117 2009年10月号
堺市長選の意外な結果

政党相乗りを争点に
マスコミ、橋下戦術に攻略 知事の政治力を誇示

 9月27日は大阪府堺市長選挙でした。
 3選目を目指す元大阪府職員の木原敬介現市長には、民主、自民、公明3党が推薦を決め無風選挙と思われていました。ところが、大阪府政策企画部長の竹山修身氏を橋下徹大阪府知事が推薦したことで状況が一変。橋下知事がのべ8日間も、堺入りして応援演説を行うほどの熱の入れようでした。
 選挙結果は、竹山氏が13万6212票をとり、木原氏に4万7206票の大差をつけ当選しました。全く無名の竹山氏の勝因は、橋下知事の戦略にありました。
 橋下知事は、木原氏の「政党相乗り」を選挙の争点にし、「直前の衆院選では、自民・民主が激しく戦ったのに、相乗りは談合だ」と街頭演説などで政党を強烈に批判したことで、堺市民の関心を呼び、投票率が43.93%で前回と比べ11,54%もアップし、無党派層や現職批判票の取り込みにつながりました。

「相乗り」と「分裂選挙」
 首長が、実績を積めば支持する会派や政党が結果的に増えるのは当然のことでしょう。堺市の場合でも、木原氏は2期8年、派手さはありませんが堅実な市政運営で市民の評価を得られてきたと聞いており、必ずしも相乗りが悪いとは言えません。
 2年前の府知事選で橋下知事は、「自民と公明の推薦がなければ府政運営が出来ない」と「自公相乗り」の支持を求めてきたことから、必ずしも政党相乗り反対が本意でなく、巧みに選挙戦略として用いたと思えます。
 自民・公明にとっては背任行為にあたりますが、マスコミ報道は一切ふれず相乗り批判一色になりました。マスコミも、知事の戦略まんまと乗せられました。別々の候補者を推 薦すれば「分裂選挙」と報道します。
知事の思いつき発言を租借せず、発言の全てを発信するマスコミの姿勢が知事の支持率向上に力を貸してきたことは否めません。知事のマスコミ対策は天才といえます。

竹山氏出馬の舞台裏
 もともと知事は、木原市長の後援会でも木原氏を持ち上げ、支持を表明されていたのに、何時の時期に竹山氏に乗り替えたのかはわかりません。
 竹山氏が最初から市長選に立候補する気であれば、4月の政策企画部長就任は辞退していたでしょう。今年7月に公務員の立場で非公式にでも出馬表明することは考えられず、この時点で橋下知事との“話し合い”があったと思われます。
 橋下知事が、竹山氏を支持した理由を私は、一つに、府内の首長から「首長連合の同志」を作りたかったこと。
 二つに、「選挙結果によって国会議員や府議の僕への接し方が大きく変わってくる」、「(竹山氏が負けた場合)知事の政治力(影響力)が減衰する」と記者会見などで発言していることから、今回の市長選を、橋下知事自身の政治力を示す場にしたと考えます。
 知事の力は、自身の権力誇示することでなく、府民の為に使うかではないでしょうか。
 WTC移転が否決なら約20億円かかる出直し知事選も選択肢の一つと主張することも政治力とするなら他の意見は排除の論理になります。知事はよく「私は府民の民意を代表している」、「府民の民意を受けているのは私」と自負されていますが、2年前の選挙で圧勝したからと言って、知事の考えがすべてとするなら独裁者になってしまいます。



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