99 2007年11月号
食品と政治の偽装

傷ついた老舗ブランドの共通点
企業のおごりが消費者不在に 与野党対立軸から政策協議を

 雪印、日本ハム、ハンナン、ミートホープによる牛肉偽装事件、ミスタードーナツ、不二家による菓子偽装事件に続き、今回は、老舗ブランドの伊勢の「赤福餅」、北海道の「白い恋人」、船場吉兆の「お菓子」にも食品偽装が発覚しました。
 不適切表示などで企業が食品を自主回収した件数は、農水省の調べで今年9月までに527件にのぼり、16年213件、17年302件、18年237件と比較し倍のペース。消費者に大きな不信を与えています。
特に、「赤福」は、江戸時代の宝永4年創業で300年の歴史がある企業。「赤福」の名の由来は「赤心慶福」から来ており、まごころ(赤心)をつくすことで素直に他人の幸せを喜ぶことが出来る(慶福)という意味が白々しく聞こえます。
「赤福餅」の赤福(伊勢市)は、売上高84億円(06年9月期)、「白い恋人」の石屋製菓(札幌市)は、売上高73億円(07年4月期)。赤福は未だ操業再開できず、石屋製菓は、今期の売上高は前年同期比約4割減で、操業停止などによる損失は数億円の規模になると言われています。
信用を得るのに一生かかりますが、破壊は一瞬です。
 両者には幾つかの共通点があります。
売り上げの大半が、「赤福餅」、「白い恋人」のブランド商品ひとつで占めており、実質的に無借金の優良企業。株式の大部分を創業者一族が持つ典型的な同族経営。株式も公開しておらず株主や投資家の声もなく、一番大切な消費者の立場を黙殺した企業の「おごり」があったのではないでしょうか。

政治の世界でも「おごり」が目立ちます。
 今夏の参院選は、社会保険庁の不祥事による年金問題、安倍政権の閣僚の失言問題、不正な事務所費など自民議員のカネ問題など政治の「おごり」が原因で、民主党が大勝。衆参両院の第一党が異なる「ねじれ国会」現象となり、11月2日の福田首相と民主党の小沢一郎代表の党首会談で、第一党と第二党による「大連立構想」が飛び出しました。
 かつての自民党独裁だけでも「おごり」があるのに、衆参院で9割を占める自民・民主連立になれば、国民の声は全く届かない「政治偽装」による「おごりの政治」になることが予測できます。
 与党は民主党の協力がなければ法案を通せず、民主党も反対だけでは参院第1党としての責任が問われます。連立政権論議でなく最低賃金法改正案、残留孤児支援法案、障害者自立支援法改正案、被災者生活支援法改正案など国民生活に重要な政策別に協議して望むべきです。
 与党と民主党は連立しなければ何も出来ないというのではなく、表舞台である国会において生活者の視点で政策を訴え、対立軸を明らかにして政策面の協調点を見いだす努力が求められます。



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