109 2008年11月号
第2京阪道路立ち退き

サツマイモ収穫が待てない?
対決場面を望むテレビ報道 事実の映像でも編集で変化

 10月16日夕方のテレビニュースで、「子供が泣き、保護者が座り込み泣く姿」を見られて憤慨された方も多かったと思います。
 これは平成22年3月末完成予定の第2京阪道路(京都市伏見区〜大阪府門真市)の建設用地にある保育園の畑が行政代執行されたニュースです。


【写真】平成22年春完成予定の第2京阪道路の門真IC付近、手前が近畿自動車道、手前鶴見
緑地上空から門真市内を望む(国交省提供)

 畑には野菜が栽培されており、早朝から保育園の保護者ら約30名が反対のプラカードを掲げバリケードを築き抵抗、午前7時半頃から府職員が代執行を宣言し農作物の撤去を始めると、保育園経営者や保護者は「2週間後にサツマイモの収穫が予定されているからそれまで待ってほしい」と畑に座り込みやうつ伏せになるなど一時騒然。涙ぐんだ幼児の顔や保育園の言い分が放映され、代執行する大阪府を悪者に、保育所側を被害者として扱ったニュース報道です。おかしな事に報道されなかった事実があります。
 代執行の直前に、保育園側の弁護士から「園児にサツマイモを収穫させてから代執行しては」と調停案が示されました。
府側は了承しましたが、不思議なことに保育園側は拒否しました。「収穫までの2週間を待ってほしい」というのは、園児への配慮であるはずが、サツマイモの収穫という子供たちの楽しみを取り去ったのは保育園側という事実が隠されています。テレビ局も‘承知の事実’です。
テレビ局は、保育園側の本質を見極めていても、「サツマイモの収穫まで2週間、子供の泣き顔、行政への抵抗」は、行政への対立姿勢が、テレビニュースとして‘面白い’からに他なりません。
保育園側のインタビューを放送しても、府の言い分は一切放映しないのもうなずけます。
 府は保育園と平成15年から買収交渉に入っており、保育園側は第2京阪国道の建設そのものに反対で、一貫して買収には応じない態度から2週間たっても明け渡さないと判断したと思います。
 報道された2日後の10月18日、京阪電鉄中之島線の開通式で、平松邦夫大阪市長と控え室で懇談した際、この報道ニュースが話題になりました。平松市長も偏った報道にたいへん憤慨されており、放送局OBとして古巣のMBS番組制作者に即刻抗議したと言われていました。
 テレビは市民が見たがるものを放送し、視聴者は政策論議より対決を望む事を思えば、今回のようなニュースは日常茶飯事です。表情をそのままとらえ本質を映し出すので映像は事実ですが、「編集」により視聴者に「違った本質」を与えることも可能になります。
 このテレビの怖さを熟知し、テレビを最大限に活用しているのが、常に対決姿勢をあらわにして注目を浴び、府民にメッセージを送る橋下徹府知事ではないかと思います。



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