89 2006年5月号
府立大学院移転議会

大幅な縮小案受入で寸前決着
堺市と府の対立で議会が二分 当事者能力欠如で議長斡旋

 2月定例府議会最終日の3月22日、大阪府立大学の生命環境科学大学院移転問題は、獣医学専攻と
学部獣医学科のみ移転することで決着しました。
府立大の移転問題は、平成14年9月議会代表質問で自民会派から、関西国際空港を活用したりんくう
タウンをバイオ関連の集積地にするよう提案があったことから、りんくうタウンの企業誘致に困難を極めて
いたことと合わせ、府立大建て替え計画の途上で、大阪府にとって「渡りに船」と一石二鳥の府立大
農学部(現生命環境科学部)の移転構想が生まれました。
 当時、政調会長をしていた私に対する府幹部の説明も、りんくうタウンにバイオ研究拠点とバイオ産業
育成のためと言いながら「りんくうタウン救済策」の色合いが強く感じられました。
大学からの提案でなく府からの提案は、産学連携や街づくりを目指していた地元堺市からも強い反発を
呼び、府が生命環境科学部全体の移転から大学院の移転のみに急いで修正したことで、さらに「理念なき
移転案」と堺市との間は泥沼状態となりました。
 このことが尾を引き、移転予算案が上程された2月議会は、堺市と泉州地域の府議間の綱引きで二分した
状態が生じました。にもかかわらず、この間、太田房江知事は、府議会に事態収拾に積極的行動することも
なく音無の構え。
一方、木原敬介堺市長サイドから、私にも4度にわたり堺市の意見が届いていました。
2月上旬、太田知事が移転問題で木原市長と会見した時も、内容は堺市側から聞こえてきますが、
知事からは府議会の各会派に何のメッセージも届きません。
知事が本気で移転問題を乗り切ろうとしているのか疑問が湧くほどでした。
 2月17日、知事公館で知事らと会派との意見交換した時、そのことを指摘すると担当幹部の怠慢といわん
ばかりの言動には驚きました。知事の説明と職員の説明のとは性質が違います。今回のような重要案件こそ
知事自ら汗をかき説明すべきです。その姿を見て幹部職員は熱意を持って働くものです。
審議も大詰めの3月9日、会派控室に説明に来た木原市長の話から、修正案もやむなし妥協の余地あり
との印象を得ましたが、府との協議は進展しませんでした。
 本会議の採決が近づき事態打開のため、美坂房洋議長が南努府大理事長と協議の上、冒頭の当初より
縮小した内容の斡旋案を太田知事と木原市長に提示、府と堺市が受入を表明し決着しました。
 本来、議長は会派間の調整はできても、自治体間の調整は出来るものではありません。太田知事は
不満足かも知れませんが、当事者が対立し上位自治体である知事の解決能力が欠如した状態では、
議長あっせんは致し方ない収拾方法であったと太田知事は反省すべきです。


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