バックナンバー 2018年 春号
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1.定例議会の注目テーマ

 2月〜3月に開会された府議会定例会は多くの課題が議論されました。とりわけ、大阪・関西への誘致をめざす2025年万博問題、カジノを含むIR問題、大都市制度(特別区設置=都構想、総合区制度)、私学助成のあり方、森友学園の真相解明などには様々な立場からの質問などが出されました。これらについては《14》でご説明します。


2.松井知事の府政運営方針(所信表明)

 今議会の開会冒頭、松井知事が2018年度の府政運営の基本的な姿勢を示すとともに、主要な事業、議案などを説明しました。
 松井知事は、大阪万博、G20の開催決定、IRカジノ誘致、インバウンド問題などを強調しましたが、国民健康保険制度での府民の不安感、福祉医療費の問題、子どもの貧困対策などへの取組みはそれほど強くなく、不満の残る施政運営方針だったと思われます。」

 知事の府政運営方針 (PDF/256kb)


3.維新・自民・公明の主な質問項目

 府議会は5人以上の議員が所属すると交渉会派とし、代表質問、議案に対する討論、議会運営委員会への議員の派遣などが可能になります。しかし、4人以下の場合は、「諸派、少数会派」という扱いで、代表質問などもできません。民進党は中村議員が一人だけのため、今任期中は代表質問などもすることはできません。したがって、なかなか議案に対する見解などを述べる機会がなく、残念でならないと語っています。
 今議会で、代表質問に立ったのは、維新・自民・公明の3会派ですので、それらの党が取上げた主要な課題をお知らせします。
A 維新の会
  1. G20、万博、副首都問題
  2. インバウンド問題
  3. 交通ネットワーク
  4. 府民に優しい町づくりとして、障害者対策、保育環境、健康対策
  5. 高校の授業料問題
  6. 子どもの貧困対策 救急医療
  7. 治安対策、防災対策、消防力充実  等
B 自民党
  1. 防災対策 防犯対策
  2. 青少年対策、教育、JKビジネス
  3. 子どもの貧困、里親制度、発達障害
  4. 高校授業料、中退防止
  5. G20、万博、民泊
  6. 都市緑化、大阪の農業
  7. 庁舎のあり方
  8. 部長公募
  9. 大都市制度問題
C 公明党
  1. SDGsの取組み
  2. 子どもの貧困対策、少子化対策
  3. 健康対策、がん対策、肝炎対策
  4. 国民健康保険制度
  5. 府営公園のあり方
  6. 事業承継問題
  7. 依存症対策
  8. 観光戦略、万博問題


4.中村議員が委員会で多くの課題を取上げる

 中村議員は所属する健康福祉常任委員会で、7項目の課題を取上げて質問しました。また、中村議員の質問の内、高齢者施設の問題で取上げた「有料老人ホーム」の無届施設について、NHKが翌日の早朝の「おはよう日本」のなかで、大きく取上げました。取上げた7項目の要旨をご紹介します。

発言を求める中村議員

中村議員に答弁する松井知事

(1) 難病患者への対策

 発病する原因が不明で治療方法も確立していない難病は4月から331疾患にもなります。難病は発症割合は低いですが、誰でもが発症する可能性があります。また疾患の特性から長期の療養生活を必要とし、症状の変動も大きく、本人はもとより家族の多くが高額な医療費負担、精神的不安や孤独感など、数多くの悩みを抱えて日々の生活を送っています。
 中村議員は2月に難病患者の皆さんとの意見交換を行い、災害時の支援体制や難病支援センターの建設など様々な要望を聞き、これを議会の健康福祉委員会で取上げました。とりわけ、今後発生が予測されている南海トラフなどの巨大地震時には、在宅で療養されている重症患者への支援が重要です。中村議員の「災害時にしっかりと支援できる体制が整っているのか」との質問に、地域保健課は、「府保健所で作成したマニュアルを元に、支援の優先度を48時間以内と1週間以内に区分した患者リストを作成しており、リストに基づいて安否確認・支援ができるようにしている。特に人工呼吸器装着患者の生命維持には平常時からの備えが重要で、「手引き」を患者の家族と共有し、災害時を想定したバッテリーや衛生物品の確保、地域の関係機関との連絡など、平時から個別に助言を行っている」と答えました。

