171 2008年9月号
府庁のWTC移転案

府有地売却の資金調達は無策 PFI採用で府庁周辺の街づくりを

 橋下徹府知事は、大阪市が大阪南港に1193億円をかけて建設した55階建ての高層ビル・大阪ワールドトレードセンター(WTC)を買い取り、大阪府庁の移転を表明しました。
 WTCは平成7年建設されたがテナントが集まらず破綻し、特定調停で売却先を探している最中。19年度の簿価は161億円。一方の府庁も大正15年建設で老朽化が激しく、耐震補強でも財政負担が395億円かかることから府と市にとって一挙両得であり、伊丹空港廃止とあわせ橋下知事独特の突拍子もない発想に感心しました。別表の通り、@耐震補強、A建て替えと新たにBWTC移転が提示されましたが、知事は、WTC買い取りにより経済性メリットと関西州の州都を強調しました。
昔から府と市は仲が悪いと言われ続けていることからWTCの買い取ることで府市協調の機運を高める効果はあると思います。しかし、WTC移転による府のデメリットも考えなければなりません。
 経済性では、大阪市からの買い取り価格が未定であり、整備費や維持管理費、修繕費の算出根拠は、府職員による推定値であり精度の高いものでなく、知事から9月議会で議論しろと言われても無理があります。
道州制には関西府県との温度差が大きく、機も熟さないなかでWTC周辺を州都と決めつけたことで他府県の反発も大きく道州制の前段階の関西広域連合構想にも影響を及ぼす可能性もあります。
また、府庁周辺は、大阪府警本部や政府の出先機関、府の関連団体が集結しており、府庁だけの移転だけでは済まされません。
 移転した場合、大手前の現庁舎跡地5,2fを全て売却する案ですが、民間に売却すれば、高層マンション群になるでしょう。
 府庁舎周辺は大阪城観光のスポットで大阪のシンボルといえる場所で、二度と手に入らない土地であり、単なる売却は将来に恨みを残すことになります。大手デベロッパーによると固定資産税を除けば50年の定期借地方式が売却価格より高くなる試算もあり、50年後は府有地に戻る定借方式を検証すべきです。
 WTC周辺の街づくりは大阪市に任せ、府は民間の資金と経営能力、知恵を結集したPFI方式で府庁周辺の大手前の街づくりをすべきです。
 庁舎を建て替える場合、PFI方式であれば府庁舎だけでなく、民間事業所と合築することで収益性が高まり府の財政負担を軽減できます。上層階には大阪城が見下ろせるレストラン街や若い人の待ち合わせスポット等を設置し、職員用食堂や喫茶店も道路側に配置すれば土日でも市民が手軽に利用でき、歴史的な意義のある庁舎玄関ホールや議場見学やイベントが催され府庁舎が観光集客スポットとして有効利用を図るべきです。


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