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192 2010年4月号 | |
伊丹空港廃港は正しいのか 伊丹に国際線就航は無謀 廃港ありきでなく地元議論を |
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国土交通省の関西国際空港への予定されていた補給金160億円が、鳩山政権の行政刷新会議の「事業仕分け」により、「関西3空港のあり方の抜本的解決をしない限り関空への補給金を凍結する」とされました。 補給金は香港空港並みの着陸料にするための原資であり、昨年末の22年度予算案で75億円に減額されましたが、「伊丹空港問題」の解決が条件とされ予算執行は見合わせになっています。 6月の政府の成長戦略会議で結論が出されるため、橋下徹大阪府知事が、政府の方向性を出させるために、激しく伊丹空港の「廃港」を強調していると思っています。そのような橋下知事の強烈な政府への発信力には評価をしていますが、一方で、井戸敏三兵庫県知事は、伊丹空港存続を主張し真っ向から橋下知事と対立、政府から見ると地元で揉めている印象しかなく、政府の方向性を見いだすための「伊丹廃港」発言の意味がなさないと思われます。3月23日の総務常任委員会で、このことを知事に指摘すると、「兵庫県との合意形成は不可能だ」と答弁されました。 意見が違っても関西としての方向性を見いだすことが、関西州をめざす政治家としての橋下知事の役割と思います。 橋下知事は、昨年12月の成長戦略会議への提言で、伊丹空港に、リニア中央新幹線が来るまでの暫定期間に近距離国際線を就航させるとしていますが、リニア開通時期も不確定要素で、山田JR東海次期社長も、名古屋までの2025年開業が遅れるし、大阪までの開業予定2045年も難しいと表明されています。 |
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![]() 【写真】年間約1500万人が利用する伊丹空港 |
関空の国際線は68%が中国と韓国便で、伊丹空港から国際便を出せば、利便性から関空の国際線が伊丹空港に移り関空経営に影響が出るのは必至で無謀な考えです。 また、国際線を就航させれば廃港時には、伊丹空港の利便性から存続の声が出ることは必然で、関空ハブ化と相反する考え方です。 総務常任委で、橋下知事は、「理屈はそうだが、(廃港を)伊丹空港周辺地域から理解を得るための妥協だ」と答弁しました。倉田・池田市長など北摂地域の利便の要望を受けて提言しており地域対策にすぎません。 |
これまで豊中市が伊丹存続を主張していることに対し「地域の利便性でなく、関西の視野で捉えるべきだ。地域エゴを出すな」という知事の発言は明らかに矛盾しています。 伊丹空港廃港後の跡地計画は、売却益で海外に派遣できる英語教育の「国際学園自由都市」を目差すとありますが、具体性が無くイメージにすぎません。 政治家が、夢を語り、夢を与えることは大事なことですが、廃港ありきの議論でなく、豊中市をはじめ地元の人々にも、廃港後の街づくりを具体的に示し、一緒に議論することが本筋ではないかと考えます。 約43億円の黒字経営の伊丹空港と一体経営し関空の経営安定化をめざした上で廃港の是非を議論すべきと考えます。 橋下知事は、日本に東西2つのハブ空港が必要と関空と成田を示していますが、政府がハブ空港の位置づけをしても、利便性や利用料が高ければ航空会社は乗り入れません。航空機が乗り入れてくれてこそハブ空港です。羽田空港の4本目の滑走路(2500b)が10月に完成し、昼間発着回数は10万回増の約41万回になり、国際線を振り分ける予定です。 羽田は成田より都心に近く、国内線と国際線の乗継ぎが便利で、多くの航空会社が羽田に乗入れを希望しており関空にとっては驚異となります。関空・伊丹議論だけでなく羽田との競争に勝ち抜く戦略をたてるべきです。 日本初の国際線・国内線併用の24時間空港機能を持ちながら、1兆1000億円の有利子負債を抱える関空経営を府などの自治体や関西経済界に運営させる株式会社方式でなく、国策空港である限り、韓国や中国の主要空港は全て国家が運営しているように、関空も政府の責任のもと国家の航空戦略に加えなければなりません。 ※総務常任委員会(3月23日)での橋下知事との議論は、大阪府議会ホームページの議会インターネット中継でご覧頂けます。 |
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