93 2001年12月号
明年への大阪の課題と提言

財政健全化に民営.合併推進 文化.教育の振興や安全な町

 21世紀初頭の本年も後わずかになりました。
不況に追い打ちをかけるように米同時多発テロ事件や狂牛病問題が起こり大阪も一層深刻な経済状況に
なりました。
そのような厳しい時代であったとしても、明年に向け一刻も早く大阪が再生できうる政策を構築する必要が
あります。

地方分権・行財政
 昨年に地方分権一括法が施行されましたが、地方行政は税収の落ち込みにより非常に厳しい財政状況が
続いています。
特に大阪府は法人二税が長引く景気の低迷で大きく落ち込んでおり府内市町村にも大きな影響を
あたえています。
 地方分権を推進するには、国と地方の新たな役割分担に応じた税源配分が必要です。
国と地方との歳出割合は、1対2ですが国税と地方税との税収割合は6対4であり、歳出と税収の間に大きな
乖離があります。
少なくとも税収割合が1対1なるよう税源の移譲を政府に強く求めていかなければなりません。
 財政の健全化に向け、民間委託やPFI手法の導入を通じて民営化を図ることや効率的な行政運営を
めざす府内の市町村合併を積極的に推進すると同時に、府と大阪市がともに構造改革を通じ二重行政の
弊害を打破すると共に、関西の中心の大阪が他府県との広域的な行政推進の舵取りを担う必要が
あります。

都市再生
 政府が、本年5月に緊急経済対策で都市再生を集中的、重点的に推進するため都市再生本部を設置し、
東京圏、大阪圏などを21世紀型都市再生プロジェクトに選定したことにより、基幹的広域防災拠点の整備、
関空2期整備や新たな大阪再生環状道路の整備、大阪圏でのライフサイエンスの国際拠点の形成など
大阪部市圏の再生に必要なプロジェクトが決定しました。
今後も大阪湾ベイエリアの活性化など大阪再生に向けた新たなプロジェクトの展開に全力を挙げて
いきます。

中小企業
 10月の全国の完全失業率が5.4%に対し近畿は6.5%と大きく上回っており事態はより深刻なものに
なっています。
そして4月〜6月期の経済成長率がマイナス0.8%で、それ以後もマイナス1%成長に落ち込む可能性も
あると推測されています。
そこへアメリカ同時多発テロ事件、狂牛病問題の発生でますます大阪の中小企業を取り巻く経済環境は
悪化の一途です。
このままいけば、大阪の中小企業はさらに衰退を続ける危機感から、経済環境に影響されることなく
必要な資金を供給する中小企業への信用保証協会の保証制度、政府系中小企業金融機関の融資制度の
充実、創業や新事業創出を支援する促進策が重要です。
 緊急地域雇用創出特別交付金制度は、府では総額200億円が決定し、補助率が10分の10と実施主体の
自治体の負担がないことから、各自治体では緊急事態に対応した即効性のある地域のニ一ズに対応した
雇用創出事業の知恵を絞り出さなければなりません。

福社
 モノの豊かさのみを追求し人間よりも産業や企業の利益を優先した社会から人問重視の社会への
転換期を日本は迎えようとしています。
特に福祉制度では、介護保険の導入を機に従来の措置から選択利用方式に移行していくなかで、福祉
そのものが大きな変革に入りました。
したがって、各自冶体の福祉施策のあり方も自助、共助、公助の視点で見直す必要があります。
 府行財政計画案からも市町村の福祉事業への影響は大きく、各市町村の施策のハード、ソフト面からも
実態を把握し、新しい施策展開を行う必要があります。
また、育児や結婚観の多様化と住環境や労働環境の変化で出生率が低下、少子化が急速に進行
しており、保育所待機児童解消、乳幼児医療助成拡充、放課後児童受け入れ体制強化、
児童虐待対策など明日の大阪を支える子供たちを育てる環境つくりが急務であります。

教育
 20世紀までの教育の考え方は、富国強兵や経済大国の実現などのため、教育以外の目標達成の
手段としての教育観が一般的でした。
教育を手段と見る考え方が人間の手段視を正当化し、人間を国家やイデオロギーに隷属させる人間軽視、
生命軽視の風潮を生んだ要因といえます。
 画一的な知識偏重型の教育から、多彩な個性を開花させる知恵創出型の教育へ手段としての教育から、
教育自体を目的と位置づける教育が大切です。
そのため、手供たちの心身の発達や人格形成に大きな影響を及ぼす教員の意識改革と資質向上が
重要です。
教育に対する情熱と指導カを高める教員の質の向上に努めなければなりません。
また、学校・家庭・地域が協働して子供たちを育む開かれた教育システムを構築していかなければ
なりません。

文化
 アメリカのニューディール政策2期では、美術、演劇、音楽などに国を挙げて推進したことで一大産業を
形成し、アメリカの文化芸術が発展していったといわれています。
さきの国会で成立した芸術文化振興基本法をテコに、古くから伝統芸能や文化ストックに恵まれた大阪の
特性を生かし、文化の振興に取り組むチャンスが到来しました。

安全なまち
 府内は、25年連続ワースト1のひったくりや凶悪事件の犯罪発生状況は、全国でも高水準で年々
増加傾向にあります。
そのような大阪の治安をよくし安全なまちするためには、犯罪検挙だけでなく、照明灯、ストーカー被害者
相談体制、自主防犯意識の向上など犯罪発生を防止する防犯環境の整備に全カを挙げて参ります。



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