難病連の皆さんから多くの要望を聞く

(2)医師の長時間労働を防ぐ

 現在、国会では、「働き方改革」が特にクローズアップされています。医療分野も例外ではありません。また新聞報道によると、
  1. 病院勤務の医師の約半数が健康不安を持ち、過労死を懸念している、
  2. 大学病院の5.5%しか、医師の労務管理ができていない、
  3. 公立病院の約半数が労働基準法違反の状態などという記事が掲載されています。
 中村議員は、「この記事をみれば一体どうなっているのかと驚く。医師の長時間勤務は、本人への負担だけではなく、受診する患者に影響が出る懸念があり、重大問題だ。府は病院に対して毎年1回行っている『立入検査で、医師の長時間労働の実態』を把握しているのか」と質問しました。

新聞記事
≪きっちりとした調査が必要だ≫
 この答弁を受けた中村議員は、「医師の出退時間を記録し、在院時間を把握するのは難しいと聞いているが、だからと言って放置できない。また、労働基準法では、時間外・休日労働に関する協定、いわゆる36協定書を所轄の労働基準監督署に届出なければならないが、届出していない医療機関も相当あると聞いている。このような実態を把握し、医療機関が医師の負担軽減をはかる自主的な取り組みができることが必要だ。今後、何らかの調査等を考えているか」と、重ねて問いました。
 この質問に府は、
  1. 先月末に国の「医師の働き方改革に関する検討会」で、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」がとりまとめられた。
  2. それによると、医師の長時間勤務の要因は、緊急対応や手術・外来対応の延長、勤務環境等があるとされている。このような状況から、「医師の労働時間管理の適正化」として、ICカード等による医師の在院時間の客観的な把握や、「36協定等の自己点検」等が挙げられている。
  3. 今後は医療従事者の勤務環境の改善をめざし、大阪労働局や病院関係団体が運営に参画する府医療勤務環境改善支援センターの活動とも連動し、立入検査の機会を活用し、効果的な取組みを進めていくと答え、医師の勤務実態等を具体的に把握していく姿勢を示しました。
 さらに中村議員は、「保健所が医療機関へ立ち入り調査の際の検査項目の中に『医師の勤務体制』を国が示していないため、強制的に検査することができにくいようであるが、府の検査する際の姿勢は、医師の勤務体制の把握ができるようにするという理解で間違いないか」と質しました。
 府はこれに、「そのとおりだ」と明確に答弁しました。

(3) 食の安全安心対策

 腸管出血性大腸菌、ノロウイルスなどの大規模食中毒、原発事故による食品への放射性物質汚染、冷凍食品への意図的な農薬混入事件、また、生や加熱不十分な鶏肉料理を主な原因とするカンピロバクター食中毒、アサリでの麻痺性貝毒の食中毒などもあり、食品による健康被害を未然に防止すること、緊急時の迅速な対応を求めました。
 府の資料によると、食の安全に対する府民の意識調査で、下のとおりの結果で、最近は食の安全に対して多くの人達が不安を持っていないようになっていることが分かります。

(4) 医療の在宅化推進と看取り

 中村議員は、診療報酬等の改定が4月から実施されることと、これによって在宅医療へ大きく転換しようとしていることについて、質問を行いました。
 急速な高齢化に伴い、在宅医療のニーズは平成37年には現在の1.7倍増加すると推計され、それに向けた準備が必要です。在宅医療の提供体制を整えるには人材の確保、従事者のスキルアップ、休日・夜間の対応など、多くの課題があります。
 外来診療を中心に行っている診療所等からは、休日や夜間などの急変時の対応が困難だという声も聞いています。
 需要の増大に対応するには5年後までに1,500機関以上の拡大が必要です。そのため、緊急往診や休日・夜間への在宅医療に関わる医師間の輪番制等の強化や訪問看護ステーションの活用等があります。さらに、急増する医療需要とともに、住み慣れた自宅などで患者・家族の意思を尊重した看取りの段階まで対応できる医師や看護師の育成が必要です。
 中村議員はこれらの充実に向けた取組みを求めました。

