バックナンバー 2017年 春号
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1.注目の府議会終わる −松井知事が府政運営の方針を説明−

 2月下旬から始まった定例府議会は3月24日に終了しました。毎年2〜3月に行われる議会は新年度の予算などが提案されることから、最も重要な注目を浴びる議会でもあります。
 議会の開会日、松井知事は所信を表明し、これに基づいて各会派が代表質問や一般質問などを行います。松井知事は福祉医療費の再構築、IRカジノ、万博、特別区設置の法定協議会議案などを挙げ、理解・協力を求めました。


府政運営の方針を述べる松井知事

2.注目された課題は何か

 この議会では、森友問題が大きなテーマとして注目されましたが、もともと、各部局で相当多くの課題がありました。部局別には、
◆府政報告会の資料から(大阪府の重点事業と予算案)
1 財務部・総務部
   ファシリティマネジメント推進事業
   市町村への振興補助
   情報端末賃借等による働き方改革
2 政策企画部・危機管理室
   2025年万博誘致
   消防力強化に向けた対策
   性犯罪・特殊詐欺対策
3 府民文化部
   府立大・大阪市大の統合への取組み
   都市魅力の向上への取組み
   国内外からの観光客の受け入れ促進
   ラグビーワールドカップ
   統合型リゾート(IR)の誘致推進
4 福祉部
   福祉医療費助成制度の見直し
   障害者・高齢者等の福祉の推進
   子育てと家庭支援対策
   後見支援センター運営
   医療保険制度改革への取組み
5 健康医療部
   救急・災害・周産期等の医療体制充実
   健康づくり・薬物・感染症対策
   地域医療介護総合対策
   癌・自殺対策と健康寿命延伸事業
6 商工労働部
   府立産業技術研究所と大阪市工業研究所の統合
   中小企業向けの制度融資
   OOSAKAしごとフィールドの運営
7 環境農林水産部
   動物愛護管理センターの建設・運営
   産業廃棄物・大気汚染・水質汚濁等の対策
   森林等の整備と新税による事業
   食品ロス削減対策
   有害鳥獣対策
8 住宅まちづくり部
   うめきたのまちづくり
   木造密集市街地対策
   空き家対策
   管理不全分譲マンション対策
9 都市整備部
   道路・鉄道の安全対策の推進
   公共交通戦略と鉄道・道路ネットワーク対策
   都市インフラの維持管理の充実・強化
10 教育庁
   政令市の教員
   小中学校の児童生徒指導体制の充実
   様々な課題を抱える子ども達への対策
   私立高校の授業料無償化支援
11 公安委員会
   警察官の増員等の警察力の充実
   総合的な治安対策
   交通安全対策の充実
   性犯罪・組織犯罪への対策

 などが注目されました。

 これらについては、2月に実施した府政報告会でも説明しましたが、管理不全マンションのあり方、福祉医療費の助成制度の再構築案、がんと仕事の両立などを、改めて説明してほしいという要望もありました。


3.特別区設置の法定協議会が継続審議に

 約2年前の5月に大阪市民の住民投票で、「否決」された大阪市廃止・特別区設置のため、松井知事と吉村市長は改めて住民投票をしたいと、そのための法定協議会設置の議案を提出しました。
 大阪市は昨年から、公明党の意向を受けて「総合区」の制度づくりを進め、これを住民説明していますが、いわゆる都構想は、大阪市を廃止して、小さく分割した特別区を新たに設けるもので、総合区は大阪市をそのまま残して、今の行政区(北区・中央区等)の権限を強めるもので、これを同時並行で説明するのはおかしいものです。中村議員は、議会報告4月号の中で、次のように説明しています。

 議会終了後も問題となるのがいわゆる「都構想」の議論です。約2年前の住民投票で否決され、当時の橋下市長らが「一度きりの挑戦で否決されたら市長をやめる」とまで言っていた都構想が、副首都問題や総合区などとセットで巧みに再登場しています。
 松井知事・吉村市長はW選挙で信任を得たとし、新たな大都市制度の住民説明会を開催して、「総合区の姿」の素案を8月までにまとめると言っています。  都構想と呼んでいる「特別区制度」は今の政令指定市の大阪市を廃止する制度で、「総合区制度」はこれとは逆に政令市を存続させることを前提にする制度で、この制度の両立はあり得ません。両立しない制度を同時に検討していくのはそもそもおかしく、まずは総合区のあり方を市議会でしっかりと議論し、住民に説明していくべきです。
 さらに、今の24行政区を8行政区に合区・再編する案を示していますが、総合区は合区しなければできないというものではありません。総合区制度は住民自治の活性化、都市内分権の推進のための制度ですから、仮に合区するとしても人口バランスや税収の均衡化などを重視するのではなく、域内の行政課題の共通性や歴史的に形成された地域性などを考慮すべきです。
 また、合区については当然、そこに居住する住民の合意形成が必要で、行政が線引きをして「エイ、ヤッ」と短期間に決めてしまおうというのは住民自治と逆行するものです。
 中村議員は、「民進党は少数会派のため、議会運営委員会や法定協議会や関係委員化などに参加して問題点を指摘したりできないのが残念だ。基礎自治体充実と逆行する都構想は認められず、都市内分権推進の立場で、今後とも注意深く見守り、事態の変化に対応できる方針を作っていきたい」と語りました。


