180 2009年5月号
国直轄事業負担金制度の課題

国は抜本的な制度見直しを 維持管理費は即刻廃止すべき

 国直轄事業負担金とは、国道、河川、公園、港湾、空港事業など国が行う公共事業の費用のうち、建設費は3分の1、維持管理費は45%を都道府県に負担させるものです。
 地方全体の負担額は年間約1兆3000億円。大阪府の負担は、平成19年度で約364億1000万円、20年度で約377億2000万円、21年度当初予算で約393億6000万円にのぼります。
 府にとって、地方交付税が削減され、法人2税の減収で、すべての事業削減を余儀なくされるなかで、国直轄事業の負担は予算編成で、大きな障害になっています。
 今年の3月、国交省四国地方整備局の香川河川国道事務所を改築する費用20億5000万円のうち、香川県に説明のないままに7億3000万円を国直轄事業負担金として納めさせたことが発覚しました。一躍、注目を浴びるようになりましたが、すでに、私たち大阪府議会では、昨年8月、国からの@権限移譲、A税財源移譲、B直轄事業負担金の見直しをテーマに「府議会フォーラム」を東京で開催し、国に強く訴えていました。
■国職員の給与・退職金まで負担
 国直轄事業負担金制度には、4つの問題点があります。@封建社会の「上下主従」の関係のように、国から地方自治体に負担金の中身や内訳の説明がないまま、金額だけを通知する。A香川県のような出先機関の整備費だけでなく、本来、国が負担すべき職員の給与、退職金まで含まれている。B請求額が妥当かどうか地方自治体からの審査を認めない。C国の建設費・維持管理費は地方自治体と比べ割高、があげられます。
■空港や高速道路以外は地方に
 国直轄事業負担金は、61年前の1948年に制定された地方財政法で規定された制度で、国の事業といっても、新設道路など便益をうける地方自治体が建設費の一部を負担することは一定の合理性があると思います。しかし、国と地方とでは事業の優先順序が異なることから、空港や高速道路などの広域事業は国が行い、それ以外は地方に移すべきです。
 一方、国は、国道や河川、公園の維持管理費を地方自治体に負担させています。府道は大阪府が負担し、市町村道はそれぞれの自治体が負担していることを考えると国道の維持管理費を府に負担させる合理性はありません。維持管理費は即刻に廃止すべきです。
 全国知事会や地方分権改革推進委員会などからの国直轄事業負担金見直しの動きを受け、国は、21年度の追加経済対策の中で、約1兆4000億円の新たな交付金を創設し、地方の直轄負担金に充当する措置が盛り込まれましたが、一時的な対策で、地方自治体からの批判の声を交わそうとするものです。
 国は、制度の見直しを先送りせず、この機会に抜本的な改革に着手すべきです。


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