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93 2006年11月号 | |
武田薬品工業誘致合戦
自治体に「企業秘密」はあるのか? |
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10月7日付け新聞各紙に、「武田薬品の新研究所誘致、大阪府が200億円提示」と報道されました。 武田薬品工業は、淀川区と茨城県つくば市にある現在の研究所を神奈川県藤沢市の自社工場跡地に 移転する計画があることから、太田房江府知事が茨木市の「彩都」に誘致する条件で200億円の補助金を 提示したという詳細な内容でした。 本会議中でもあり、商工労働部に確認したところ、「先方の企業秘密にも係わる部分があるので申し上げ られない」の一点張り。 私は、一つめに、「民間企業同士では“企業秘密“が存在するが、公金を扱う自治体に「企業秘密」が存在 するのか」、二つめに、「大阪府が定めた企業立地促進補助金の上限30億円を超えた補助金の交渉が 出来るのか」の問題点を指摘しましたが、徹底して内容を明らかにしないので、急遽、13日の商工労働 委員会で質問することにしました。 商工労働部長は、「提示はしていない。相手の意向確認である」と否定。上限を超えた補助金に至っては、 「ある程度の見通しが立った段階で府議会の理解を求める」と答弁しました。明らかに、決められた補助金の 上限を超えた交渉は違法です。 決められた上限額を超えて提示するならば企業立地の制度は必要ありません。 府知事たるものが、単なる意向確認だけで相手側のトップと会見することはなく、提示をしたと推察できます。 200億円の提示を認めれば自ら違法性を認めることになりダンマリを決め込んだのでしょう。 武田薬品は、19年3月期売上高見通し1兆2600億円。連結経常利益見通し5000億円の業績から見ると 200億円の補助金が誘致の決め手になるとは思えません。 関西での工場誘致件数(18年上期)は、兵庫県57件、滋賀県21件、大阪府19件、京都府12件、福井県7件、 奈良県5件、和歌山県が全国最大の100億円を補助していますが4件で実績には結びついていません。 19日の商工労働委員会で、「企業に出した補助金が、数年で府税として回収され、それ以後増収に結び つき、一定の雇用が促進され、府内の経済効果が確保できることを条件に、府民にも理解できる補助額の 上限基準などのルールを改めて設定する必要がある」と太田知事に提案しました。 そうした最中に、武田薬品は25日に研究所を藤沢市に開設することを公表しました。武田薬品は大阪に とって代表的な企業で残念なことです。 太田知事は、同日の記者会見で、私が19日に提案したルールとして「企業立地条例」を制定することを 発表。また、11月1日に、部長級の企業誘致担当を新設したことは評価しますが、補助額で競争するので なく、大阪にぜひ進出したという魅力づくりが大事で、情報、人材の集積など府の具体的な企業誘致策を 示さなければなりません。 |
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