102 2002年8月号
住基ネットの不安を検証

電子自治体実現の基盤づくり 不正侵入、漏洩防止万全策を

 8月5日から住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が稼動しました。
マスコミなどで根強い反対意見が寄せられ市民の皆さんの間に不安が広がっています。
私にもご意見や質問をいただいておりますので、住基ネットのシステムをまとめてみました。
 住基ネットとは、すべての国民に11ケタの住民票コードをつけ@氏名、A住所、B性別、C生年月日の
4つの個人情報を、全国で一体的にコンピューター管理するシステムです。

拡張できる住民サービス

役所への申請・届け出の手続きで住民票の写しの添付が必要な場合、住基ネットで確認するだけで、
役所へ住民票の写しや証明書を受けに行く必要がないなどの利便性があります。
来年8月からは、住民票の写しの交付が全国どこの市町村役場からでも受けられます。
希望すれば、10年間有効の住基カード(ICカード)が市町村から交付され、引っ越しの際、転出証明書の
交付を受ける必要がなく転入市町村での手続きだけで済みます。
住基カードは写真付きと写真なしの2種類のうち、いずれかを選択でき写真付きは個人の身分証明書として
利用できるほか、住基カードの空き容量があるので、市町村が独自の行政サービス(健康カード、
福祉力ード、図書カード、施設利用力ードなど)に活用できます。
システムが稼働しサービスを実際に受けてみれば、住民の皆さんの負担が軽くなるメリットを実感
できるでしょう。
住基ネットは、これからの電子政府、電子自治体を実現させるための基盤となり必要と考えます。
反面、利便性と引き替えに「個人情報が漏れる」、「国民総背番号制では」と導入に反対する意見を頂いて
います。
セキュリティーは、安全性の高い専用回線を利用するほか、通信データの暗号化や不正アクセス(接続)を
防止するためファイアウォール、IDS(侵入検知装置)の設置など、ハッカーからの不正侵入、情報の漏えい
防止対策を講じています。
 また、運用面では自治体担当職員も専用ICカードを使わないと操作できず、パスワードなどによる厳重な
確認が行われます。
このほか、データヘの接続制限や不審な操作パターンの常時監視、データ通信の履歴や操作履歴の管理、
使用記録の取得、定期監査など、システム操作者の目的外利用を防止する仕組みを整えています。
しかし、日進月歩のコンピューターの世界にあって情報の漏えいや不正侵入は、絶対に大丈夫とは
いえません。
 しかし、安全性が確保できないから反対というのでは、いつまでたっても電子政府、電子自治体の実現は
できません。
たとえば、自動車は利便性の高い乗り物ですが、交通事故の危険性がつきまとうので自動車に乗らないと
同じことではないでしょうか。

個人情報を守る運用体制が大切

 今回実施された改正住民基本台帳法は3年前の平成11年8月に成立しましたが、今まで話題にならず
直前になって反対の声が大きくなった背景は、個人情報保護法案です。
当時の小渕恵三首相が、「住基ネットは民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備が前提で
ある」と答弁したことから住基ネットを盾に、個人情報保護法案の廃案が本音のように見えます。
 一日も早く個人情報保護法案と行政機関の保有する個人情報保護法案の成立が必要ですが、成立
しなければ住基ネットの安全性が担保されないということではなく、住基ネットそのものに可能な限りの
個人情報の保護をまもる運用体制を強化することが大切と考えます。
 公共事業の入札制度が不正のたびに入札システムを改良しても事件が起こる原因は、システムを
運用する人の不正行為によるものです。
 住基ネットシステムの問題だけでなく運用する人のモラルの論議が必要です。
この事務に携わる機関、職員に対して守秘義務を課し、通常よりも重い罰則(2年以下の懲役または
100万円以下の罰金)を科しています。
さらに、民間の利用も禁止されています(1年以下の懲役、50万円以下の罰金)。

国の一元管理を認めず目的外利用は一切禁止

 市町村から都道府県や全国センター(財団法人・地方自治情報センター)に送信され、保有されるのは
本人確認4情報のみです。
11ケタの住民票コードの目的外利用は一切禁止されており、行政機関相互での住民票コードの利用や
名寄せ、検索などデータのマッチング(突き合わせ)もできない仕組みになっています。
法律で規定された事務処理以外の利用はできず、国がさまざまな個人情報を一元的に収集・管理することも
法律上もできません。
したがって、住民票コードをもとに、国があらゆる個人情報を一元的に収集・管理するいわゆる
「国民総背番号制」ではありません。
 平成9年1月にそれまで厚生年金、国民年金加入者番号がバラバラであったものが、政府によって
基礎年金番号として一元化されました。
すべての職歴が網羅されており、住基ネット以上の個人情報でありながら、問題視されなかったのは
不思議なことです。


中高年就職支援センターを視察

 大阪府内の完全失業率は全国で2番目に悪く、特に55歳以上の有効求人倍率(求職者一人当たりの
求人企業数)が0.13と中高年の雇用環境は厳しい状態が続いており、大阪府に対し中高年齢者に配慮した
雇用施策を求めてきましたが、府立労働センター(大阪市中央区)内に府が、今年4月1日に
高齢者職業相談プラザ、7月1日に中高年就職支援センターを開設、7月17日に会派で視察をしました。
 中高年就職支援センターでは、インターネットで求人情報検索や雇用就業に関する相談、相談員と
一対一の職業カウンセリング、履歴書の書き方や面接の受け方のほか、求職活動の仕方など実践に
役立つ各種セミナーも開催しています。
 高齢者職業相談プラザは、55歳以上を対象に就業相談や就職斡旋を行い、府内16カ所の
ハローワークからの求人票の閲覧ができるほか、相談員が求人企業に連絡を入れ面接予約まで行って
くれます。ぜひご利用ください。電話06-6946-2609


淀川舟運復活に活発な動き

 淀川舟運の復活を府議会などで積極的に取上げてきましたが、(本誌79号、80号参照)各地で活発な
動きが出てきました。
8月3日に中司枚方市長の提案で淀川船上サミットが開かれ、太田・大阪府知事、山田・京都府知事、
磯村・大阪市長、桝本・京都市長、秋山・関西経済連合会長、青山・国土交通省事務次官らが参加し、
枚方大橋から淀川を下り船中、淀川舟運をテーマに意見交換を行いました。
 また、同日、大阪商工会議所主催で全国河川舟運サミットも開かれ、荒川、信濃川、新町川、
松江堀川など先駆的な取り組みをしている事例報告を受け淀川舟運の気運を盛り上げました。



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