中村議員は2月18,19の両日、青森県藤崎町と弘前市を訪れ、見出しのとおり「公立病院の赤字と地域医療対策」をテーマに調査研究を行いました。
何故ここを選んだのか、またその結果どうであったのかなどは、下記のとおり府議会へ調査報告書を提出していますので、これをお知らせします。なお、公式の報告書のため、少し硬い表現になっていますが、ご了承ください。
・ 視察調査先 |
青森県藤崎町(2/18)、弘前市(2/19) |
・ 視察調査日程 |
2009年 2月18〜19日
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・ 視察調査参加議員 |
半田、松田、中村、山添、上の、徳丸の6議員
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・ 察調査対応者 |
★藤崎町 収入役 館山新一、総務課長 三上治、常盤支所長 直井慎一、 行財政改革推進室長 能登谷英彦、町立診療所長 永山隆造 ほか4名
★弘前市 健康福祉部健康推進課長 大高悦美、同課主幹 鈴木卓治、同課
課長補佐 山田実、同課主査 清野悟 ほか2名(敬称・略) |
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本年1月13日付のA新聞に、「民営化地域医療にしわ寄せ」、「大変でも、ベッドは残してほしかった」との見出しで、自治体財政健全化法による行財政運営と青森県藤崎町の元公立病院の件が報道された。この記事は、指定管理者制度の導入、その後に入院患者の受け入れ廃止など、今日の自治体財政と医療現場の問題を凝縮している事例だと思われた。
そのことから議員団は、なぜこのような報道がなされたのか、現場の苦労や町民の考えはどうなのかなどを詳細に調査することにより、公立病院を抱える大阪府の医療政策と府民の医療への期待に応えることができるのではないかと判断したものである。
さらに、近隣の小さな自治体での救急医療施策が崩壊していく中で、その受け皿としての弘前市の救急医療政策を知りたいのが主要な事由である。
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1. 藤 崎 町
視察調査を終え、我々が総じて感じたことは、「相当に現地の状況が違って報道されている」と言うことである。
A新聞の記事によると、「長期的にベッドを確保してもらえると思って民営化したのではなかったか」、「病院を取られてしまったようだ」などと、町議会でも大きな問題になったとのことであった。しかし、藤崎町の担当者の説明では、「議会ではそのような発言も無かったし、現実を正しく捉えず、報道には憤っている」とのことであった。現に、我々が診療所で挨拶した途端、開口一番、「何の調査の為に来たのか」と、抗議的な口調で迎えられたことが、現場の状況を示していた。
我々は、
- 指定管理者導入までの病院の利用状況と経営について
- 指定管理者の導入時
・公立病院をどの様な検討によって指定管理者制度を導入したのか
・町民と議会からは、制度導入にどの様な声が出されたのか
- 制度導入後の状況
・町の財政負担はどの様に変化したのか
・診療科目や救急の受入れはどうなったか
・今後、指定管理者制度をどうしていこうとしているのか
- 県や近隣自治体とはこのことでどのような協議をしているのか
などを質問し、回答を得た。
藤崎町では「町立病院」として、町民の医療を保障するために、町の財政状況から考えると極めて苦しいが、公立病院の使命を果たさなくてはと、毎年多額の繰り出しを行い、前年度では約3億円もの繰り出しをしていた(全国的に同様の傾向)。
しかし、夕張市の破綻後に施行された「財政健全化法」によって、一般会計だけではなく連結決算によって財政状況を判断することとなったため、このまま3億円以上を毎年繰り出す状況が続けば、数年で「破綻」となることから、どうしても指定管理者制度を導入せざるを得なかったことが分かる。そのため、「議会の全員協議会を何度も開き、住民にも度々説明し、常勤医師の不足、財政的なメリットなどから指定管理者制度を導入したが、医療が保障されるのであればと、住民からは大きな不満も無く、一定受入れられたものと考えている」という説明は、諸条件がうまく重なり合ったことによるものとはいえ、非常に説得力のあるものであった。
しかしながら、指定管理者制度を導入しても、毎日の外来診察は100人前後で経営環境が厳しいこと、さらに常勤医師の退職などで医師の確保が追いつかず、病院としての法的条件さえも満たすことができなくなったようである。そのため、どうしても入院患者の受け入れを断念せざるを得なくなり、「救急患者」や「入院患者」については指定管理者である「Bの経営する病院」などで受入れているようである。町民は、入院などができなくなって残念だが、「入院できないのはおかしい」と責めて、その結果、指定管理者に引き上げられ、医療機関そのものがなくなってしまうよりは、ベターな方法だと感じているのが実態だと思われる。
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指定管理者制度で運営している藤崎町立診療所で 正面左端が診療所長
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診療所の前で
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町役場の正面で(役場は診療所と隣り合わせ) |

