159 2007年9月号
検証・暑い大阪

府民一丸のヒートアイランド対策を 外壁を安価で手軽な「みどりのカーテン」

 今年の大阪の暑さは異常な暑さでした。気象庁のデーターによると、大阪では100年間に気温が2.1℃上昇し、全国平均の1.0℃を上回っています。
 また、東京、名古屋、横浜の真夏日数(一日の最高気温が30℃以上)を比較しても、大阪は過去から他の都市よりも真夏日が多く、この30年間で約1.4倍に増加しています。特に、大阪市、豊中市、枚方市、堺市の熱帯夜数(7月〜9月)は、平成2年頃以降、増加傾向にあります。
 これら「大阪が暑い」原因はヒートアイランドの影響と考えられます。ヒートアイランド現象は「熱汚染」とも言われ、建築物や自動車からの人工排熱、建物や道路の高温化、緑地や水辺の喪失など都市化が原因とされています。
 そこで、大阪府では、大阪を冷やそうとヒートアイランド対策に積極的に取り組んできました。
 平成16年6月に、府ヒートアイランド対策推進計画を策定し、ヒートアイランド対策モデル事業として民間事業者から複合的な対策を盛り込んだモデルプランを公募。平成17年8月には、熱赤外センサー搭載の航空機から地表面の温度を測定し、平成18年5月、この地表面温度データと、エアコンや自動車からの人工排熱データや地表面被膜データ等をあわせて解析し、熱環境マップを作成、ヒートアイランド対策ガイドライン(平成19年3月)として取りまとめました。
 平成17年、ヒートアイランド対策集中実施促進事業。平成18年1月に、ヒートアイランド対策技術コンソーシアム(産学官民の連合体)を設立。府有施設クールスポットモデル事業として、府庁施設の壁面緑化、太陽熱高反射塗装を実施しました。平成19年3月、効果的なヒートアイランド対策を実施している公共施設や民間企業の取組みを大手前地区クールスポットマップとして取りまとめました。
 また、ヒートアイランド現象の顕著な地域の市町村や民間施設が、屋上・壁面緑化、駐車場芝生化、高反射塗装、保水性舗装・透水性舗装など行う場合に補助するヒートアイランド対策導入促進事業を実施しました。
 その他にも、ヒートアイランド対策は、行政だけで出来るものでなく、民間事業者の協力や府民も参加できるよう屋上緑化モデル整備事業(14〜15年度)、芝生駐車場実証展示事業(15〜16年度)、府有施設モデル緑化事業(17年度)、花とみどりの街づくりモデル事業(17〜18年度)など、街のみどりをふやすために様々なモデル事業を行い、その普及に努めてきました。

【写真】樟葉幼稚園のみどりのカーテンを視察、
右から前川園長、鈴木、垣見、長田府議、小野市議
 府では、平成16年度から小学校や幼稚園の校庭を芝生化するモデル事業・「みどりのじゅうたん」を実施しましたが、今年から、「みどりのカーテン」として、校舎の外壁面に、つる性植物であるゴーヤやヘチマなどを這わせ、室内の温度上昇を抑える実験を始めました。クーラーの使用時間を減らしたり、光合成による二酸化炭素の吸収などにより、地球環境保全にも役立ちます。
 初年度は、四条畷市立四条畷東小学校(ヘチマ、ミニトマト)、枚方市立樟葉幼稚園(ゴーヤ)、堺市立神石小学校(キュウリ、ゴーヤ、ヘチマ、サツマイモ)、八尾市清掃庁舎(ミニトマト、リュウキュウアサガオ)、阪急バス活木営業所(ヘチマ、ゴーヤ)、茨木市神安土地改良区(キュウリ、ゴーヤ、ミニトマト)、昭和電機椛蜩月s(ゴーヤ、ミニトマト、リュウキュウアサガオ)の府内7カ所で実証実験を行っています。
( )は植物の種類
 なかでも私の地元の枚方市は、昨年に全国の最高気温を記録した“猛暑地域”で、今回実験をしている枚方市立樟葉幼稚園(前川なをみ園長)では、遊戯室の窓側に張った編目状のナイロンネットにゴーヤを巻き付け育てています。
夏場の強い日差しを遮断し、室内の温度を和らげてくれるだけでなく、年長の園児たちが、毎日交代で水やりを行い、収穫された新鮮なゴーヤを順番に持ち帰り、家庭でチャンプルやてんぷら、サラダなどの食材に利用するという栽培を通じた「農作業実習」にもなり大喜びです。
比較的安価で手軽な壁面緑化なので、一般家庭での普及にも期待が持てます。
 これらを所管する府が、今回の実証実験データを集め、事例集を作成し、多くの府民が、家庭でも手軽にヒートアイランド対策に一丸となって参加できる取り組みを急がねばなりません。


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