4.福祉医療費の助成制度の見直し問題

 長年、府の主要施策として実施されてきた「福祉医療費助成制度」の再構築問題は、今議会の最大テーマの一つで、どの会派も確認や整理のため、多くの課題を取上げました。

◆主要な問題点は、

  1. 制度の持続可能性のために再構築を行うというが、今後も4医療のパッケージで維持していくのか、
  2. 再構築案(新制度案)で低所得者の医療のセーフティネットは守られるのか、
  3. 新制度案で外れる人、新たに対象になる人の変化と、そのための財政負担はどうなるのか
  4. 外れる人の医療費負担はどの程度増えるのか、それは受忍の範囲内か、
  5. 対象から外れる人の激変緩和のため、1年間を経過措置としているが、これで本当に十分か、
  6. 実際の窓口である市町村への影響はどうなるのか、
  7. 償還払い制度については結果として受診抑制に繋がるのではないか、
    などで、中村議員もこの中の数点を委員会で取上げました・
    今回の新制度案は、これまで、乳幼児、一人親家庭、障害者、高齢者の4医療費をパッケージで運営してきたものを、
    ◇乳幼児医療と一人親家庭医療に関するものは子ども施策、
    ◇老人医療の内、重度以外の難病患者・結核患者・精神の通院医療対象者を除外し、これに重度の精神・難病を加えたものを傷害者医療とし、施策を二つの体系にまとめようというものです。
      また一部自己負担については表のように大幅な負担増が予測されます。知事は府・市町村の財政状況が厳しい中、対象者の範囲の選択と集中、受益と負担の適正化や、市町村と府議会での議論などを参考にしてこのような制度案にしたと説明しました。
 


 健康福祉常任委員会は、10日、14日の一般審査に続き、16日には松井知事への質問が行われ、公明党と民進党の中村議員の2人が質問に立ちました。この質問の中で、松井知事は、「現在対象者であるのに新制度で外れることになる人のため、激変緩和として1年の経過措置としていたのを3年にする」と答えました。
 中村議員はまた、「1医療機関あたり月2日限度が撤廃され、新たに院外調剤での自己負担が生じるため、制度の再構築後は月額上限の3千円を超えた場合の償還払いの件数が相当増加することが予測される。また、障害者は償還払いのため市町村の窓口へ行かなければならず、その際は傷害福祉サービスを利用して、ガイドヘルパーを手配するなどのことが想定され、むしろこの方が市町村の財政を圧迫する。これらを全面的に考え直すべきだ」と指摘しました。

3 障害を同じに

 さらに中村議員は、同じ障害者でも精神障害の人たちへの扱いに問題があると指摘しました。
知的・身体・精神の3傷害の対象者をそれぞれ比較すると、知的・身体は手帳所持者の約40%超が助成対象になるのに、精神はわずか10%程度しか該当しません。(上表の下段)これまでから3傷害の中でも精神は特に福祉サービスが遅れていると指摘されていましたが、今回の制度見直しの中でも同様で、「これほど大きな差がつくのは問題だ」と、知事らに質しました。
今回の福祉医療費の再構築は、条例や規則の改正などではないため、「制度そのもの」の賛否を問う場面はありませんでしたが、中村議員は、「今後の推移をしっかりと見守り、問題点を引き続いて指摘していく」と語っています。


中村議員の質問に答える松井知事

5.中村議員の議会での質問

 中村議員は、所属する健康福祉常任委員会で、次の課題を取上げました。
  1.  福祉医療費助成制度の再構築について
  2.  社会福祉施設の災害避難計画と防犯対策
  3.  無届老人ホームなどの実態について
  4.  民生・児童委員の見える化プロジェクトの本格導入
  5.  企業、病院など様々な形態の保育 → 職業訓練校等にも
  6.  認可外保育所の監督
  7.  要介護度改善事業者へのインセンティブ
  8.  混合介護についての考え方
  9.  自殺防止対策
  10.  健康安全基盤研究所への移行についての問題
  11.  がん患者の治療と仕事  (要望)
  12.  精神障害と退院後の支援対策

