65 2002年7月号
長野県知事不信任騒動

田中、ノック知事の共通点
テレビ利用で確信犯的挑発 公共事業政策論争で合意点

 長野県が注目を浴びています。
田中康夫知事と県議会の対立を見ていると、7年前の横山ノック前大阪府知事と府議会の関係を
思い出します。
二人にいくつかの共通点があります。
ともにタレント知事であり、無党派の支持で官僚出身の対立候補を破ったこと。
常にテレビを意識したパフォーマンスでマスコミをうまく利用した云々。
 反面、議会対策では大きな違いがあります。
平成7年4月の当選直後から、ノック前知事は、議会には徹底した協調路線を心掛け、反対する府議には
何のてらいもなく夜討ち朝駆けの家庭訪問。
議案を通すため政策や論理的な説明でなくひたすら「情」で理解を求めようとする姿勢は徹底していました。
委員会等で追及する議員の方が「もう、ええか」とあきらめさせる光景も度々ありました。
一方の田中知事は徹底して議会と対立し、議員を挑発しているような気もします。
 昨年の6月7日に長野県庁を訪れた印象。
1階ロビーの一角に全面ガラス張りの知事室があり壁面に子供達の絵や支持者からの「かもしかヤッシー」
ぬいぐるみが所狭しと飾ってあり、執務机、応接セットがなければ、保育所と間違えるくらいです。
中にいる田中知事がガラス越しに視線をおくってくるのを見て逆に、ガラス張りですが露出しているだけで
県民から閉ざされた部屋ではないかと感じました。
当時の石田治一郎議長と会談したおり、知事の独断専行が目立ち議会への説明責任の欠如している
言われていました。
 マスコミに発表してから庁内や議会で議論を巻き起こす手法はその後、副知事公募制の撤回、高校教育
改革を強行、産業廃棄物処分場計画の白紙撤回など議会に諮らないことで信頼関係が崩れ、とうとう
6月27日の県議会で浅川ダム、下諏訪ダムの計画凍結で議会との破局を迎えました。
 ダムを初めとする無駄な公共事業の見直しは必要なことです。
しかし、議長の制止にも議員が退場しても延々と脱ダムの持論を演説する行為は、議会に対する
「挑発」です。
どうも田中知事の行動は、テレビの生中継を利用し決定的な対立の構図をつくった「確信犯」と思えます。
 知事就任以来、知事対議員、知事対職員の対立をテレビに露出させ、圧倒的な県民の支持率を背景に
知事選で再び当選することで脱ダムの正当性を「県民の意志」として議会に認めさせようと考えているのでは
ないでしょうか。
そうであれば、県民不在の政治手法といえます。
議会もここまで対立させた責任はあります。
「公共事業の在り方」の政策論争を行い、はやく合意点を見いだすことが必要です。


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