19 1996年12月号
続・アメリカ印象記

アメリカ履歴書の摩訶不思議
年齢・性別を聞けば違法です 人権の本音と建前は世界共通

 今回の訪米視察でお会いしたカリフォルニア州人種差別対策局のナンシー・C・ギレッツ局長や同州貿易
通商省のジェリー・マイヤー・ライト長官など多くの男性のなかで活躍されている女性をみるとアメリカの
平等を感じますが、実際は複雑な構図です。
 就職のときに履歴書を書くのは当たり前の話…。
ところが、アメリカの履歴書には氏名、住所、電話番号、職歴以外は書きません。
性別や年齢で募集・採用すると人権侵害で違法になります。
性別や年齢を就職で聞けないのは日本では考えられないことです。
特に性別を書かないのは男女の別で能力の差別をしてはいけないということです。
確かに、筋肉隆々の女性警察官を男性警察官に交じってよく見かけました。
夜勤もあれば犯人逮捕など業務の差別はまったくありません。
男性の職種だけでないということでポリスマンの名称からポリスオフィサーにかわった位です。
男女雇用の平等から素晴らしいことと理解ができますが、履歴書に性別を明記しても差別になるとは
思いませんが?。
その背景にはアメリカの同性愛者の存在があるように思います。
サンフランシスコの有権者は約30万人。そのうち同性愛者がなんと約10万人もいるそうです。
同性愛者のシンボルは七色の旗で、男と男、女と女それぞれが懸命に市民権を得ようと自宅の玄関や
マンションのバルコニーに堂々と七色の旗を掲げています。
現実にサンフランシスコでは同性愛者は認知されています。
したがって政治家にとっても同性愛者対策については無視できなくなった結果ではないでしょうか。
 もう一つは年齢を聞いてはいけないというのはどうしても理解できません。
新聞広告で40歳以下募集と記載すれば即座に告訴されます。
ガイドして頂いたA社のロスアンゼルス事務所のスタッフは7名。
社員名簿に年齢欄がなく誰もお互いの年齢を知らないという話は信じられない話です。
 それ以外でも州人種差別対策局では雇用にあたり、人種・家系・国籍・肌の色・宗教・未既婚・
身体障害(エイズ含む)・免許証の有無など26項目にわたり差別してはならない制限をしています。
 視察でアメリカのどこの都市にいっても現地の案内人や行政府は必ず、「これから先のブロックは大変危険
だから行かないように!」と危険な区域を強調します。
そこはほとんどが黒人居住地です。言い換えれば、それは差別になります。
そのような“危険区域”を解消することが行政の役割であるのにあえて存続させているようにも思えます。
人権尊重を建前とするアメリカに依然として根強い人種差別が残っているのは事実です。
本音と建前はないと言われるアメリカですが、私はそうではなく差別に関しては確実に本音と建前を使い
分けているように見えます。
ロスの高級住宅地で有名なビバリーヒルズは徹底した白人社会。
そこで「黒人よ、来る(住む)なら来てみろ!」という白人の言葉が印象的でした。


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