〇福祉施設の災害避難計画と防犯対策
昨年8月に岩手県の高齢者グループホームで台風10号により9人が犠牲になるなど、大きな被害が発生しました。その後の県のアンケートの結果、県内の社会福祉施設の内、水害や土砂災害に対応した避難計画を策定していない施設が全体の6割にも上ることが判明しました。
高齢者施設をはじめ、福祉入所施設では、災害時に適切な避難行動がとられるよう、災害時の計画の整備を欠かすことはできません。
中村議員は、「府内の福祉入所施設で、災害発生時の行動・対応をしっかりと定めた計画やマニュアルなどはどの程度策定されているのか」を取上げました。
府は、「障害者施設と特別養護老人ホームなどの高齢者施設などは全て策定されているが、通所系施設では94%にとどまっている」と答えました。
さらに中村議員は、「昨年夏の相模原市の障害者支援施設での事件では多くの命が奪われた。このようなことが二度と起こらないよう、施設の防犯対策を徹底していく必要がある。その際には指導だけではなく、防犯設備などへの整備補助も重要だ。防犯対策はしっかりと出来ているのか」と取上げました。
これに府生活基盤推進課長は、「社会福祉施設等施設整備費補助金を活用し、防犯カメラや非常通報装置の整備など、防犯対策のための整備補助を行っている。申請のあった79施設に対して補助を行う予定で、ほぼ今年度中に整備が完了する」と答えました。
〇無届の有料老人ホーム
無届有料老人ホームへの対策も重要です。現在、府内の無届施設は100ヶ所を超えています。高齢者が要介護状態となり、在宅での生活が難しくなった場合、老人ホームへ入居されるケースが多くなりますが、金銭的に余裕がない場合には「無届」を選択されることがあります。
無届の場合は一般の有料老人ホームに比べ、利用料が低い場合が多く、行き場のない低所得者の受け皿の1つにもなっています。また、「無届」施設は劣悪な設備や衛生状態、入居者への不当な処遇や虐待も懸念されます。
さらに入居者の状況把握が難しく、本人が望まない介護サービスや医療行為などの押し付け(いわゆる囲い込み)も予想され、貧困ビジネスにつながることも危惧されます。現在、老人福祉法の改正案が国会に提出され、事業停止命令の新設など、指導監督を強化していく内容になっています。中村議員はこれらの把握と今後の対策を問いました。
府は、「届出指導の一環として、有料老人ホームの判断基準を明確化し、無届の場合は施設名を公表する検討をしている。入居者が不当な扱いを受けず、安心して暮らせるよう対応する」と答えました。
〇民生・児童委員の見える化プロジェクトの本格導入
中村議員が、地域福祉の重要な柱と位置付けている民生・児童委員について、次のように取上げました。
Q1 昨年12月、3年に一度の「民生委員・児童委員」の一斉改選が行われました。新聞報道等によると、府域の充足率は94.3%となっており、前回の一斉改選の充足率95.5%に比べて1.2ポイントも低下。さらに、全国の充足率96.3%より、府は2ポイント低い状況になっています。とりわけ、大阪のような都市部では、委員自身の高齢化や昨今の福祉課題が複雑化する中で、その担い手不足は深刻で、喫緊の課題です。
○ こうした状況にあって、先の9月定例会でも取り上げた「民生委員・児童委員活動の見える化プロジェクト」は、民生委員・児童委員の認知度向上と若い世代からの人材確保を目的に、全国初の取組みとしてモデル実施されました。
○ このプロジェクトの実施で、一気に担い手不足が解消されるものではありませんが、大学と地元市、各市の民生委員・児童委員の協力を得て、夏休み中に大学生が委員活動に密着するインターンシップ等に参加するプログラムは、学生がその実態を把握し、広く発信することで"見える化"を図る大変有意義な取組みです。
その成果を発表する活動報告会へは、私も出席。学生のプレゼンテーションはどれも興味深く、改めて学生の地域活動への関心の高さを実感したところです。
今後、より効果的な事業展開を図っていくためには、今年度モデル事業の効果検証をしっかり行うことが重要ですが、まず、府における取組み成果を伺いたい。
Q2(来年度の本プロジェクトのポイント)
○ 参加した大学生が、民生委員・児童委員への理解を深め、地元の民生委員・児童委員活動に参加したい、将来、福祉に関わりたいと思うなど、本プロジェクトを通じて、学生の福祉活動や地域貢献に対する意識向上などに、好影響を与えたと思います。
全国初の取組みとして、マスメディアにも数多く取り上げられ、注目を集めているところで、今後とも継続的な事業として、より多くの学生が参加できるよう、是非、本プロジェクトを本格軌道に乗せてほしいと思います。
〇 来年度については、知事重点事業として、府内7つのブロック全域に拡大する等、参加自治体や大学数も大幅に増加して実施するとのことですが、今年度の取組み成果のうえに立って、さらに創意工夫を凝らし、本プロジェクトを推進していくべきですが、どうですか。
