82 2005年6月号
大阪府議長選の激突

33年ぶり非自民議長誕生
56票対55票の1票の重さ 攻守交代で開かれた議会に

 5月30日の府議会議長選で公明党の美坂房洋議員が新議長に選ばれました。
都道府県議会で公明党議員の議長は史上初めて。
自民党以外からの議長誕生は、昭和47年以来33年ぶりです。
 今回の議長選は、自民党(41人)は「議長は第一党から出すのが憲政の常道」と候補者を擁立、日頃から
自民党批判を繰り返している共産党(9人)と社民党(2人)が自民に同調しました。
一方、「民主的な議長選び」を主張する民主党無所属ネット(25人)と公明党(23人)は美坂氏を擁立。
主権おおさか(10人)と富田林市民クラブ(1人)の大半の支持を得て、投票総数111票の内56票を獲得し、
自民候補を1票差で破りました。
 「自公対決」、「自公ねじれ」、「知事与党主導権争い」、「激しい多数派工作」と議長ポスト争いに終始
しているという報道が目立ちました。
報道によって府民の皆さんもそう思われる方も多いのではないでしょうか。ありのままにご報告します。


なぜ議長ポストを狙うのか

 首長の提案する事業、条例、予算をチェックするのが議会です。
そのまとめ役が議長で首長と同じ地位を地方自治法で定めています。
 議長の権限は、会議日程、発言制限、決議方法、委員会設置の提案などが出来執行部に対する
影響力は大きいと言えます。
また府民や各種団体からの要望を受けたりする議会の顔ともいえる存在です。
それだけの権限がある故に、見方を変えればその立場を利用し自分の考えや会派の意見に導くことも
出来るわけです。
地方自治法では、任期は議員と同じ4年ですが、1人の人に権力が集中しないよう大阪府議会でも多くの
議会のように1年ごとに改選しています。
 議長選出のプロセスは、多くの議会が議員経験の豊富な人から所属政党に関係なく選んでいるのに対し、
これまでの府議会は第一党の自民が議長ポストを取ることを決めた上で、自民の会派内で議長候補を
決定するため、誰が議長になるか他の会派はさっぱりわかりません。
自民の議長であって、府議会全体から推薦された議長とはいえません。
 平成11、12、13年と立て続けに自民の議長経験者ら幹部3人が逮捕されるという不名誉な事件が勃発
したことをきっかけに、不名誉な議長を出したくない。
自民だけで議長を決めるのではなく全議員の意志で選出できるシステムにしなければ議員として責任が
取れないとする意見が強くなってきたのも当然のことです。
 私も13〜14年度は政調会長、15〜16年度は幹事長として議会運営に携わり、自民に苦言を呈し幾度も
制度改革を申し入れてきましたが、なかなか聞き入れて頂けませんでした。
 昨年の議長選。
民主的な選出方法として民主・公明が選挙を主張、自民と対決になりましたが、自民から「(翌年度は)
民主・公明の考えを真摯に受け止める」と譲歩する申入れがあったため話合い決着で自民の議長が
誕生した経過がありました。
しかし、今回も昨年の譲歩した姿勢は自民になく民主や主権おおさかの強い結束で、最後は複数候補の
ため決選投票に持ち込まれたのが今までの経過です。


憲政の常道の使い分けと自公ねじれ

 自民は、最大会派が議長職を取るのが「憲政の常道」と主張されますが果たしてそうでしょうか。
憲政の常道とは西園寺公望ら奏薦集団が戦前の政党内閣期(1924〜32年)に積み重ねた政権交代の
慣例のことで、「失政によってある内閣が倒れたとき、その後継として内閣を担当するのは野党第一党で
ある」とする慣例です。
二大政党を前提とした憲政の常道論を議長選に当てはめるのは無理があります。
 大阪府内市町村の議長の所属会派(平成17年5月末日現在、大阪市除く)を見ても自民6人、民主3人、
公明7人、共産1名、諸派7人、無所属18人であり、最大会派から議長という慣例はどこの議会にも
ありません。
 共産も「第一党が議長を務めるのが憲政の常道」と主張して自民を支持しました。
ところが共産は昭和46年以前と昭和55年から平成6年迄の15年間と平成13年に独自の議長候補を出して
います。
黒田府政時代(昭和46〜53年)は出さず、「憲政の常道」を使い分けています。
 憲政の常道は建前で「公明議長が気に入らなかったのでは」と府庁内でウワサされています。
府議会で「自共連合」はそうあるものではありません。
 国政の自公連立政権とねじれ現象を起こしたと指摘する報道がありますが、国政が自公だから地方議会も
自公でという考えは議院内閣制でない制度上では成り立ちません。
 地方は地方の政策面での組み合わせがあり大阪府政改革のためその時代にふさわしいパートナー選び
こそが重要です。
 大阪府内の各種選挙で自民候補を数多く推薦していますが、自公ねじれで推薦しなくなるという憶測も
別次元の話です。
 議長選で激突したからといって自民と対決する気持ちはまったくありません。
むしろ議長を独占してきた会派として円滑な議会運営を進めるため、異論があっても他会派に配慮や
遠慮をしてきた面があったと思います。
立場を変えて良い面悪い面を含め議会改革の直言をしてもらえるのではないかと考えます。
そして、攻守交代が開かれた議会になると確信しています。
 1票差の重さは、議長の責任の重さです。
地方分権が進むなか議会が果たす役割は重要度を増しています。
 府民の皆さん、新議長の仕事ぶりに期待して下さい。
また11ヶ月後には議長選が巡ってきます。



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