118 2009年11月号
WTC移転採決の結末

わからない補正予算可決
議会もWTCビル買取責任 先行取得は知事の勝利!?

 3月議会で否決された大阪府庁舎移転条例案とWTCビル購入補正予算案(85億円)が、再び9月議会に橋下徹府知事から提出され、10月26日に予定していた採決は紛争、徹夜になり翌27日の午後2時前までずれ込み、移転条例案は否決、予算案は可決となりました。
 府民の皆さんから、「移転しないのになぜ買うの?」と疑問の声をたくさん頂きました。わかりにくい結末を検証します。
 紛争した原因は、自民・民主の会派では、賛成反対派が拮抗し、賛否の態度が決められず、党議拘束すれば会派が分裂する可能性があるため、出席議員の3分の2の賛成が必要な移転条例案は継続審議にして結論を先送り、予算は成立させるという妥協の折衷案を画策しました。
 これらの動きについてマスコミは、「知事の『出直し選挙』の脅し発言や堺市長選の新人候補の圧勝で、議員が尻込みし、知事に擦り寄る姿だ」と批判しました。
 自民・民主では、賛成反対派間で、調整が難航。そのような動きに嫌気をさした自民前幹事長ら5人が自民会派を離脱する事態にも発展しました。
 これは、府庁移転の議論でなく、会派の分裂騒ぎを収拾するための議論と府民には映りました。府庁移転を継続審議にしたままで第2庁舎として購入することは府民の理解は得られないと公明は一貫して反対を主張。
 しかし、自民(43人)・民主(24人)だけで過半数(57)を占めるため、一時は、公明から「条例案が可決するまで予算執行しない」という付帯決議案を示しましたが、自民・民主からは拒否。27日未明になって、民主会派内で公明の主張に同調する意見が出され継続審議を放棄し、採決することを決定しました。
 これにより自民も自主投票に。午前6時すぎ、各会派は、採決では党議拘束をかけず自主投票する流れになりました。
 採決では、先に移転条例案の記名による採決が行われ、賛成52票(75票で可決)で否決。次に行われたWTCビル購入予算案は賛成61票で、過半数57票を僅か4票上回りで可決しました。

 議会側が、府庁移転を否決して、府の危機的な財政状況下で、目的が明確でないWTCビルを取得したことは、府民の皆さんには理解されにくい結末になり残念です。
橋下知事は、一貫して移転条例と予算案をセットで提案しており、WTCビル先行取得を認めることを議長団や一部の会派幹部に伝えたとはいえ非公式の話。セットの提案をWTCビル取得だけを可決したのは議会側です。
 したがって、WTCビルをどのような使い道にするのか、今後は議会も責任を負うことになります。
 来年4月以降にWTCビルを取得するまで、第2庁舎にするのか、大阪市や民間テナントの賃料、退去問題など不確定な課題解決の責任も府議会にかかってきます。
 橋下知事は、議会ごとに移転条例案を再提出されると思います。
 遅くとも来年9月議会が大きなヤマ場と思います。半年後の平成23年4月には府議選があり、反対する議員には、「出直し知事選」や「堺市長選の刺客」以上の揺さぶりを知事は仕掛けてくるでしょう。
 圧倒的な府民の支持を受ける橋下知事の人気に議員が政治信念を貫けるのか課題です。  今回の結果をマスコミは、知事と府議会の一勝一敗としていますが、私は橋下知事の勝ちと思っています。

不可解な市長の要望
 吉道貝塚市長ほか府内市長26人から10月21日に「府庁のWTCへ移転案について慎重かつ柔軟な対応を求める要望書」が橋下知事と議長に出されました。
 中身は知事に対して「知事の2月以降の言動については、失礼ながら『自分の主張のみを正当化する』という頑なさが故に事態を複雑化しているように思えてなりません」と指摘、議員に対しても「知事の言動が故の感情論が議論の背景に混同されないよう…」と注文、「両者の間に相当な確執が生じていることも周知の所であり心痛しております」と全文が抽象的な言い回しで、WTC移転についての意見もなく、要望の意図がよくわかりません。
 知事と議会は激しく議論しますが、感情的な対立は感じたことはありません。署名された首長の認識が間違っています。賛同されなかった高槻、茨木、枚方、藤井寺、羽曳野市長の態度が正しいと思います。



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