委員会で質問する中村議員
〇福祉施設の災害避難計画と防犯対策
 昨年8月に岩手県の高齢者グループホームで台風10号により9人が犠牲になるなど、大きな被害が発生しました。その後の県のアンケートの結果、県内の社会福祉施設の内、水害や土砂災害に対応した避難計画を策定していない施設が全体の6割にも上ることが判明しました。
 高齢者施設をはじめ、福祉入所施設では、災害時に適切な避難行動がとられるよう、災害時の計画の整備を欠かすことはできません。
 中村議員は、「府内の福祉入所施設で、災害発生時の行動・対応をしっかりと定めた計画やマニュアルなどはどの程度策定されているのか」を取上げました。
 府は、「障害者施設と特別養護老人ホームなどの高齢者施設などは全て策定されているが、通所系施設では94%にとどまっている」と答えました。
 さらに中村議員は、「昨年夏の相模原市の障害者支援施設での事件では多くの命が奪われた。このようなことが二度と起こらないよう、施設の防犯対策を徹底していく必要がある。その際には指導だけではなく、防犯設備などへの整備補助も重要だ。防犯対策はしっかりと出来ているのか」と取上げました。
 これに府生活基盤推進課長は、「社会福祉施設等施設整備費補助金を活用し、防犯カメラや非常通報装置の整備など、防犯対策のための整備補助を行っている。申請のあった79施設に対して補助を行う予定で、ほぼ今年度中に整備が完了する」と答えました。

〇無届の有料老人ホーム
 無届有料老人ホームへの対策も重要です。現在、府内の無届施設は100ヶ所を超えています。高齢者が要介護状態となり、在宅での生活が難しくなった場合、老人ホームへ入居されるケースが多くなりますが、金銭的に余裕がない場合には「無届」を選択されることがあります。
 無届の場合は一般の有料老人ホームに比べ、利用料が低い場合が多く、行き場のない低所得者の受け皿の1つにもなっています。また、「無届」施設は劣悪な設備や衛生状態、入居者への不当な処遇や虐待も懸念されます。
 さらに入居者の状況把握が難しく、本人が望まない介護サービスや医療行為などの押し付け(いわゆる囲い込み)も予想され、貧困ビジネスにつながることも危惧されます。現在、老人福祉法の改正案が国会に提出され、事業停止命令の新設など、指導監督を強化していく内容になっています。中村議員はこれらの把握と今後の対策を問いました。
 府は、「届出指導の一環として、有料老人ホームの判断基準を明確化し、無届の場合は施設名を公表する検討をしている。入居者が不当な扱いを受けず、安心して暮らせるよう対応する」と答えました。

〇民生・児童委員の見える化プロジェクトの本格導入
 中村議員が、地域福祉の重要な柱と位置付けている民生・児童委員について、次のように取上げました。

Q1 昨年12月、3年に一度の「民生委員・児童委員」の一斉改選が行われました。新聞報道等によると、府域の充足率は94.3%となっており、前回の一斉改選の充足率95.5%に比べて1.2ポイントも低下。さらに、全国の充足率96.3%より、府は2ポイント低い状況になっています。とりわけ、大阪のような都市部では、委員自身の高齢化や昨今の福祉課題が複雑化する中で、その担い手不足は深刻で、喫緊の課題です。
○ こうした状況にあって、先の9月定例会でも取り上げた「民生委員・児童委員活動の見える化プロジェクト」は、民生委員・児童委員の認知度向上と若い世代からの人材確保を目的に、全国初の取組みとしてモデル実施されました。
○ このプロジェクトの実施で、一気に担い手不足が解消されるものではありませんが、大学と地元市、各市の民生委員・児童委員の協力を得て、夏休み中に大学生が委員活動に密着するインターンシップ等に参加するプログラムは、学生がその実態を把握し、広く発信することで"見える化"を図る大変有意義な取組みです。
 その成果を発表する活動報告会へは、私も出席。学生のプレゼンテーションはどれも興味深く、改めて学生の地域活動への関心の高さを実感したところです。
 今後、より効果的な事業展開を図っていくためには、今年度モデル事業の効果検証をしっかり行うことが重要ですが、まず、府における取組み成果を伺いたい。

Q2(来年度の本プロジェクトのポイント)
  ○ 参加した大学生が、民生委員・児童委員への理解を深め、地元の民生委員・児童委員活動に参加したい、将来、福祉に関わりたいと思うなど、本プロジェクトを通じて、学生の福祉活動や地域貢献に対する意識向上などに、好影響を与えたと思います。
 全国初の取組みとして、マスメディアにも数多く取り上げられ、注目を集めているところで、今後とも継続的な事業として、より多くの学生が参加できるよう、是非、本プロジェクトを本格軌道に乗せてほしいと思います。
〇 来年度については、知事重点事業として、府内7つのブロック全域に拡大する等、参加自治体や大学数も大幅に増加して実施するとのことですが、今年度の取組み成果のうえに立って、さらに創意工夫を凝らし、本プロジェクトを推進していくべきですが、どうですか。
〇 来年度、事業規模を拡充し、今年度モデル事業の参加大学生と連携し、新しい大学生を呼び込む取組みは、地域福祉活動によき循環をもたらすなど、大変良い試みで、さらなる取組み成果を期待します。

