は靖国神社の歴史から当然とはいえません。
 参拝の批判を受け、熟慮するならば首相が一刻も早く持論を韓国、中国首脳に事前に説明し理解を
求めるべきであり外交上のマイナスです。
また、首相の1ヶ月に及ぶ熟慮は、アジア諸国との友好関係を揺るがしかねない状況をつくりだす等、
靖国問題を内外に大きな政治問題化した責任は重たいと言えます。
そのような中で一国を代表する首相の立場の参拝は国際的に通用しないでしょう。
 国民の合意を得られないなかでの首相の参拝が継続して行われるようであれば国家神道を強制した
過去に戻ることに成りかねません。
それこそ憲法20条の定める政教分離に反します。
靖国問題が、これ程、問題化されたことはなくこれを機会に十分論議しケリつけるべきです。
 願わくば、誰もが自由に行け外国要人が献花でき、敵、味方、国に関係なく祭られた無宗教の公園墓地が
望ましいのではないでしょうか。


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