〇 来年度、事業規模を拡充し、今年度モデル事業の参加大学生と連携し、新しい大学生を呼び込む取組みは、地域福祉活動によき循環をもたらすなど、大変良い試みで、さらなる取組み成果を期待します。
Q3 一方、担い手確保が困難な背景には、民生委員・児童委員が抱える悩みや負担が増大しているところが大きい。昨年末、府がとりまとめた報告書によると、民生委員・児童委員が抱える負担を「身体的負担・精神的負担・経済的負担」の3つの負担に分類し、これら負担軽減を図るための今後の方向性を整理しています。今後、より効率的・効果的にその改善を図っていくためには、府が負担軽減のあり方について具体的な手法を示していくことが必要です。この点について、府の考え方は。
要望 民生委員・児童委員は、自分たちのことを『縁の下の力持ち的な存在』であるべきと思っておられます。このため、その認知度は低く、活動内容も正しく理解されず、近年、担い手確保が困難な状況となっています。
〇 昨年12月の一斉改選では、全国的にも担い手確保に苦戦している状況にありますが、大阪府の状況は依然厳しく、およそ100年続いてきた制度の存続が危機的な状況ではないかと思います。
○ こうした状況のもと、「民生委員・児童委員活動の見える化プロジェクト」の実施意義は大きく、是非、大阪から全国へ発信するとともに、府内全43自治体に対して参画を働きかけ、民生委員・児童委員活動の「見える化」を通じて、活動の認知度向上と将来の担い手確保へつなげていただきたいと思います。
○ 加えて、活動の負担軽減にも、様々な知恵を集めて、具体的な改善策と実施時期を明記したロードマップを作成するなど、市町村や関係機関等とともに取り組んでいただき、まさに『縁の下の力持ち』である民生委員・児童委員の活動しやすい環境づくりを通じて、地域の誰もが安心して暮らすことができる、そんな地域社会を構築していただきたい。
答弁については、省略しました。
〇企業、病院など様々な形態の保育 → 職業訓練校等にも
昨今の保育を取巻く環境は「待機児童の解消」、いわゆる「量の確保」が主流となっています。これについては保育の実施主体である市町村が整備を進め、保育の受け皿確保の取組みが進んでいます。
一方で、保育を必要としている保護者の就労形態は様々で、例えば、繁忙期に残業が発生しても、また、子どもが急な病気になっても、安心して働き続けるための労働環境の整備という観点から、病児保育や延長保育などがあります。
しかし、働く保護者の多様なニーズに応えるためには、これだけでは十分とはいえません。病院や介護の現場、惣菜工場など、夜勤や早朝勤務などの変則的な就労を要する業種が多く存在し、さらに就労場所の近くで子どもを預けたいというニーズもあります。
このような中、28年度から、多様な働き方に対応できる「企業主導型保育事業」が創設されました。
中村議員はこれに対し、現時点の府内での事業採択と大阪府の取組状況を取上げました。府の説明では、現在、府内では58施設、13百人分あり、全国の約8%になります。
次に中村議員は、企業主導型施設で提供される保育の質も重要で、立入り調査を含め、しっかりと対応していくことを求めるとともに、「これだけではなく、働くための就職活動や資格を取得するための講座などを受けている親の保育ニーズにも応えるため、職業技術訓練校などでも対応できるようなきめ細かな対応が必要だ」と求めました。
今年初めに発表された「子どもの生活に関する実態調査」の中間とりまとめでは、困窮度の高い層は生計者が母親である割合が多く、一人親家庭が多いとの結果が示されています。このようなことから、一人親家庭に対する就労支援策は府が率先して実施すべきです。
しかし、一人親家庭の親が就職活動をしたり、資格を取得するための講座などを受講したいと考えても預け先がなく、断念している例も相当あります。就業への第一歩である講座などに保育サービスが付いていれば、受講しやすくなり、より就業に結び付き、極めて有効な施策と言えます。
〇介護現場にインセンティブ
中村議員はこれまで、要介護度の改善に頑張った事業者に対して「インセンティブ制度」の導入が必要だと言ってきました。現行の制度では、がんばって利用者の要介護度を改善することによって、事業者にとっては報酬が減ってしまう仕組みとなっています。
また一方で、介護職員は、身体的・精神的な負担が大きい仕事であるのに、低賃金であるためなかなか定着しません。このため、経験の浅い職員ばかりになって、利用者に対するケアの質への影響が懸念されるケースもあります。
こうした流れを止めるには、改善に向けて頑張った事業者が報酬面で処遇され職員の待遇も改善されるよう、制度を改正していく必要があります。国も平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて、「自立支援に向けたインセンティブ」の付与が議論される見込みで、大阪府としても独自に「インセンティブ制度」を考えるべきだと、松井知事に質しました。
松井知事は、「中村議員の指摘のとおりだ。スピード感を持って府としてのインセンティブ制度をつくる。良い方法があれば提案してほしい」と答えました。
〇混合介護の問題