○在宅医療への対策が必要
 さらに中村議員は、「在宅医療を進めていくと、自宅で亡くなられる方が増加する。今後、在宅死へ対応するためには、かかりつけ医が患者の死に立ち会えなかった場合でも往診し、死後診察を行えば死亡診断書を発行できるといった医師法の正しい知識を持つことが必要だ。家族が動揺して救急や警察に連絡し、その結果、警察が取扱い、遺族が警察の調査を受けることになるということがある。この点をしっかりと対応するべきだ」と質問しました。
 保健医療室は、「質問のとおりだ。家族が望む穏やかな看取りを行うためには、生前から患者に関わり、服薬状況や既往歴を理解しているかかりつけ医が重要な役割を担う。そのため、医師法の正しい解釈や死亡診断書の作成技術の向上と水準の確保、人生の最期の場面の対応の仕方などについて研修する。また、これらの情報を急変時に救急隊などが見つけやすい場所に保管するなど、在宅医療を受けている人や家族にも啓発していく」と答えました。

(5) 保育環境整備

 待機児童解消が声高に叫ばれながら、今なお十分な成果が出ていません。このような中で、平成28年度から国が新たに「企業主導型保育事業」を創設しました。この事業には整備費の3/4の補助があり、運営費でも20名定員で3,000万円以上の補助が出ることになっています。29年度までの2年間にこの制度で全国で新たに7万人分の保育の受け皿(府では2月現在で223施設、4,600人分)が確保され、待機児童の解消に向けた有効な手立てとして期待されています。
○基準は大丈夫か
これについて中村議員は
  1. 府の取組みと助成決定や開設の現状はどうなっているのか。
  2. この制度はその企業の従業員枠だけではなく地域枠もあり、その枠を有効に活用する必要がある。
  3. 新聞などで事故のことが報じられ、さらに一般の保育所に比べて基準が甘く、保育環境が劣っているのではないかと心配する人もいるが基準は問題ないか、等の課題を取上げました。
 これに子育て支援課は、
  1. 164ヶ所、3,600人分の受け皿が整備される見込みで、来年4月にすべてが開設される。
  2. 開設企業の従業員以外の地域枠としては1/2が認められ、今後従業員枠に空きがある時は地域枠へ拡大できる弾力的運用も認める方向になっている。
  3. 職員配置や面積基準などは、安心して子供を預けられるような保育環境が整えられるよう、「市町村が認可する小規模保育事業と同水準の基準」となっていることから、基準が甘いということはない。また、死亡などの重大事故はこれまで発生していない。また、この保育施設は児童福祉法上の認可外保育施設にあたるので、年1度以上の運営報告を求めるとともに、立ち入り調査も行っていると、答えました。
○府も助成を
 中村議員は健康福祉常任委員会の最終日となった3月16日、松井知事に対し、「待機児童の解消と、仕事と子育ての両立に資することを目的に創設されたこの制度は、整備費や運営費を国から助成されているが、規模の小さな企業は負担が大きい。社会に大きく貢献しているわけであり、府が企業から特別に徴収している超過課税の一部を還元する等の助成策を講じてはどうか」と質問しました。
 松井知事は「厳しい財政状況の中であるため、現時点では府独自の助成を行うことは困難だ。府の独自助成ではなく、企業が安定的な運営ができるよう、共同利用の促進などへ引続いて働きかけていく」と答えました。 中村議員は「他府県では実施のところもあるので、ぜひ検討願いたい」と要請しました。

