104 2008年5月号
府財政再建プログラム試案の波紋

削減の公開議論が大きな反響
府民の注目下で議論沸騰 役者が一枚上手の橋下知事

知事直轄の改革プロジェクトチーム(PT)が取りまとめた「府財政再建プログラム試案」は、大きな反響を呼んでいます。
 橋下徹府知事と市町村長との「対決」、PTと部局との「対決」は、連日にわたりテレビで放映されたので皆さんもよくご存じでしょう。
これらの議論は非公開であったものを今回は全面公開にしたからです。今まで行っていた事業を見直し削減しようと思えば、痛みも伴い、反発があるのも当然のことです。
したがって、どこの自治体も事業・施策の決定や見直しの意思形成過程は非公開にしており市民には分からないのも事実です。今回の全面公開は都道府県でも画期的なことです。
 全面公開のきっかけ―。
 平成10年2月3日、三重県庁に北川正恭知事(当時)を訪ねました。(本誌48号に詳細)
当時としては斬新的な予算査定する事務事業評価システムを開発し、平成9年には3200の県事業から268事業を廃止し、約59億円を削減した実績をあげられた三重県の仕組みを勉強するためでした。
その手法は、全国で初めて廃止の是非の議論を県議会で県民に公開して行ったことでした。これまでは「密室」の役所のなかだけの協議では、市民には分からず、アンダー・テーブルでなく公開というオン・ザ・テーブルで行われたことで、公平性、透明性が計られ大胆な改革が進んだことが強烈に心に残りました。
 大阪府の改革にもこの手法が必要と考え、折に触れ、府知事に提案しましたが、実現されることはありませんでした。
しかし、メディアを最大限に活用する橋下知事の登場で、私の意見が受け入れられるのではないかと、今年の3月14日と24日の総務常任委員会で、「テレビ放映のできる府議会の委員会室を活用し議論を公開すべき」と提案。予想どおり橋下知事も前向きな答弁があり、府として今回、初めて「公開討論」が実現したわけです。
PTと部局の議論を見ていて、真剣に事業存続を主張する部局もあれば、あきらめ半分の部局もあり、議論に望む姿勢がはっきりと見て取れます。
やはり「府民が見ている」状況でこそ、熱気あふれる議論が生まれ、職員の意識も変わりました。議論を見た府民の皆さんも、身近に「大阪府政」を知ることができ、関心を持たれたことは大きな成果です。
 しかし、4月17日の市長会での光景。
怒り心頭の市長と涙をながす知事との対決場面が、毎日のようにテレビで流されました。厳しい発言をした市長には、抗議のメールや電話が殺到したそうです。
市長会の全発言を見ても、抗議された市長も大半が冷静な発言ですが、厳しい口調の場面だけが放映されています。テレビが意図して知事と市長のバトルを演出しています。
そのことを知り尽くしている橋下知事の方が、役者が一枚上手です。
いよいよ、府財政再建プログラム「成案」を審議する7月臨時議会では議員が「抵抗勢力」として登場します。


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