121 2010年4月号
全国初のネーミングライツ

歩道橋の塗替えは誰が?
営業活動が成立のカギ 市場原理に基づく価格設定

 「お役所」は営業努力をしなくても税金という固定収入があり、支出だけを考えればよいという「所」です。民間出身の私は、「より厳しい財政難の大阪府で、税収だけを頼るのでなく民間並みに増収を諮る努力をすべきだ」と議会でも提案してきました。
 税収以外の収入といえば遊休地等の売り払いが大半ですが、府財産を有効活用する知恵も必要です。その声に応え府は平成18年、府有財産の管理のみをしてきた管財課を財産活用課として立ち上げ増収をめざしました。
 私も、庁内に設置している自動販売機の使用料を改め公募するよう提案、19年に全国の自治体で初めて公募したことで、約3億円の収入がありました。その後も府営公園や府営住宅にも拡大して、今年度には約5億2500万円の収入になります。このことが大きな反響を呼び、今では17都道府県や多くの市町村に波及しています。
 そうしたなかで、このほど府枚方土木事務所(坂本幸三所長・当時)は、枚方市伊加賀緑町にある歩道橋の命名権(ネーミングライツ)を自動車販売店の大阪スバル(株)と成立させ、年間45万4千円、5年契約で227万円の増収を図りました。一般歩道橋でネーミングライツの成立は全国初めての快挙です。
 このエピソードを紹介します。
 昨年3月、企業から枚方土木事務所に、「新店舗を開設するが、目の前の歩道橋が塗装も剥げ落ち美観にそぐわないので、塗装塗り替えて欲しい」と要望が出されました。 従来の対応であれば、ご多分に漏れず、「予算が無いからと出来ません」と答えるところを、土木事務所の職員は、企業から塗装協力してもらえる提案を引き出しました。 協議の結果、店舗側階段部を企業が塗替することで合意しましたが、土木事務所は、さらに桁部分の塗替協力も依頼しようとネーミングライツを提案し営業活動を展開しました。
 課題は価格設定で、新潟県が県道奥只見シルバーライン、魚沼スカイラインを年間800万円、1000万円で平成20年4月に公募しましたが応募がなく、宝塚市でも21年12月に市立文化施設ベガ・ホール、市立総合体育館等を年間400万円、300万円で公募しましたが、これも応募が1件もありませんでした。

【写真】橋桁の青い部分が看板
 土木事務所はこれらの失敗事例を研究。価格設定が市場価格と乖離していたと分析、応募できる価格設定として1畳当たり月額1.5万円の野立看板の相場を参考にして、2畳分の面積で年間36万円と算出。歩道橋塗替費用と見合う年間30万円を最低価格とした結果、3月5日に「大阪スバル枚方パーク店前伊加賀歩道橋」の名称で公募契約が成立しました。
 今回の成立は、企業からの塗替要望から、ネーミングライツを提案し企業の協力を求めるため職員が営業活動に徹したこと、現実的な市場価格に基づいた価格設定を行ったことです。収入は枚方土木事務所の道路維持管理にあてられます。
 ようやく府庁の職員にも、遅ればせながら民間並みのコスト意識が生まれてきました。


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