110 2009年2月号
知事の発言に苦言を呈す

議長団で異例の申し入れ
メディアも"橋下劇場"を荷担 2月議会WTCより景気対策

 橋下徹府知事は、この2月6日で知事就任2年目を迎えました。この一年を振り返ると、これだけ大阪府政を内外に話題を発信してきた知事はありません。その陰には183万票を背景にした橋下知事の強烈な個性とメディアの活用があります。
 「クソ教育委員会」、「バカ文科省」など過激な発言をメディアを使い連発、府民の関心を集め、喝采を浴びる手法は、各メディアの世論調査で8割を超える高い支持率が証明しています。国やお役人を抵抗勢力にして“権力”に刃向かう姿は、大阪府民にとって痛快に感じます。読売巨人軍に戦いを挑む阪神タイガースを連想し、共感を呼びこむ“大阪の民意”を知事は熟知しています。
 あれだけ霞ヶ関をこき下ろしても、霞ヶ関からは、橋下知事への批判の声は聞こえてきません。知事が上京して面談するのは、大臣、副大臣、政務官、事務次官クラス。メディアが同行しているから、相手はケンカをするわけにもいかず、嫌みの一つも言えば抵抗勢力にされ兼ねないと和気あいあいの“大人の雰囲気”です。橋下知事の人なつこい性格も幸いしています。
 しかし、府庁内では摩擦もあります。知事の独断専行が時としてあります。部長会議などの首脳会議を通さずに、定例となった毎朝の登庁時の記者レクで、矢継ぎ早に方針を発表するため、幹部職員でも反抗できない空気が漂うようになりました。府庁のなかでは、知事のことを「独裁者」という人もいます。
 1月6日の部長会議で、「本会議とは別に、発言の修正がいくらでもきく話し合いの場をお願いしたい」と発言がありました。
 これまでも政調会や会派と意見交換会などを行っており、議会と知事が議論する場を否定するものではありませんが、メディアに公開した議会各会派と知事との議論は、二元代表制のもと責任ある発言になります。後になって発言を修正したり取り消したりするとは考えられません。議会運営に関わることは、部長会で提案するのでなく、議会側に相談すべきです。
 また、府庁舎移転という重要課題では、知事から議会に対し、耐震案、建て替え案、WTC移転案の3案の検討を依頼しているにもかかわらず、庁舎移転構想推進チーム設置するなどWTC移転案一本やり。2月議会を控え、府庁移転案を上程するのか、議長団に知事からは議会運営のメッセージが伝わってきません。たまりかねて1月15日に臨時議運理事会を開き、各会派の了承を得て、文書で知事に異例の申し入れ(別掲)ました。知事は、「認識が甘かった改める」と表明され、緊密な連携で意思疎通を図ることを確認しました。
 2月議会は、府庁舎WTC移転問題一色です。メディアもWTC移転しか関心はありません。景気対策や福祉事業削減問題など最重要案件が、置き去りになっています。府民に影響の大きい府施策削減から府民の目を逸らす戦略でなければよいのですが。メディアも“橋下劇場”に荷担してはいけません。
(申入れ全文) 知事と議会との関係について
知事と府議会は、それぞれ執行機関、議事機関として、二元代表制の当事者であり、定められた地位、権限に基づき、一定の緊張関係のもとで切磋琢磨しつつ、ともに府政の伸張発展に努力しなければなりません。そのためには、緊密な連携の上に成り立った信頼関係が何より必要です。しかるに、昨今の貴職の言動において、議会との信頼関係を損ないかねないと思われる事象が相次いでいることは、真に遺憾であります。
特に、府政の重要課題については、議会において十分な議論が必要であるにもかかわらず、議論半ばで、自ら結論付けるような誤解を招く言動は厳に慎まれ、より一層慎重な対応をとられることを申し入れます。また、議会運営や提案内容に関わる事項については、事前に十分な意思疎通を図っていただくことを、あらためて申し入れます。21年1月15日


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