◆質問1 次に混合介護について伺います。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」については、現在東京都が特区で豊島区と連携した検討が進められています。
論点は2つです。「同時一体的なサービス提供」と保険サービスの価格上限設定の自由化「例えば、ヘルパーの指名料」の是非とも聞きます。これによって事業者の収益が向上すれば職員の処遇の改善につながることが期待できます。
例えば、在宅で介護する家族等は十人十色、さまざまな状況にあると考えたときに、「混合介護」も意識した、大阪に見合ったモデルケースを検討するとか、新たな仕組みづくりを検討していく必要があると考えますが、府の認識はいかがですか。
◆A1 委員お示しのとおり、混合介護が認められれば、事業者の収益が向上し、介護職員の処遇改善、介護サービスの質の向上につながる可能性はあります。
一方で、認知症の方など合理的な判断が難しい利用者が増える中、また利益誘導型の事業者やケアマネジャーが現に存在する中、本人のニーズとは関わらない保険給付が広がる懸念や、そのことによって介護費の増大につながる危険性もあります。
また、大阪府は、全国で一番居宅介護事業者が多く、保険給付と自費負担の区分のあり方や適切な指導監督体制の構築、利用者トラブルが生じた際の救済など種々の課題があると認識しています。
◆質問2 新たな制度を導入する際には、メリット・デメリットの両面があり、よく検討する必要があることはわかります。混合介護などが認められれば、利用者の満足度を高めるとともに、事業者や介護職員へのメリット等も期待できるなど、一考する価値があると考えますが、如何に。
◆A2 昨年、大阪府は認定率、介護費とも全国一いとのデータを突きつけられ、現在、その要因分析を一旦終えて、保険者と共に対策を検討・実施していこうとしているところです。まずは、市町村と連携し、介護予防や要介護者等の自立支援に取り組んでいくことこそが、大阪府の最優先課題だと認識しています。
「混合介護」については、当面は、東京都と豊島区の取組みを注視し、効率的な指導監督体制の構築や、権利救済等の課題がクリアされるか否かを十分見極めていくことが必要と考えております。
〇自殺防止対策
中村議員は、自殺する若者、出産直後の若い女性が産後うつなどに係る傾向を防止するために次のような質問をしました。
この3月は自殺対策強化月間ということで、全国各地で様々な自殺対策の取り組みが行われており、調べてみると、いわゆる5月病にかかる方が多い5月や、学生や生徒にとっては長期休暇明けになる8月下旬から9月上旬にかけてと同じくらいに、この3月も、自殺により亡くなられる方が少なくないと聞いていす。
9月の当委員会で、自民党から若者の自殺に関する質問がありましたが、私としても、過労を原因として電通の社員の方が亡くなられたり、先月、愛知県の中学生がグランフロント大阪で飛び降り自殺をされたなどのニュースに接するたびに心を痛めており、若者が自殺に追い込まれることのない社会をつくっていくことが大事だと考えています。
そこで、若者の自殺に関する最近の状況と、府の取組みについて伺います。
〇がん患者に対する就労支援
3月6日付けの朝日新聞に、職場の理解を得て、働きながらがんの治療を続ける方の記事が掲載されていました。また、今議会においても、一般質問でこの問題が取上げられましたので、中村議員は同様のことを重ねて質問せず、以下のような要望を述べました。
国の調査結果では、がん患者の約3割の方が、がんと診断された後、依願退職もしくは解雇されている。働く世代が、がんになっても仕事を続けられることができれば、安心して治療を受けることができるし、企業としても経験豊かな人材を失わなくてすむ。
がん治療と仕事の両立支援は、社会全体で取り組むべき課題であり、大阪府としても、引き続き、関係機関や企業と連携して取組みを推進するよう要望しておく。
〇精神障害と退院後の支援策
中村議員は、昨年7月に相模原市の障害者支援施設で19名の方が亡くなる殺傷事件が発生したことを受け、精神障害者への対策と退院後もしっかりとサポートしていく必要があると、この課題を取上げました。
この事件の容疑者に措置入院歴があったことから、厚生労働省が、事件の検証と再発防止のために「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止検討チーム」を立ち上げ、12月8日に再発防止策の提言として報告書を公表しました。
その内容は、「共生社会の推進に向けた取り組み」、「退院後の医療等の継続支援実施のために必要な対応」、「措置入院中の診療内容の充実」、「関係機関等の協力の推進」「社会福祉施設等における対応」の5つです。
今般示された精神保健福祉法改正案での措置入院患者への支援というのは、具合的には一体どのようなものか。また、どのような課題があるのか。さらに精神疾患の方の支援に関しては、周囲の病気への理解が必要です。精神疾患患者に対する周囲への理解促進と併せてお伺いする。
|