112 2009年5月号
知事のメディア戦略

計算された一時退席
二度目の申入れ効果? 府議会の役割が重要

  「なぜ橋下知事に反対するのですか?」という府民の皆さんからの声をいただきます。
 WTC移転案を審議した2月定例府議会以降、一ヶ月以上たった今でも尋ねられます。質問と言うより、詰問に近いかもしれません。「知事選挙で応援した与党側なのに、橋下知事の提案することに反対することはおかしい」と言う訳です。
 私どもがWTC移転案に反対した理由を説明するとほとんどの人とは納得されます。
なぜ、多くの府民の皆さんが橋下知事を支持されるのでしょうか?
その理由はこのコーナーでもたびたび紹介してきましたが、府民の皆さんは、橋下知事を「教育委員会」や「霞ヶ関」を抵抗勢力にして過激に挑む姿をテレビの映像を通じて見られ、「一生懸命、頑張っている姿」に良い印象をもたれます。

 知事もそのことを意識されテレビに向かわれているのでしょう。いくつかのエピソードをご紹介しましょう。
 4月8日、国土交通省で、全国知事会と金子国交相、鳩山総務相、石破農相らと国直轄負担金制度をめぐる意見交換会が開かれました。橋下知事は、会場に入るなり、テレビカメラ取材が会議の冒頭だけに限られていることに反発し、一時退席しました。
 このことを担当者に確認すると冒頭取材は知事も事前に知っていたそうで、知事独特のメディア攻略と思えます。
 結果的に、カメラ取材は会議終了まで認められ、橋下知事の言動も大きく全国に報道されました。これほど巧みにメディアを攻略できる知事は他におられないでしょう。

 府庁のWTC移転条例案が無記名投票の結果、府議会に否決されたことから「地方分権のながれから採決は記名投票にすべき」と府議会への批判を繰り返す橋下知事に対して、府議会理事会の総意で「府議会における投票表決に関する知事発言について」の申し入れを4月23日付文書として渡しておりました。
 ところが、5月7日の記者会見で知事は、「(申し入れ文書の)意味をまったく理解できていません」と発言。8日、知事に真意を確認すべく畠議長と二人で知事室を訪ねました。
 会談の模様はメディアに公開したせいか、知事の態度は強硬なもので、議論がかみあわないまま会談は30分以上に及びました。
府議会から文書で知事に申し入れをしたのは今回で2回目です(詳細は本誌2月号)。
 前回の1月15日は、メディアに公開しなかったためか知事からは「認識が甘かった」と素直に反省の言葉がありました。
 メディア重視の知事としては取材陣の有無で対応が変わるのでしょう。その意味ではメディアも知事に攻略されています。

 4月には、9人いるひな壇部長のうち、2人の部長を定年前に外部法人に放出するなど極めて異例の人事断行で、戦々恐々とする幹部職員を見ると職員から率直な意見具申が出来るのかと不安に思います。抵抗勢力と言われようと知事へのチェック機能を行うべく府議会の役割はこれからです。



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