25 1997年8月号
ベトナム調査研究C

バイクの洪水は市民の息吹
家族のレジャーは夜間徘徊 道路不整備は経済発展妨げ

 ハノイ空港から市内まで私たちが乗った車は「ブォー、ブォー」とクラクションを鳴らし通し。
前を走るバイクや自転車を蹴散らして走るためです。
クラクションを鳴らされても平気な顔。日本なら殺人事件が起こっても不思議でないくらい。
どこからこれだけのバイクが出てくるのかと思うくらい市内はバイク天国。
ベトナムが活気あふれる国に思えるのもこのバイクにあるのではないでしょうか。
バイクは市民の息吹です。ハノイ市人口120万人に対してバイクは約60万台。
実に2人に1台。自転車は約100万台。
一方、自動車は6万台と少なく、自動車はナンバープレートが白は個人所有、赤は軍隊、ブルーは国家行政
機関と区別しています。
 免許証は70cc以上から必要で18歳以上であれば取得でき、50ccバイクは16歳以上であれば免許は
いりません。
 ウソのような話をひとつ―。
現地ガイドしてくれたN氏の友人が自動車免許をとるためにマル秘作戦。
自動車の練習する時間がないので、知り合いの警察官に200USドルの賄賂を渡し免許を習得。
運転技術は「ゲームセンターの自動車ゲーム機で習得したそうで、今でも無事故で運転しているそうです。
 市内のラッシュアワーは4回。
朝の通勤の7:30から8:00、昼休みの12:30〜13:30夕方の16:00〜16:30、それに夜の8時頃からのラッシュが
あります。
それは帰宅後一斉に家族連れでバイクのドライブを楽しむからです。
市内をぐるぐる回るだけの徘徊ですが、娯楽の少ないベトナムでは夕涼みを兼ねた娯楽です。
1L4000ドン(約40円)のガソリン代はベトナムの所得では決して安くなく高価なレジャーです。
 市内の自動車の平均速度は20〜30q位徐行運転のスピードだから事故を起こしても大事故には
なりません。
しかし、右からも左からも斜めからも進行して来るのでタクシーの助手席に乗ると怖さを感じます。
特に横断歩道が少ないので歩行者は油断ができません。
コツはゆっくりと同じ速度で横断するとバイクの方で避けてくれます。
途中で止まるといつまでたっても渡れません。
無秩序のようで一定の法則があるようです。
 タクシーは渋滞して動かないので、交差点にいつも待機しているバイクタクシーが手頃な乗り物。
料金はすべて交渉ですが2〜3qの近距離は3000ドン(約30円)位です。
ビジネスマンは1日50000ドン(約500円)で借り上げます。
有名な三輪自転車のシクロは日本人は利用しない方が賢明と思います。
 この3月に突然、ホーチミン市人民委員会が市民生活に影響があるとの理由でホーチミン市内への
大型車を昼間7時間にわたり進入禁止にしました。
社会主義国の特長で簡単に法改正するが根本的に道路整備を行わないと数年でホーチミン市をはじめ
主要な都市機能がマヒすることは容易に想像できます。
ベトナム国内の鉄道や航路は十分に機能しておらず、高速道路や基幹道路整備を早急に進め物流基盤を
確保しなければベトナムの経済発展の妨げになることは自明の理でしょう。


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