役場の中に表示されている外気温は−3.8度です
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ホテルの横の橋の上で |

役場への道中で食べた名物の「焼きそばラーメン」 (焼きそばに醤油ラーメンの汁をかけ天麩羅などを入れてある)
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2. 弘 前 市
近隣の自治体で次々と救急医療病院が無くなっていく中、多くの患者が弘前市内の医療機関に搬送されているとのことが、藤崎町の指定管理者制度の記事と合わせて掲載されていたことから、津軽二次医療圏の中心である弘前市を訪問した。青森県は二次医療圏を6地域とし、藤崎町も弘前市も同一医療圏である。
弘前市は人口が約18万人で、大都市圏の都市と比較するとそれほど大きな自治体ではないが、市制が始めて導入された当時の全国31市の内の一つで、かつての県庁所在地であっただけに、救急告示病院も9ヶ所ある。しかし、津軽医療圏には弘前大病院があるのに「救命救急センター」は設置されていないことが不思議である(弘前市は近年の合併などでその市域面積が523平方qにも及ぶ)。切迫した患者は青森市まで搬送しているとのことである。
弘前市は現在の医療現場の問題として、
- 勤務医の高齢化などによるマンパワー不足
- 輪番制に参加する病院の減少(近年の救急部門の不採算性による)
- 津軽地域の自治体病院の再編議論
- 内科・外科系を含め二次医療の対応さえもできない状況があること
など、多くの問題を抱えていることを説明された。
この解決のために、どの様な方策を講じているのか、また今後、どのように講じようとしているのかという我々の質問に、
- 救急医療現場での医師・看護師らの負担軽減を少しでも実現する
- 医療機関の偏在をしっかりと正していく
- 特定の医療機関・自治体のみが費用負担することには限界があり、近隣の自治体に輪番制度維持のための一部負担金のお願いを継続する
- 国保連合会などの奨学金制度などの継続と充実
などをこれからも講じていきたいと回答された。
また、議員団は、大阪府での医療の現状、とりわけコンビニ受診といわれる状況や公立病院への医師派遣事業、輪番制、ドクターヘリなどを説明するとともに、都道府県と市町村の医療における役割分担などでも意見交換を行った。
我々はいずれの自治体でも、住民にいかに信頼されているか、そのために根気よく説明して理解を得る努力を重ねているかなどが極めて大切であるということを改めて認識した。府内の自治体では最近、病院のあり方を巡って市長のリコール運動まで生じているだけに、今回の視察調査は我々の議会活動・政務調査活動を進める上で意義あるものとなった。 |
医療を住民に保障し、生命を守ることは何よりも優先する政策課題であるが、今日の地方財政の状況と法制度がこれに的確に対応せず、財政的な見地からの判断のみが重視されてしまうことに大きな問題を残している。府の5病院の運営についても、公私の役割分担、事務量などしっかりとした議論を進めていきたい。
【右:写真】 弘前市の説明者
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説明を聞く議員団 |

弘前市保健センターの正面玄関で
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