101 2008年2月号
全国最年少知事(38)の誕生

計算されたメディア戦略の勝利 大阪だけでなく関西のリーダーに

 昨年の12月12日、橋下徹氏が、出馬記者会見の後、議員室に挨拶に来られました。
 一瞬、最初は誰か分かりませんでした。金髪、サングラス、Tシャツ、ジーパン姿でなく、低い物腰で丁寧な挨拶から、誠実な好青年の印象を受け、テレビ出演の姿と比べどちらが「本物」か、戸惑うほどでした。

鈴木「貴方ほどの知名度があれば、政党の推薦 を受けず無所属で出馬するほうが大得票を望めますよ」
橋下「政権与党の力がなければ、府政運営ができません。自民、公明の推薦が欲しいのです」

 府議会定数112人中、自民42人と公明23人で過半数を超えており、当選後の議会対策まで計算し尽くしていることに「政治家」としてのヤル気を見た思いでした。
 一方の民主党・熊谷氏からは、推薦依頼もなく、橋下氏の推薦か、自主投票かの選択しかありません。 知事候補として、橋下氏を評価する人とテレビ出演での極端な発言から評価しない人と二分しており、直前に迫った選挙日程のなかでは、支持者の皆さんに理解されにくいことから、府本部の支持に到ったわけです。
 橋下氏と何度か会っている後に、少子化の時代に、3男4女の父親としての信頼感。28歳で弁護士事務所を開業した行動力。テレビ番組で売れっ子になるための過激な発言、言動は、計算されたメディア対策と見れば、知事として仕事が出来るのではないかと思いました。

○連日の「行列のできる」街頭演説会

 1月27日の投開票日。選挙結果は、183万票と民主の熊谷氏に倍近い大差で勝利しました。
民主の敗因は、知事選にも拘わらず、ガソリン暫定税率撤廃など国政レベルの問題を持ち込み、橋下氏のテレビ発言の批判チラシの大量配布など選挙戦略が間違っていたと思います。
 一方で、橋下氏は、握手を求め行列が出来るほどの街頭演説会では、政策を一方的に言うのでなく、聴衆に「大阪の思い」を情感で訴える手法は、大阪人の心を掴みました。
遊説に同行して思ったことは、聴衆の反応を見て、話題や言い回しをかえていることでした。その場の空気を読み、敏感に対応する能力はテレビ仕込みか、天性かは分かりませんが…。その光景を密着取材しているテレビカメラで発信されることを十分意識しての行動は成功したと言えます。

 

○橋下新知事への注文
事業見直しは、オン・ザ・テーブルで 有能な職員、民間の力をどう生かせるか

 橋下新知事が、当選直後から、勇ましい発言が飛び出すなど府政運営で強気の姿勢を示せるのは、183万票の支持と財政再建団体転落のカードを切れることです。
 知事は、2枚のカードを武器に、反対する幹部職員や議員とは対決構図を醸しだし、メディアを活用し、府民を味方につけ改革に挑むイメージを作り出すでしょう。選挙で支援した自民・公明も抵抗勢力にされかねません。
議員も知事に負けない論戦を展開しなければ議会としてのチェック機能が問われます。
 議会でも、知事はメディアに出るなという意見もありますが、タレント出身で知名度の高いことを活かし、積極的にメディアを利用し「大阪」を全国や世界にアピールできるならば、私はどしどし出演しても良いと思っています。
しかし、政策判断や決定を、先行してメディアばかりに発表すると、後になって実現できなければ、議会や役人から反発を食らい朝令暮改として批判を浴びることになります。
 前知事のように、08年サミット誘致で京都と会場の取り合いをするではなく、大阪府知事の立場は、関西府県を一体化し広域行政をリードすることにあります。
大阪府だけでなく、関西の復権、関西の活性化、東アジアに邁進する力量を持って欲しいと願います。併せて、大阪市との連携を強化が必要です。両方のリーダーが変わり、新しい発想で府と市の関係をよくするチャンスです。
 府の経常収支比率96.6%。府債発行額2300億円、減債基金から借入れ1000億円という厳しい財政再建には、したたかな役人組織との厚い壁に必死の覚悟で臨まなければなりません。
収入の範囲で予算を組むため、全ての事業、46出資法人、83府有施設の見直しを提案されていますが、府民に理解できるよう意思形成過程のやり取りから、アンダー・テーブルでなくオン・ザ・テーブルで行うべきです。
 府有施設だけでなく府有地の総点検も必要です。削減だけでは府庁の活性化はなく、前向きな攻めの施策、事業展開にこそ活性化が生まれます。削減案と併せ早期の立案が大切です。
歳入が期待できないなかで、中小企業からの要望をどう吸い上げ、大阪の中小企業をいかに全国にアジアに発信するか、民間の力を府政にどう導入させるか、という施策も急がれます。
 府職員には数多くの有能な人がいます。危機的な財政状況の下で消極的な府政運営にとらわれ、今まで彼らを十分生かせなかった面があります。行政経験のない新知事にとって有能な職員をどう引きつけ、ヤル気のある職員を手元におくことが出来るかが課題と思います。
 私が府議に当選した平成7年からの歴代知事は、中川和雄、横山ノック、太田房江各氏ですが、全員、最後は辞任を余儀なくされました。
橋下知事こそ、そうでないように……。
私も、2月定例会は初陣の思いで、府民のために、新知事に対し論陣を張りたいと思います。



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