128 2011年3月号
知事と議員の関係

議員はボランティアか
二元代表制見直しも 議員の評価制度も必要

 橋下徹府知事は2月府議会の各会派の代表質問で、「予算編成権を持たない議員とPTA会長や自治会長とどう違うのか」と挑発的な答弁を連発しました。
 橋下知事は、「予算編成権を持つ知事には責任がかかり、議決権だけの議員には責任が問われないのは不公平」と本音をポロリ。
 地方自治法の二元代表制を否定することになるので、少々、反論。
 日本の地方自治では、首長と議員を直接選挙で市民が選びます。首長は予算編成権、人事権など強い権限を持つため、議員は対等の立場で、首長を監視する役目をし、双方が対立することを前提とした制度です。
 二つの民意が健全な緊張関係を保ちながら、議論を尽くし結論を見いだすのが二元代表制の趣旨です。ところが、首長が、議決を得るために、議会答弁のすりあわせなどを通じ、議会に「根回し」し、多数派工作で与党化した議会が増えました。二元代表制の目的を双方がくずしたことで、市民の不信を増幅したことは否みません。監視機能を発揮しなくなれば議会の存在感はありません。
 一方で、首長自らが、地域政党を立ち上げ、多数派工作するのも「根回し」と同じことで、首長の人気に頼って当選した人達に、首長を監視できるか疑問です。
地方自治体に、財務や事業について監査を行う監査委員が複数いますが、議員から選出された監査委員は、任期中は議会での質問を自粛する傾向にあり、これらも二元代表制の弊害と言え、議会選出は廃止すべきです。
 首長と議員との関係は国によって様々です。イギリスでは制度が二種類があり、多いのは、議員のなかから首長を選ぶ一元代表制で「議院内閣制」といわれ議会主導型です。日本の国会と同じ制度です。フランスやスウェーデンもよく似た制度です。
 もう一つは、二元代表制のように別々の選挙で選ばれますが、議員が首長の執行機関に入る「議会内閣制」です。首長主導型で、橋下知事も「議会内閣制」導入を主張しています。
 その他にも、議会が首長(シティマネジャー)を任命し執行権を与えたり、コミッショナーを任命し行政運営させるなど様々な違いがあります。地方自治法の改正を求めるのではなく、地域主権をめざす時代のなかで、地域や風土によって、自らが優れた制度を決定できるようにしなければなりません。
 その場合、地方議員は、専門職かボランティアなのか、職責を明確する必要があります。地方議員は常勤の国会議員と違い、非常勤公務員で、給与でなく報酬です。
報酬とは、労務の対価として給付される金銭で、労働日数に応じて支払われるものですから性質はボランティアと言えます。
 しかし、現実は月払いで、都道府県議員の報酬額(2頁参照)も、大規模な自治体ほど高い傾向にあります。議員の日常的な活動量や職責を評価する制度はなく、1期の新人議員もベテラン議員も報酬は同等です。
 非常勤公務員だから兼業や兼職も認められ、戦後から地方自治法に議員の労務についての規定がなく、曖昧な状態でおかれてきたことで、議員の仕事が見えないと言う声に応えるためにも評価制度を導入すべきです。
議員の職責を明確にすれば報酬も自ずから決まります。
 橋下知事は、大阪市の財源と機能を「大阪都」に移譲し、一人の司令官に「権限」を強化することを主張されており、首長と議員の関係を議論するチャンスです。


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