74/飛耳長目118 2004年2月合同号
府知事選を振り返って

大阪ではタレント候補はいらない
太田勝因のひとつは江本の敵失? 2期目正念場、愚直な政治姿勢を

府知事選挙の結果 投票率40.49%
太田房江1,558,626票
江本孟紀670,717票
梅田章二505,167票

初登庁する太田知事(2月6日正面玄関)
 2月1日の大阪府知事選挙。終わってみれば太田房江さんの圧勝。
当初は元阪神タイガース選手で民主党元参議院議員の江本孟紀さん、共産党の梅田章二さんとの
三つ巴で接戦と予想されましたが、江本さんに倍以上の大差をつけ、梅田さんは共産党の退潮傾向に
歯止めがかからず前回の102万票から半減するという結果に終わりました。
 なぜこのような結果になったのか。
今回の選挙戦を直接かかわった立場から振り返ってみます。
昨秋、対立候補が共産党だけで気を許した太田さんが、無党派宣言をしたことから江本さんが出馬する
動きに。
大阪は横山ノック元府知事や西川きよし参議院議員のようにタレントが当選する風土です。
 ノック元知事の再現かと無風の知事選は一気に激戦模様になりました。
 一部自民党や民主党の大阪府議に担がれた江本さんは、太田知事に批判的なマスコミにうまく便乗。
行く先々で知事選の台風の目となりました。

江本さんの敗因
大阪人の心が読めなかった戦略
知名度だけで勝負できない時代 大阪全域の政策とアピール欠如

 ところが、選挙戦に入る頃から風向きが変わってきました。
江本さんが発表した選挙公約も府議たちの政策が中心で、個人演説会を開き政策を語るわけでもなく、
期待を受けてマウンドに登板した江本さんの政策が見えず多くの人は失望したのではないでしょうか。
 政党の推薦を受けられない江本さんの戦略は、知名度を生かしいかに無党派層を取り込むかが勝因
ですが、選対は府議らが取り巻き、無党派の府民や勝手連の人が入り込む余地がなく無党派層が敬遠。
当初は、自民党の半分以上の府議が江本支援に動くのではと言われましたが、1、2期生の府議が
表舞台に出てしまえば、あとから幹部級が入るわけにいかず、求心力を失った戦いにならざるを得なかった
ようです。
 それではと、堺屋太一元経済企画庁長官、中田宏横浜市長や田中真紀子衆議院議員など有名人を
動員しようとした他力本願な戦術も大阪人には裏目に出たようです。
大阪市内の繁華街中心の遊説では、いくら知名度があると言ってもオール大阪での選挙戦術には
なりません。
大阪人は、ひたすら孤立無援でも必死で戦う姿に共鳴し、なんとかしようと応援する気質です。
江本さんは、阪神タイガースにいながら大阪人の心が読めなかったと思います。
オール大阪の選挙戦としては府議選エリアの戦略で、最後まで、政策をアピールするわけでもなく、
府内全域の戦略を編み出せなかったことが敗因と思います。
振り返れば、江本さんのエラー、失投続きで、自滅で降板した幕切れです。
太田さんの勝因の一つは、江本さんの敵失ともいえます。

出口調査の結果
自民・公明の健闘光る、民主は二分 高い女性の支持を読めなかった知事

 一方、太田陣営では、江本出馬と一部府議の反乱の危機感で結束。
わが陣営も自前の候補並みに全力投球。
自民党も前回と違い中央と大阪府連が一体で組織を引き締めたことが勝因につながりました。
 投票日のマスコミ各社の出口調査の、太田さんに自民党支持者の約7割、公明党支持者の約9割、
民主党支持者の約4割が投票したとする結果もうなずけます。
太田知事も連合大阪が選挙事務所を仕切ったにもかかわらず、民主党からの投票が江本さんと二分
したことに失望されたことでしょう。
 また、出口調査結果、女性票の6割以上の支持を集めました。
太田さんは、常々、男のように仕事をしてきたと自負し、女性からの人気はないと思っておられ、
高い女性の支持に驚かれていましたが、「府民の気持ち」が十分把握できていなかったともいえます。
今回の選挙戦を通じ府民の心が分かったのではないでしょうか。

知事の会議ボイコット
コミュニケーション不足が不信 府幹部職員との関係修復が急務

 1期目の後半から知事と府幹部職員、府議会、記者クラブとの意思の疎通がよくない傾向が顕著に
なってきました。
知事答弁調整会議というのがあります。
担当部課が府議会の知事質問に対する答弁原稿を作成し、知事と協議する会議です。
歴代知事もこの会議には力を入れてきたそうです。
 ところが、太田知事は就任2年目から欠席するようになりました。
部課長にすれば知事と直接対話できる数少ない機会でもあり、知事にとっても職員を知れる機会を
放棄することは残念なことです。
職員の深刻な不満の声が私に届くほど知事と幹部職員の関係は悪化していました。
 太田知事推薦を協議する最中の昨年12月1日、太田知事に職員の不満を指摘したところ、
12月議会の答弁調整会議から出席するになりました。
太田知事は、仕事の出来る人であり、多忙な日々を送る余り無駄な時間を費やしたくないと会議も
合理化したくなったのでしょう。
しかし、無駄な会議と思えても、論議を通じ人間関係の構築があります。
 府議会との関係は、私から月に1回1時間程度、自民、民主、公明3会派の幹事長と知事が懇談を
することを提案。
昨年8月から続いています。(12月から無所属クラブも参加)
双方の意見交換から理解できる兆しも見え始めています。
 しかし、記者クラブとの関係悪化も、無党派発言で頂点に達し未だ修復されていません。
これから知事自ら努力しなければなりません。
知事の多忙さからすると、府幹部職員、府議会、記者クラブ間の調整できるスタッフもこれから必要です。

「江本効果」を府政に
2期目強いリーダーシップで驀進を

 江本さんの出馬は、太田さんには自分を見つめる機会を与えたし、太田陣営が危機感で引き締まると
いう効果を引き出しました。
 江本さんにとっては逆な結果になりましたが、この「江本効果」を次の府政に生かさなければなりません。
待ったなしの大阪の再生のすべてがこの2期目にかかっています。
様々な批判を乗り越え具体的な道筋を見極め強いリーダーシップで驀進しなければなりません。
これからが正念場。
府民の目線で愚直な政治姿勢を貫く限り、最大限の支援をするつもりです。



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