(6) 高齢者・生活困窮者への対策

 1月末に札幌市の高齢の生活保護受給者等が多く入所する施設での火災で11人が死亡するなど、最近、生活困窮者や生活保護受給者、高齢者などが暮らす施設で、火災に巻き込まれて死亡する痛ましい事件が多発しています。中村議員は、@施設の届出状況や安全対策、府の指導はどうなっているのか、A政令市や中核市、府内市町村とどのように連携して取組んでいるのかなどを取上げました。
○約半数が無回答
 中村議員の質問に社会援護課は、@府内の無料低額宿泊所の届出数は2月末現在で15施設で、安全対策として国通知に基づき、消火設備の設置や避難訓練の実施等を位置付け、年1回の定期調査と指導を行っている。A貧困ビジネス条例に基づく届出住宅は、昨年6月に138届出事業者に対し、防火安全対策に関するアンケート調査を実施した。その結果、回答のあった事業者が71、廃止届が出された事業者などが18、未回答の事業者が49で、この結果を消防関係部局と共有し、未回答の事業者には、事業実施や所在が不明のものもあり、現地調査も含め、早期に実態把握し、対応を進めていくと答えました。
○無届こそ問題
 府では、介護保険施設を281施設(特養175、老健87、介護療養型19)所管していますが、問題は無(未)届施設です。中村議員は「問題があるのは、届出をしない有料老人ホームなどだ。これについてはこれまでから何度も指摘してきたが、しっかりと対応する必要がある。どうしていくのか」と対策を求めました。
 これに対し府介護事業者課は、「府内の未届有料老人ホームは、実態把握中のものも含め、103施設あり、防火対策や避難訓練等の十分な対策が必要である。未届については現地に赴き、防火対策等を含めた施設の運営状況を確認の上、届出の促進と指導監督を行っている。今後、未届については、さらなる届出促進と利用者への注意喚起の観点から、施設名を公表する準備を進めている」と答えました。
○NHKが翌朝のニュースで
 また、中村議員のこの質問項目が、翌日早朝のNHKニュースでも放映され、大きな反響を呼びました。

無届有料老人ホームの公表を伝えるNHKニュース

新聞記事

(7) 放課後等デイサービスの事故防止

 放課後等デイサービスは障害児に療育を提供する重要な事業ですが、サービスの質が全国的に問題視されています。
 その背景には、障害特性への理解が不十分な事業所や、利益目当ての参入があると言われています。そのような中、事故に関する報道機関のアンケートによると、事故発生件数は28年度が965件、29年度は11月末ですでに691件と増加傾向にあります。
 中村議員は「児童が様々な活動をする中で、ある程度のケガなどはやむを得ないが、事業者の危機意識が薄く、突発的な行動などの障害特性を考えた対応が充分にできていないことが主な原因ではないか。府が所管する事業所はどんな状況か」と質問しました。
 福祉部の生活基盤推進課は「昨年末で660ヶ所あり、事故報告は29年度1月までで39件だ。ケガが最も多いが、行方不明が7件あり、報道と同様の傾向だ」と答えました。
 中村議員は「保護者が安心して預けられるよう、様々な工夫を重ねていくべきだ。府としてさらなる取り組みを求める」と要請しました。


5.民進党提出の意見書を2件可決

 民進党の中村議員が3月の定例議会に提出した2件の意見書案が全会派の賛同で可決されました。意見書は、
  1. 公共事業における国産材の活用を求める意見書
  2. 都市の地下空間利用に対するリスク管理体制の整備を求める意見書
です。

 "1."の公共事業における国産材の活用を求める意見書は、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されたことによって、公共建築物の木造建築化が推進されることになりました。しかし実際には木造化された建築物はまだまだ少なく、国産材の利用が充分ではないことから、持続可能な森林経営が可能なレベルにはなっていません。
 そのため、大規模な木造建設、道路の木製ガードレール化や、国の施設の木造化などをさらに推進する必要があり、これを政府に求める意見書です。