Q3 一方、担い手確保が困難な背景には、民生委員・児童委員が抱える悩みや負担が増大しているところが大きい。昨年末、府がとりまとめた報告書によると、民生委員・児童委員が抱える負担を「身体的負担・精神的負担・経済的負担」の3つの負担に分類し、これら負担軽減を図るための今後の方向性を整理しています。今後、より効率的・効果的にその改善を図っていくためには、府が負担軽減のあり方について具体的な手法を示していくことが必要です。この点について、府の考え方は。
要望 民生委員・児童委員は、自分たちのことを『縁の下の力持ち的な存在』であるべきと思っておられます。このため、その認知度は低く、活動内容も正しく理解されず、近年、担い手確保が困難な状況となっています。
〇 昨年12月の一斉改選では、全国的にも担い手確保に苦戦している状況にありますが、大阪府の状況は依然厳しく、およそ100年続いてきた制度の存続が危機的な状況ではないかと思います。
○ こうした状況のもと、「民生委員・児童委員活動の見える化プロジェクト」の実施意義は大きく、是非、大阪から全国へ発信するとともに、府内全43自治体に対して参画を働きかけ、民生委員・児童委員活動の「見える化」を通じて、活動の認知度向上と将来の担い手確保へつなげていただきたいと思います。
○ 加えて、活動の負担軽減にも、様々な知恵を集めて、具体的な改善策と実施時期を明記したロードマップを作成するなど、市町村や関係機関等とともに取り組んでいただき、まさに『縁の下の力持ち』である民生委員・児童委員の活動しやすい環境づくりを通じて、地域の誰もが安心して暮らすことができる、そんな地域社会を構築していただきたい。 答弁については、省略しました。

〇企業、病院など様々な形態の保育 → 職業訓練校等にも
 昨今の保育を取巻く環境は「待機児童の解消」、いわゆる「量の確保」が主流となっています。これについては保育の実施主体である市町村が整備を進め、保育の受け皿確保の取組みが進んでいます。
 一方で、保育を必要としている保護者の就労形態は様々で、例えば、繁忙期に残業が発生しても、また、子どもが急な病気になっても、安心して働き続けるための労働環境の整備という観点から、病児保育や延長保育などがあります。
 しかし、働く保護者の多様なニーズに応えるためには、これだけでは十分とはいえません。病院や介護の現場、惣菜工場など、夜勤や早朝勤務などの変則的な就労を要する業種が多く存在し、さらに就労場所の近くで子どもを預けたいというニーズもあります。 このような中、28年度から、多様な働き方に対応できる「企業主導型保育事業」が創設されました。
 中村議員はこれに対し、現時点の府内での事業採択と大阪府の取組状況を取上げました。府の説明では、現在、府内では58施設、13百人分あり、全国の約8%になります。
 次に中村議員は、企業主導型施設で提供される保育の質も重要で、立入り調査を含め、しっかりと対応していくことを求めるとともに、「これだけではなく、働くための就職活動や資格を取得するための講座などを受けている親の保育ニーズにも応えるため、職業技術訓練校などでも対応できるようなきめ細かな対応が必要だ」と求めました。
 今年初めに発表された「子どもの生活に関する実態調査」の中間とりまとめでは、困窮度の高い層は生計者が母親である割合が多く、一人親家庭が多いとの結果が示されています。このようなことから、一人親家庭に対する就労支援策は府が率先して実施すべきです。
 しかし、一人親家庭の親が就職活動をしたり、資格を取得するための講座などを受講したいと考えても預け先がなく、断念している例も相当あります。就業への第一歩である講座などに保育サービスが付いていれば、受講しやすくなり、より就業に結び付き、極めて有効な施策と言えます。

〇介護現場にインセンティブ
 中村議員はこれまで、要介護度の改善に頑張った事業者に対して「インセンティブ制度」の導入が必要だと言ってきました。現行の制度では、がんばって利用者の要介護度を改善することによって、事業者にとっては報酬が減ってしまう仕組みとなっています。
 また一方で、介護職員は、身体的・精神的な負担が大きい仕事であるのに、低賃金であるためなかなか定着しません。このため、経験の浅い職員ばかりになって、利用者に対するケアの質への影響が懸念されるケースもあります。
 こうした流れを止めるには、改善に向けて頑張った事業者が報酬面で処遇され職員の待遇も改善されるよう、制度を改正していく必要があります。国も平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて、「自立支援に向けたインセンティブ」の付与が議論される見込みで、大阪府としても独自に「インセンティブ制度」を考えるべきだと、松井知事に質しました。
 松井知事は、「中村議員の指摘のとおりだ。スピード感を持って府としてのインセンティブ制度をつくる。良い方法があれば提案してほしい」と答えました。

