198 2010年10月号
尖閣諸島沖の中国漁船事件

民主政権外交の甘さ露呈 ビデオ公開や漁業基地整備を

 9月7日に発生した尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、那覇地方検察庁は公務執行妨害容疑で逮捕した中国人船長を24日に処分保留のまま釈放しました。
 その理由を那覇地検は、「日本国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄を拘束して捜査を続けるのは相当でない」と記者会見で発表。これは誰が見てもおかしい。
 地方議員の立場で外交問題を取りあげることは憚りますが、あまりにも政府の対応がお粗末なので取りあげさせていただきます。
 法に則って判断すべき検察庁に「日中関係を考慮」という外交上の権限はありません。
 この声明を信じている国民は誰もおられないと思います。明らかに「政府からの働きかけ」があったことは明白です。
 しかし、仙谷官房長官は、「那覇地検の判断を尊重した」と政府の立場を忘れた発言をしていますが、責任を那覇地検に押しつけ政府の責任を回避しています。
 これでは日本の領土である尖閣諸島を命の危険を顧みずに対応している海上保安庁も浮かばれません。
 釈放したことで沈静化するどころか、逆に中国は「謝罪と賠償」を求めてきました。本来、外交は、水面下で「話し合いや交渉」を続けたうえで結果を導くもので、今回のことで民主政権の外交への甘さが露呈しました。
 中国側から招待した青年訪中団1000人のキャンセルや閣僚級の交流差し止め、レアアースの実質的な日本への輸出停止、報復ともとれるフジタ社員4人拘束など強硬な中国の外交姿勢に対して、守勢に回る政府の態度に多くの国民は失望しました。
 中国政府の一方的な批判に、中国船がぶつかってきたビデオが存在すると前原国交大臣(当時)が主張しながら、なぜ公表されないのか理解が出来ません。ビデオを公表し、日本の正当性を世界に発信すればあれほど中国が攻勢に回れなかったといえます。
 北方領土{国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島}と島根県竹島は、日本の領土でありながらロシアや韓国に不法占拠されています。今回のような中途半端な対応を見たロシアはますます、日本に強い態度で臨むでしょう。
 日本と中国の2国間協議でなく、中国と領有権問題で紛争している南沙諸島(ベトナム、マレーシア、台湾、フィリピン、ブルネイ)や西沙諸島(ベトナム)のアジア諸国と連携し、対中国外交を進め、尖閣諸島に漁業中継基地や監視塔などを整備し日本の領土であることを明確にすべきと提案します。
アジア欧州会議(ASEM)で、菅総理と温家宝首相のトップ会談内容や細野豪志議員の訪中目的について歯切れの悪い表明でなく、国民が理解できる説明責任がなければ民主党政権に国益を守る統治能力はありません。
 隣国の中国は日本にとって重要な関係にあり、敵対するのでなく毅然とした姿勢で対話と交渉を重ねられる外交を展開すべきです。


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