 "2."の都市の地下空間利用に対するリスク管理体制の整備を求める意見書は、2016年に福岡市で発生した地下鉄延伸工事に伴う道路陥没事故をはじめ、老朽化等を原因とする道路の陥没、地下室や地下街が浸水することによる災害など、地下空間に関する災害が目立つようになってきています。地方自治体や業者任せでは大規模な事故を防ぐことはできず、特に、地下空間を利用している各種サービスを計画段階から体系的に管理し、総合調整機能を担う体制無くしては、場当たり的な安全対策を打つのが精いっぱいです。
 このようなことから、2017年に国土交通省の社会資本整備審議会から、「地下空間の利活用に関する安全技術の確立について」という答申が出されています。今後、国で、この答申の内容を最大限尊重し、年の地下空間利用のリスク管理を徹底することを求めるものです。


6.重粒子線治療施設を視察

 中村議員は3月8日、新しく整備された重粒子線施設を見学しました。この「大阪重粒子線センター」は、全国で6番目に開設される最先端がん治療施設です。
重粒子線治療は
  1. 切らずに痛みもなく優しい治療
  2. 局部を攻撃し、正常組織への副作用が少ない
  3. 難治性のがんにも効果が期待
  4. 従来に比べて治療回数・日数が少ない
等の特徴があります。この府の施設は粒子線の内、重粒子線を使います。

 中村議員はこの日、溝江センター長の案内で施設を視察し、施設の運営などについて説明を受けました。ただ、重粒子線での治療には高額な費用を必要とするため、誰もが利用ということにはなりにくいため、どうすれば多くの方々が利用できるか、保険制度、国の動向などをしっかりと見極めていかなければなりません。


重粒子線の説明ボード

治療施設


7.府議会日越議員連盟が総会・勉強会

 府議会の日越友好親善議員連盟が府議会定例会の日程中に、平成29年度の総会・勉強会・懇談会を開催しました。このほどの勉強会は新しく着任されたハイ総領事がベトナム経済の状況や今後の経済政策などを語られました。
 中村議員ら議員連盟のメンバー有志は、2016年夏にベトナムを訪問し、現地の経済事情や工業団地の立地状況などを視察し、さらに現地へ進出している日本企業の現場を見てきただけに、総会・勉強会の後の懇談では大変和やかに進行しました。
 ハイ総領事は、会長である中村議員に「ぜひ、ベトナムを近い内に訪問してほしい」と要請しました。


8.大都市制度問題

 大都市制度問題が府議会の中でも少し議論されましたが、府議会・大阪市議会がともに終了したことから、いよいよ本格的な議論が始まります。
 副首都推進局は3月27日、各会派に対して先般提示した総合区制度案の説明を行いました。
 この後、4月6日には第9回法定協が開かれ、特別区4つのそれぞれの名称、区役所の位置(特別区はそれぞれが一つの独立した自治体であるため、現在の市役所と同じように4つの役所ができる)、議会議員の定数などが示されます。これに基づいて、次回から各党の質問などが行われ、協定書案を詰めることになっていくものと思われます。
 しかし、依然として大阪市を解体して特別区を作るべきではないとする自民・公明・共産・民進などは協定書の策定それ自体を否定しているだけに、どのような展開となるのか不透明です。
 中村議員は、「大阪市を解体して小さな町にしてしまうなどということは、大阪の成長どころか、逆に衰退を招くことになってしまう」と、厳しく指摘していますが、少数会派になってしまったため、法定協に参加して発言できないため、しっかりと見守っていきたいと述べました。


総合区の区割り図
(図上をクリックで拡大)


9.万博への府会議員の派遣議案には反対

 2025年の大阪万博誘致に向け、府議会議員の代表(維新4、自民3、公明2)をイタリアのミラノ等へ派遣することになりました。また、これに要する費用は概算で1,300万円で、一人あたりの費用は約140万円となります。議員の派遣を全否定するわけではありませんが、これだけの費用を組むのは問題があります。
 特に、府議会の海外調査活動費として知事に1,000万円超の予算を議会が要求し、当初予算案に計上されているものを、今度は議会の中で議会自らが減額修正するという摩訶不思議なことをしているだけに余計に納得できません。このことから、共産、創生保守、改革保守とともに中村議員も反対しました。