〇混合介護の問題
◆質問1   次に混合介護について伺います。介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」については、現在東京都が特区で豊島区と連携した検討が進められています。
 論点は2つです。「同時一体的なサービス提供」と保険サービスの価格上限設定の自由化「例えば、ヘルパーの指名料」の是非とも聞きます。これによって事業者の収益が向上すれば職員の処遇の改善につながることが期待できます。
 例えば、在宅で介護する家族等は十人十色、さまざまな状況にあると考えたときに、「混合介護」も意識した、大阪に見合ったモデルケースを検討するとか、新たな仕組みづくりを検討していく必要があると考えますが、府の認識はいかがですか。

◆A1   委員お示しのとおり、混合介護が認められれば、事業者の収益が向上し、介護職員の処遇改善、介護サービスの質の向上につながる可能性はあります。
 一方で、認知症の方など合理的な判断が難しい利用者が増える中、また利益誘導型の事業者やケアマネジャーが現に存在する中、本人のニーズとは関わらない保険給付が広がる懸念や、そのことによって介護費の増大につながる危険性もあります。
 また、大阪府は、全国で一番居宅介護事業者が多く、保険給付と自費負担の区分のあり方や適切な指導監督体制の構築、利用者トラブルが生じた際の救済など種々の課題があると認識しています。

◆質問2   新たな制度を導入する際には、メリット・デメリットの両面があり、よく検討する必要があることはわかります。混合介護などが認められれば、利用者の満足度を高めるとともに、事業者や介護職員へのメリット等も期待できるなど、一考する価値があると考えますが、如何に。

◆A2 昨年、大阪府は認定率、介護費とも全国一いとのデータを突きつけられ、現在、その要因分析を一旦終えて、保険者と共に対策を検討・実施していこうとしているところです。まずは、市町村と連携し、介護予防や要介護者等の自立支援に取り組んでいくことこそが、大阪府の最優先課題だと認識しています。
 「混合介護」については、当面は、東京都と豊島区の取組みを注視し、効率的な指導監督体制の構築や、権利救済等の課題がクリアされるか否かを十分見極めていくことが必要と考えております。

〇自殺防止対策
 中村議員は、自殺する若者、出産直後の若い女性が産後うつなどに係る傾向を防止するために次のような質問をしました。

 この3月は自殺対策強化月間ということで、全国各地で様々な自殺対策の取り組みが行われており、調べてみると、いわゆる5月病にかかる方が多い5月や、学生や生徒にとっては長期休暇明けになる8月下旬から9月上旬にかけてと同じくらいに、この3月も、自殺により亡くなられる方が少なくないと聞いていす。
 9月の当委員会で、自民党から若者の自殺に関する質問がありましたが、私としても、過労を原因として電通の社員の方が亡くなられたり、先月、愛知県の中学生がグランフロント大阪で飛び降り自殺をされたなどのニュースに接するたびに心を痛めており、若者が自殺に追い込まれることのない社会をつくっていくことが大事だと考えています。
 そこで、若者の自殺に関する最近の状況と、府の取組みについて伺います。


〇がん患者に対する就労支援
 3月6日付けの朝日新聞に、職場の理解を得て、働きながらがんの治療を続ける方の記事が掲載されていました。また、今議会においても、一般質問でこの問題が取上げられましたので、中村議員は同様のことを重ねて質問せず、以下のような要望を述べました。

 国の調査結果では、がん患者の約3割の方が、がんと診断された後、依願退職もしくは解雇されている。働く世代が、がんになっても仕事を続けられることができれば、安心して治療を受けることができるし、企業としても経験豊かな人材を失わなくてすむ。
 がん治療と仕事の両立支援は、社会全体で取り組むべき課題であり、大阪府としても、引き続き、関係機関や企業と連携して取組みを推進するよう要望しておく。


〇精神障害と退院後の支援策
 中村議員は、昨年7月に相模原市の障害者支援施設で19名の方が亡くなる殺傷事件が発生したことを受け、精神障害者への対策と退院後もしっかりとサポートしていく必要があると、この課題を取上げました。

