177 2009年2月号
絶大な知事の権限

権限は総理大臣よりも増大 人事、予算、許認可権を独り占め

 地方自治法では、地方自治体の首長一人に予算執行権、人事権、許認可権が与えられており、都道府県では知事に全ての権限を有しています。
人事権は、知事の場合、副知事等の特別職や教育委員など行政委員は議会の同意がいるものの知事が決めることができ、府庁の部課長だけでなく教職員や警察官まで知事の権限で行えます。国の人事権は各省庁にあり、総理大臣にはありません。
 予算案を議会に提出できるのは知事だけであり、議会閉会中は職権で専決処分して制定することができます。議員にも条例提案が認められていますが、議案の提出や修正動議の発議には議員定数の12分の1以上の賛成を必要ですし、少ない議会事務局スタッフや付属機関設置の制限もあり、とても知事部局に対抗できる体制ではありません。議員一人からでも提案権を認めるべきです。
総理大臣は内閣の一員
 国では、予算編成権は主に財務省にあり、法律を制定するのは国会にのみ許されています。これは、憲法65条の「行政権は内閣に属する」と定めから、総理大臣は内閣の一員にすぎません。
憲法では国会が最高機関とあるだけで、内閣総理大臣が国の「長」であるとされていません。知事は地方自治法第139条で「長」と明記されています。
 総理大臣を不信任する場合、衆議院では過半数の賛成があれば内閣不信任決議することができますが、議会が知事を不信任しようと思えば、3分の2以上の出席で4分の3以上の賛成が必要です。
住民が直接、知事を辞めさせるリコールも、有権者の3分の1の署名を集めて請求し、住民投票で過半数以上の賛成がいります。
逆に首長には議会解散権があり、議会の制定した条例の拒否権(再議)も保障されています。
 以上のように、これほど知事に強い権限が与えられているのは、住民から直接選挙で選ばれているからです。地方自治法では、多くの住民の支持を得たことを尊重し、職務に専念できるよう権限を与えているからです。
議会の招集権は知事に?
 議員も知事と同じ直接選挙で住民から選ばれますが、審議する権限だけで知事の権限と比較すると雲泥の差です。
それどころか、議会を招集するのは議長でなく、首長に招集権(地方自治法第101条)を与えていること自体が問題です。
国からの地方分権による権限移譲が議論されていますが、ほとんどが知事の権限増大で、その首長を監視する役割の議員側の権限移譲はありません。
 企業であれば、執行機関として取締役会があり、議決のうえ経営方針が示されます。
取締役会の過半数の議決があれば代表取締役であっても解任されます。
自治体にはそのような組織体でなく、副知事といえども知事の補助員に過ぎません。
誰が反対しようとも知事の意見が通るシステムです。独裁とも言える知事の権限を知り尽くした橋下知事の勝利です。
幹部職員の立場では、“知事の独走“を止めることはできません。
あとは議会が二元代表のポジションで賢明な判断をしなければならない役割は大きいと思います。


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