111 2009年4月号
WTC移転案否決

特別委設置出来ず頓挫
府民の賛成も10%で動かず 知事の素早い方針転換

 本会議を1日延長した3月24日未明。
注目された大阪府庁のWTC(ワールドトレードセンタービル)移転の府議会での採決は、移転条例案は総数112のうち賛成46、反対65、無効1。可決に必要な出席議員の3分の2以上(75票)の賛成には遠く及びませんでした。続いて行われたWTCビル購入費の補正予算案は総数111のうち賛成40、反対69、白票2の結果となり、WTC移転案は否決されました。

■二分した会派
 ベテラン議員の大半は反対、2期生を中心とした若手が賛成と二分した自民会派。民主会派も、執行部が賛成、ベテラン議員が反対したため、会派として賛否を表明出来ずに自主投票に。
 府庁舎移転案は昨年8月に橋下徹府知事が表明。府議会に議案として提出されたのが、2月24日。小誌先月号(178号)で紹介しましたが、審議の過程で、大阪市との移転費用負担の調整が未了、災害時の安全性データーの不備等が表面化。今議会のわずか1ヶ月間では結論は見いだせないと公明会派は反対。

■知事の議論拒否
 1ヶ月間の審議といっても、代表・一般質問と総務常任委員会の3日間だけ。WTC移転案だけでなく当初予算案など重要議案を抱えた総務委員会での審議時間だけでは無理があります。府民の関心も高く重要議案であることから、4,5月に集中審議できるよう特別委員会の設置を橋下知事に提案しました。
 知事からは、「今議会で決着してほしい」と拒否されました。当初から、府議会と議論したいと言われながら、議論する舞台を拒否したのは知事の誤算です。
納得できる材料を出し、一から議論すれば状況は確実に変わっていたと言えます。

■二つの逆風
 そんな中、知事にとって二つの逆風が吹きました。皮肉にも、大阪府が2月25日から3月17日にかけて、WTC移転の府民アンケートを実施した結果を19日に公表、反対は86%を占め、賛成は10%にとどまる結果でした。
 もう一つは、「賛成した議員には政治的配慮をする」と反対議員を冷遇するともとれる発言が、余計に反対派議員から反発を招きました。
 また、与野党にかかわらず反対する議員宅を訪問する知事の姿は、今までのオンザテーブルとは違う古い政治家の行う「多数派工作」の手法も違和感を覚えました。

■府と市の協調
 否決された後、記者からの質問に、「賛成した議員に配慮しようにも、無記名投票だから配慮しようがないですよ」。「府民との感覚と僕の感覚がずれていたのでしょうね、いいんですよ、これで。なんでも重い通りになれば、北朝鮮みたいに独裁者になってしまいますから」と素早い方針転換は議会との関係悪化を意識されたからでしょう。
議会側にも是々非々の態度で、知事に対するこだわりも少なく影響は少ないと思います。
 府庁舎をWTCに移転するアイデアは、まちづくりとしては面白いと思いますが、スピード感のある府政運営で府民の支持を集めてきた知事としては、今回は余りにも急ぎすぎたのでしないでしょうか。
 今までの府と市との不仲な関係から、橋下知事と平松邦夫大阪市長との連携は、これからの府と市との協調が一歩すすむ効果があったのではないでしょうか。これを機会に府市協調の幕開けにしなければなりません。



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