 この事件の容疑者に措置入院歴があったことから、厚生労働省が、事件の検証と再発防止のために「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止検討チーム」を立ち上げ、12月8日に再発防止策の提言として報告書を公表しました。
 その内容は、「共生社会の推進に向けた取り組み」、「退院後の医療等の継続支援実施のために必要な対応」、「措置入院中の診療内容の充実」、「関係機関等の協力の推進」「社会福祉施設等における対応」の5つです。
 今般示された精神保健福祉法改正案での措置入院患者への支援というのは、具合的には一体どのようなものか。また、どのような課題があるのか。さらに精神疾患の方の支援に関しては、周囲の病気への理解が必要です。精神疾患患者に対する周囲への理解促進と併せてお伺いする。


6.森友学園問題はどうなるのか

 新聞・テレビなどで連日のように話題となった森友学園問題は、2月8日に豊中市議が「国有地の売却にあたって、その金額を非公開とすることは違法だ」と、大阪地裁に提訴したことがきっかけです。
 結果としてその売却金額が近隣の同程度の土地の約1割だったことから、なぜこんな破格の金額になったのか、政治家の関与はなかったのかが大問題となりました。
 国会の審議などでも明らかになったように、この小学校の名誉校長に現職の総理夫人が就任していたことや、廃棄物が大量に残っていることからその処理のためとして、十分な積算もせず、実質的に国有地がわずか2百万円で売却されてしまっています。
 また、廃棄物を処理した業者が民進党の調査で、「敷地内にゴミを埋め戻した」と語るなど、次々と疑惑が表面に出てきました。
 さらに森友学園が豊中市に小学校を建設するため、大阪府に対して「認可申請」を行いましたが、府は松井知事就任直後の平成24年4月、私立小学校設立の審査基準を緩和しました。その結果、幼稚園のみ経営の学校法人に小学校の開設を認めるようになりました。
 また、設立の認可を審査する府の「私学審議会」で、委員から多くの異論が出ていたのに、「認可適当」としたのはなぜか等の質問も出されました。さらに鴻池祥肇参議院議員の驚くべき記者会見など、疑惑が次々に出され、森友学園は小学校の認可申請を取下げ、籠池氏は理事長を退任する意向を示しました。

〇民進党から申入れ
 中村議員は国会や府議会の質疑が行われている中の3月7日、「@森友学園に関して指摘されているこれまでの問題点を早期に解明すること、A同学園に支出されている補助金などに問題がなかったのか、B小学校へ入学しようとしている子ども達への影響が出ないように認可の可否を早急に判断すること」と、3項目を教育長に申入れました。

〇障害児らへの支援補助金問題
 さらに森友学園が運営する大阪市内の塚本幼稚園での教育内容の問題や、教員のいじめ・虐待があったのではないかなどについても指摘されています。また、教育上特別な配慮を必要とする幼児を入園させた場合、教員を余分に配置する必要があるため、府が交付している「特別支援教育費補助金」が他の幼稚園に比べて突出し、本当にそれだけの教員が加配されていたのかを府はチェックしてきたのかと問題になっています。
 中村議員は私学課の担当者からのヒヤリングで、「アレルギーの治療で医師に診察を受けた、発達障害ではないかと臨床心理士に診てもらったなどというだけで、1人当たり年間78万円超も幼稚園に支出している。これで年間3千万円もの補助を受け、それだけの教員を確保していたのか。補助金の支出のルールが甘すぎるのではないか」と指摘しました。

 森友学園問題は国有地売却や認可申請の問題だけではなく、教育のあり方そのものも注視されています。教育勅語の暗唱がこれまでずっと行われてきたことを大半の国民は知りません。私学の建学の精神は尊重されるべきですが、問題を是正していかなければなりません。
 中村議員ら民進党は「森友問題解明のプロジェクトチーム」をつくり、全容解明に努めていきたいとしています。


7.空き工場を再利用した野菜工場(中村議員の視察報告)

