193 2010年5月号
「大阪都構想」は実現するのか

橋下新党は二元代表制を否定 府市の二重行政解消には効果

 橋下徹府知事が代表となる「大阪維新の会」という“橋下政党“を4月19日に立ち上げました。橋下新党には、大阪府議会24人、大阪市議会1人、堺市議会5人が参加しました。(さらに5月7日に府議会自民党から2人が参加)
 橋下知事は、大阪府と大阪市の再編を目的とする「大阪都構想」を主張されていますが、府と市の二重行政の解消など理解できるものがある反面、具体的な政策を示されているのが少なく実現できるのか首をかしげるものもあり、読者の皆さんが、「大阪都構想」を判断して頂くために、わかる範囲で検証しましたので参考にしてください。

○…知事のめざす「大阪都構想」…○
 知事のめざす「大阪都構想」の具体的な政策はまだ途中と思われますが、主なものでは、府市再編し、ワン大阪を構築、伊丹空港の廃港、府庁舎をWTCに移転、府議会定数削減を政策にあげています。
 府市再編は、大阪市内での大学、病院、図書館、水道局、信用保証協会、消費生活センターなど無駄な二重行政の解消は今までも我が会派が主張してきたことで賛成です。
 ワン大阪になれば二重行政が解消されるものでなく、府の事業や事務をひとつひとつ検証し基礎的な自治体である大阪市に移譲できるよう“府市協調“して仕分け作業を行い、経費削減効果を府民に公開して理解を求めるべきです。パートナーの大阪市を挑発し、自分の意見を聞かないと対決する手法は好ましくありません。
 既に我が会派は、平成14年に12人削減案を府議会に提出しており議員定数削減は当然のことです。

○…東京都の区政の課題…○
 東京都23区をモデルに、大阪市24区を8区に、堺市7区を3区にし、周辺の豊中市、吹田市、摂津市、守口市、門真市、大東市、東大阪市、八尾市、松原市の9市を区制にする計画で、公選制の区長と区議会の経費が新たに必要になります。8区になる大阪市では、東京都の区議数に当てはめると約270人となり現在の市議数の3倍に増えます。
 また、東京都区制では固定資産税などの税収の45%を都が握っており、区の不満も高く、千代田区では「千代田市」をめざすなど23区を解消して「一般市」にする案も出ており、大阪都に権限が集まる区制導入は十分に検討すべきです。区や区民のメリットがはっきりと示す責任があります。

○…関西州との矛盾…○
 橋下知事は就任当初から道州制や関西州をめざしています。道州制は都道府県制度を廃止して基礎自治体に権限を移すことで、前段階の関西広域連合設立にも精力的に取り組んでおり、政令指定都市を解消することは道州制移行に明らかに逆行する動きです。
 関西州を叫びながらそれに反する矛盾する態度はどうも理解に苦しみます。

○…「大阪都」設置の法的手続き…○
 「大阪都」の設置には、自治法の改正か、地方自治特別法の制定が必要です。
自治法改正には、府議会と大阪市会の議決が必要で、府と市が内閣に申請し、国会の承認を得なければなりません。そのため、来年の統一地方選で、府会と市会で橋下新党から過半数の議席を確保する必要があるからです。
 もうひとつは、府と市を廃止してその区域全部に特別区を設置し「新たな大阪都を設置する法」を国会で特別に制定しなければなりません。国会議決後、府民と大阪市民の住民投票でそれぞれ過半数の同意が得られれば特別法が公布されます。いずれも高いハードルになります。

○…「橋下新党」の狙い…○
 地方の首長が自ら政党を立ち上げ、党首に就任するのは異例のことです。橋下知事は大阪市との事業統合が思うようにならないことから新党結成し、市を指揮権に置くためにワン大阪をめざすなら、首長の権限強化に過ぎず市民のためにはならないと考えます。
 地方議会は、首長の独走を防ぐため二元代表制(注1)を用いています。仮に橋下新党が過半数を確保すれば、二元代表制は崩れ、議会機能が失われ、独裁政治となり地方制度のあり方が問われます。

○…大阪市議補選の波紋…○  昨年9月の堺市長選で、橋下知事が竹山氏を熱烈に応援し、現職の木原市長が敗れたことから、来春の統一地方選に立候補する人も橋下知事人気に擦り寄る心理と知事の刺客を擁立される警戒感で橋下新党に参加した人も多いのではないかと言われています。
 自民党から大量に橋下新党に入党したのは、党籍を剥奪されず自民党員のままだからです。民主からの2人は離党しており、地域政党とはいえ二重党籍では有権者の理解が得られるでしょうか。
参院選出馬による福島区の市議補欠選挙(5月23日投票)では、橋下新党から候補者擁立を予定しています。民主、共産だけでなく自民党公認の候補者がいるのに、橋下新党の自民党籍の22人が、橋下新党の候補者を支援するのは許されるのか、他党のことですが自民党は大らかな政党と思います。

(注1)【二元代表制とは】
 地方議会では、首長と議員を直接選挙で市民が選びます。議会は対等の立場で首長を監視する制度が"二元代表制"です。
二元代表制では議員が与党や野党に分かれることはありえません。マスコミは知事派と反知事派の対立構造にしたがる傾向がありますが、この構図は間違いです。
 国会は、議員内閣制で内閣が行政権を持ち多数政党の党首が総理大臣になります。与党と野党は常に対立構造になります。



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