85 2005年12月号
三位一体改革の攻防

3兆円規模の税源移譲は評価 地方影響大の生保制度改正を
地方自治体で特養建設可能に 手つかずの地方交付税は課題

 国が得る税収は全体の6割、地方は全体の4割ですが、地方が実施するサービスは全体の6割です。
そのため地方自治体は慢性的に財源不足で、国に依存する状況になっています。
これらを見直して地方の権限と責任が大幅に拡大し、実態に見合った行政を実現できるよう@国から
地方への国庫補助負担金の削減、A国から地方へ税源の移譲、B地方交付税の見直しを同時に行う
三位一体改革を小泉首相は指示しています。
11月30日の政府与党合意で3年越しの3兆円規模の税源移譲が決着しました。しかし、この裏には国と
地方との熾烈な闘いがありました。
 3兆円規模にするため、今年は残る約6000億円の税源移譲を生み出す補助金を削減するため国は、
生活保護費と児童扶養手当の負担金割合を国3/4から1/2に引き下げる厚生労働省案を地方に
求めました。これにより大阪府は820億円の負担増、府内市町村も520億円負担増になります。
 全国でも9280億円の負担増で地方6団体は三位一体改革に名を借りた単なる負担転嫁だとして猛反発。
生活保護制度は創設以来、半世紀以上が経過し、場合によっては年金受給者よりも支給額が多い
ケースがあり制度疲労を起こしております。国により制度の抜本改正を早急に行うべきであり、負担だけを
地方に求めるべきではありません。
 2年前にも同じ問題で扮装しただけに、府では、11月から生保データーの国への報告停止や新規受給
事務の返上など、各自治体でもかつてない徹底抗戦に望んだことは初めてのことではないでしょうか。
 地方6団体も昨年9月からの「国と地方の協議の場」で地方の改革案を国に求めてきました。
一方、政権与党の公明党国会議員に断固阻止の働きかけを府幹部と共に行ってきました。
 国と地方との調整にあたった公明党は、「地方の理解が得られなければ、三位一体の改革の意義を
損なう」と政府・与党のなかで主張し、削減対象から除外されました。また、建設国債が財源の地域介護、
福祉関係の施設整備費は税源移譲できないと強い反対姿勢の財務省を、説き伏せ税源移譲させたことで、
特別養護老人ホームなどは地方自治体の判断で建設ができるようになります。
しかし、新たに、児童手当の負担金割合が国3/4から1/3に、義務教育費も国1/2から1/3に引き下げ
られました。
 三位一体のもう一つの柱の約20兆円の地方交付税は手つかずのままです。
引き続き、地方の自主性を高める改革論議を継続し、新たな地方分権の道筋を開いていくことが
求められます。


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