 中村議員は3月27日、東京都墨田区で、廃業して空き工場となっているものを有効活用する方策として、潟潟oネスが展開している工場の視察と、副首都・都構想問題などの勉強のため、東京へ出張しました。以下は、中村議員が視察報告書として議会事務局へ示した報告書です。
  1. 実施日時   2017年3月27日
  2. 調査対象等  @潟潟oネス
              空き工場等を利用し新事業(野菜工場)を展開
              A公益財団法人・地方自治総合研究所
              総合区・特別区・副首都に関する意見交換
  3. 潟潟oネス
     東京都墨田区八広にある潟潟oネスのアグリガレージ研究所を訪問し、別紙コピーの宮内所長に面会し、事業展開の内容をお聞きした。
     近年、全国の至る所で、これまで地域の雇用、経済活動などの重要な役割を担っていた町工場が、相次いで閉鎖に追い込まれ、その後、工場跡地にマンションや一般住宅が建設されるなどのことが多く見られる。その結果、近隣の工場の操業環境が厳しくなり、近隣事業所までが閉鎖に追い込まれていくという状況も見られ、対策が急がれている。
     このような中、墨田区が空き工場の有効活用を展開するために優れた事業者を募った際に、潟潟oネスが登場してきた。現在は、それを利用して年間を通して野菜栽培を行っている(野菜工場)。例えば、ケールやバジルなどは夏場には多く取れ価格も低下するが、冬場は希少になり価格も高騰する。それが安定的に工場で栽培されることによって、供給先も確保できる。
     さらに、この潟潟oネスは、修士・博士という優れた人材を多く活用していることが特筆される。近年、修士・博士という肩書があっても十分にその能力を活かす場が限られている。そのような状況下で、潟潟oネスは社員50人全員が理系修士・博士号を持つ研究者集団であることに驚く。
     こういった特徴を生かし、墨田区の町工場3,500社の調査を実施するなど、町工場との連携、さらに教育機関への働きかけなど、大きな成果をあげている。
     大阪でも府大・市大などが教育活動の一環として、小学校・中学校・高校などへ専門分野を出前講座し、理系の学習に役立てることができるのではないかと思う。

ドアの外から撮影

野菜を粉末にする機械

液体を粉末にする機械
 また、リバネスの隣に「TOKYO油田」というカフェ件ブティックがあり、ここで、リバネスの粉末野菜を使用して、これをケーキ(スイーツ)とし、客に提供している。参考にこれを食したが、口に含んでもすぐに『野菜だ』とは感じないが、2口、3口と進むと「アッ、野菜だ」と感じる。
 TOKYO油田というのは、もともと各家庭の廃油を集め、これを再利用するための運動をしていたことから、今もこの名前を使っているとのこと。
 潟潟oネスのような起業化集団が全国で活躍できるようにしていくことも大事なことだと、改めて感じたところです。

8.これからの課題

 ご報告してきた以外でも、多くの注目すべき課題が多くあります。
  1.  IRカジノ問題
  2.  JKビジネスの規制
  3.  子どもの貧困対策
  4.  違法民泊
  5.  宿泊税の使途
  6.  高速道路の料金体系問題
  7.  特殊詐欺対策
  8.  管理不全マンション対策
  9.  食品ロス対策
などです。

@ IRカジノ問題
 大阪府はいま、国の特区制度を活用して、万博会場の隣にIR・カジノを設置しようと力を入れています。しかし、カジノは「賭博」であることに変わりなく、国は法律で実施のためのルールを定めるとしていますが、国民の過半数がこれを好ましくないとしていることからも、設置すべきではありません。
 資金洗浄(マネーロンダリング)、依存症対策、地域の環境対策、防犯問題など、多くの課題を抱えているものをあえて設置すべきではなく、これからも引き続いて「誘致反対」の立場で取組んでいきます。

A JKビジネスの規制
 青少年が性犯罪の被害者となったり、トラブルに巻き込まれる可能性が高いものに、いわゆる「JKビジネス」があります。女子高校生の性を対象に、「リフレ」、「お散歩」、「添い寝」など大都市圏の歓楽街や・繁華街で相当な広がりを見せています。
 このJKビジネスは法律で明確に規定されているものではありませんが、表向きは正業を装い、裏では女子高生らに性的なサービスを提供させる、また裏オプションといういかがわしい行為を行い、バイト感覚でお金を得る女子高生も存在します。
 中村議員は規制条例を議会に上程しようとしていた東京都を2月に訪問し、警視庁の担当者から具体的な中身や最近のJKビジネスの実態を聴取し、大阪でも早急に東京都と同様に条例制定をすべきだと指摘しています。府は警察とも協議し、各分野の専門家で構成する「青少年健全育成審議会」でしっかりと議論していくと議会の代表質問で答えています。

B 子どもの貧困対策
 子どもの貧困対策は深刻な課題です。大阪における相対的貧困率は全国でも群を抜いて高く、その対策が求められています。
 そのような中、大阪府は昨年、子どもの貧困や生活実態の調査を行い、その集計結果を発表しました。集計では、貧困層に当たるとされる年収200万円未満の家庭が5.7%ありました。これは大阪市を除いていますが、大阪市だけで貧困層は10.3%もあり、大阪全体の集計は3月31日に概要が発表されました。
 概要では食費を切り詰めている、塾には通わせられないなど、様々な声が出されていますが、詳細は改めてお伝えします。

