186 2009年11月号
羽田ハブ空港発言の波紋

関空着陸料を香港並みに 伊丹と一体経営で安定を

  前原誠司国土交通大臣は、10月12日に橋下徹府知事と会談した際、羽田空港を国際ハブ空港にしていく方針を明らかにしました。
 現在、日本の地方空港から成田空港の7路線に比べ、韓国・仁川空港は28路線にのぼり、日本のハブ空港機能を担っていることから前原大臣は、羽田が来年10月に4本目の滑走路(2500m)が完成し、昼間発着回数は10万回増の約41万回になるので、国際線は成田、国内線は羽田という内際分離の原則を取り払い、羽田をハブ空港化したい考えを表明。
 羽田は成田より都心に近く、国内線と国際線の乗り継ぎが便利でハブ化が進めば、首都圏に乗り入れしたい航空会社が多くアジアの拠点空港に成り得ます。日本の国家観点に立てば正しい方針と考えます。
 しかし、日本で初めての国際線・国内線併用の24時間空港機能を持ちながら活かしきれない関西国際空港をハブ空港として、政府の責任のもと国家の航空戦略に加えなければ、関空は大きな影響を受けます。

■ 関空ハブ化のチャンス ■
 今回の前原大臣の羽田ハブ空港化発言が、関空の現状を政府に認識させ、関空経営安定化へのチャンスと捉え、中国をはじめ経済成長の著しい東アジア諸国の旅行客を呼び込むためにも、関空を実質的な国際ハブ空港にむけ取り組まなければなりません。
 危機感を持った橋下知事は、前原大臣に10月12日、関空との2ハブ化論を主張。「羽田をハブ化するなら、府負担金9億円を打ち切る」と反撃されましたが、9億円は関空連絡道路橋国有化(7億円)と全体構想促進協議会(2億円)の負担金であり、打ち切れば困るのは関空会社であり、的外れの脅しです。
 政府に関空をハブ空港と位置づけられても、ハブ空港になるかどうかは疑問です。多くの航空会社が乗り入れて初めてハブ空港になります。

【ハブ空港】ハブとは車輪の中心軸。車輪のスポークのように路線が延びることから名付けられた。国家戦略として韓国・仁川空港、シンガポール・チャンギ空港が有名。

■ 高い関空着陸料の引き下げ ■
 空港会社から関空が減便対象になるのは、着陸料の高さです。着陸料(B777−200の場合)は、関空の約57万円に対し、仁川17万円、上海18万円、香港23万円。羽田の4本目の滑走路完成が来年10月。その半年前には航空会社は航路を決めるので、来年春までに値下げ方針を示さなければなりません。
 関空の競争力をつけるため着陸料を、仁川、上海、香港並みにすべきです。関空の着陸料収入は約180億円(平成20年度)。香港並みにすれば、約100億円、仁川並みでは130億円の着陸料の減収になります。
 この減収補填をどうするのかが課題ですが、政府の年160億円の補給金から、今年10月25日から来年3月末迄の緊急料金として49万4000円に引き下げていますが割高さは変わりません。

■ 政府への具体的な要請 ■
 毎年要望している補給金だけで、関空の競争力をつける根本的な解決になりません。
 関空会社が、巨額の埋め立て費用を有利子負債(1兆1000億円)でまかなったことで、利息だけで毎年220億円の支出になります。
 政府の09年度空港整備特別会計の予算歳出5280億円の48.3%にあたる2550億円が4本目の滑走路整備のため羽田に投入されましたが、今後の新設空港は、茨城空港、新石垣空港以外になく特会予算に余裕が出るので、有利子負債の解消にあてれば、金利負担が軽減され着陸料引き下げの原資にあてられます。

■ 関空と伊丹の一体経営 ■
 半径25km圏に関空、伊丹、神戸の3空港がひしめくなかで、大阪府民だけの視点でなく、関西広域から利用しやすい拠点空港のあり方や経営安定化をめざし、先送りせず議論する時機が到来したと考えます。
 橋下知事は、伊丹廃止論を訴えますが、長期的な構想にすぎず、その前に、都心に近い伊丹はキャッシュフローベース収支で営業収益154億円、約43億円の黒字経営を続けています。関空と伊丹の一体経営、経営統合で、関空経営安定化がはかれ、着陸料値下げの原資にもなることから、関空と伊丹の役割分担を明確にして、関西3空港の共存共栄の道を探らなければなりません。



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