C 違法民泊
 民泊制度がスタートして僅かですが、違法な民泊が後を絶たず、ますます広がりを見せています。中村議員は、民泊のスタート時、「地域住民のことを考えると、まだまだ整理すべき課題があり、到底賛成できない」として、府議会でただ一人「民泊導入は反対」という姿勢をとりました。>br>  その後、中村議員の指摘どおりに多くの問題が新聞などを賑わすようになりました。地元の枚方市でも、ネットで予約した外国人が宿泊し、地域の方々とトラブルを起こすなど、予想した通りになっています。
中村議員が相談を受けた物件では、宿泊しようとする人が見知らぬところへやってくるため、どこが宿泊場所なのかが分かるように、目立つシールなどが貼ってあったとのこと。宿泊者はレンタカーを借りたのか、その車を近隣の月極めの有料駐車場に止め、従って、その場所を借りている人が駐車することができず、駐車場のオーナーに何とかしてほしいと苦情が来る、さらにゴミを近隣の人にとって迷惑になるような場所へ指定日以外に放り出す、深夜まで大声でわめくなど、相談を受けました。
早速、保健所などが対応していますが、「違法民泊を根絶させる運動をもっと盛り上げていきたい」と中村議員は語っています。

D 宿泊税の使途
 宿泊税については、観光客等への案内充実など、有効にその財源を使用するということでスタートしました。その際、既存のイルミネーション事業などに充て、財源を振返るなどのことが無いようにと言ってきましたが、なかなかそのようには感じられません。代表質問などでも取上げられましたが、真にその税の目的にかなった使用でなければならないと、しっかりと見極めたいと思います。

E 高速道路の料金体系問題
 いま阪神高速道路、近畿道・阪和道、第二京阪など、それぞれの道路が変わる度に料金がかかり、さらにその料金体系が異なっていることから、高速道路料金の体系一元化が強く指摘されてきました。これらが定例府議会にかけられ、6月から新たな新料金体系がスタートするようになります。
 新料金体系などのあらましは
 @ 名神高速などと同様のNEXCOの対距離料金を基本にする  A 利用料金が一時的に急増する部分については、上限設定を行う  B 一般道路の渋滞緩和のため、加減料金の引き下げを行う  C 渋滞緩和のため、都心部の流入交通は経路の違いで(A路線・B路線の利用で料金が異なっていても)最短距離を適用  D ネットワークの一部の道路公社は高速道路会社へ移管する などです。
 しかし、中村議員らは料金改訂にあたっては企業としての経営努力をしっかりと行い、新制度によって利用者の負担軽減をはかり、納得の得られるようにしなければならないとしています。

F 特殊詐欺対策
 府内で昨年中に発生した特殊詐欺事件は1,600件を超え、被害金額でも過去最悪の52億円(前年比10億円増)に上りました。各地域で被害防止対策が取組まれていますが、高齢者を中心に被害は一向に減少しません。
 このような中、府は主要事業の一つとして、「特殊詐欺被害防止緊急対策事業」として1,000万円を組みました。これは特殊詐欺に対応した機器を電話機に取付けることで、詐欺を実行しようとする悪質な電話をシャットアウトし、繋がらなくしてしまいます。これは府内全域で、警察などが把握した番号を管理・運用します。市町村が住民からの相談に応じて設置する場合、これを普及していくために補助金として交付します。
 さらにこの機器とは別に地域安全センター、市町村、企業、病院などの高齢者が立ち寄る場所で啓発用チラシを配布するなど、広報啓発事業向けの予算も組みました。

G 管理不全マンション対策
 府内の分譲マンションは69万戸で、管理組合は約7,000あります。建築後40年を経過したマンションは現在6万戸で、10年後には約3倍の21万戸に増加します。区分所有者の高齢化と役員のなり手不足の傾向が強まっていることや、管理費の滞納、修繕積立金の不足など、様々な課題を抱えた管理組合が多数あります。
 今後ますます区分所有者間での合意形成が困難になり、管理不全に陥る分譲マンションが発生する恐れがあることから、管理不全に至らないよう、府は必要なアドバイスを継続して行う制度の構築と実態調査を29年度から実施します。
 2月に創設した「府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会」に、管理組合の活動状況、経理の状況、修繕積立金の額、耐震化の状況、長期修繕計画作成の有無等を報告してもらい、それによって管理の指針や分析結果を伝え、適正化を進めていくものです。

H 食品ロス対策
 わが国では食べることができるのに捨ててしまう、いわゆる「食品ロス」は632万トンにものぼります。事業者や家庭からの排出される量がそれぞれ300万トンを超えると言われます。世界中で飢餓に苦しむ人たちに援助されている食糧が約300万トンですから、食品ロスの半分でも有効に役立てることができれば…、と思います。
 このため府は、まず、府内の食品ロスの実態の適切な把握・整理、府民と事業者への啓発に力を入れるため、今年度予算に約400万円を計上しています。消費期限、賞味期限などのあり方についてもしっかりと整理できるよう、国に対する働きかけも重要で、平野衆議員議員にもこれを要請しました。


 大阪府議会議員 中村哲之助ホームページ