10.中小企業の承継問題等へ予算増額

 中小企業庁の調査では今後10年間で、全国で70歳を超える中小企業・小規模企業経営者は約245万人に達します。その内の約半数は後継者が決まっていないため、もし廃業となれば、2025年頃には累計で約650万人の雇用が失われ、GDPでも約22兆円の減少が予測されます。
 また大阪府でも約49万人の雇用と約1兆8千億円の域内総生産が失われる可能性があります。さらに、小規模事業所で働く労働者の技能・技術が伝承されない等の問題も深刻です。府内中小企業の最近の減少率は10%強で、全国平均の9%強よりも1ポイントも高く、その減少に歯止めをかけることは最重要課題です。
 このような状況下で中村議員は昨年12月、松井知事に、「中小企業振興基本条例が制定されて7年経つが、条例の目的の中小企業振興はまだ道半ばだ。積極的・効果的な取組みを進めてほしい」と申入れしました。
 一方、昨年7月には、国が「事業承継5ヶ年計画」を策定し、支援体制、支援施策を抜本的に強化するとともに、今年度からは税制面で事業承継時の相続税、贈与税の負担をゼロにするなどの対策も講じられることになりました。  府は国の動き等を受け、今年度からの3年間を事業承継支援の集中取組み期間と位置づけ、新たな支援メニューと予算を議会に示しました。
○予算枠を拡充
 これまで小規模事業経営支援事業は、府内の商工会や商工会議所等の実施する事業に対して補助金(約19億7千万円)を交付し、小規模事業者が経営の安定・改善・革新に向けた取組みができるように支援してきました。この中には事業承継に向けたメニューとして約4千万円が含まれていましたが、今年度から5千万円に増額し、支援を必要とする小規模事業者への的確な情報提供、相談体制の強化やセミナー等の意識啓発事業の充実を図るとしています。
○専門デスク設置
 新規メニューでは特に、商工会議所等の経営指導員が小規模事業者を訪問し、事業承継診断を実施する等、支援が必要な事業者へ積極的にアプローチすること、事業者がこれに「気づく」ための啓発を重点的に実施します。さらに大阪商工会議所内に総合相談窓口である「事業承継相談デスク」を新たに設置し、様々な相談に的確な対応ができる体制を確立し、年間5千〜6千事業者への支援をめざすとしています。
 中村議員は、「府内には経営者が60歳を超える小規模企業が3万社以上ある。大阪経済のため、またここで働く社員や家族のためにもしっかりと対応し、後継者の育成や親族外承継(M&A)など、様々なニーズに応えていけるようにしてほしい」要請しました。


11.感染症対策も深刻

 今議会では感染症対策、特に梅毒問題が大きく取上げられました。梅毒は性的な接触によって感染するもので、全身に様々な症状が出てきます。早期の薬物投与で完全に治すことができますが、検査や治療が遅れたり、治療せずに長期間放置すると、死に至ることもあります。
 梅毒の発生状況は、グラフのように、6年間で10倍に増加、中でも女性は50倍に急増という恐ろしい調査結果が示されています。
 梅毒はかかったことに気が付かないこともあるため、誰もが「うつす」・「うつされる」可能性があります。このためには正しい知識の啓発と検査機会の拡充が重要です。このことから、府は「chotCASTなんば」での検査が現在は火・木の2日間だけであるのを、土・日も追加して即日に検査結果が出るようにします(28年度に比べて約3倍の7千件の検査を想定)。
 さらに、府内の全ての保健所でも今年度から検査が可能になります。無料・匿名の検査によって検査件数を拡大し、梅毒対策強化に取組むとしています。
 一方、啓発の強化として、性行動が活発な若年層を中心にした性感染症に対する正しい知識を身に着けるため、新規に高校生向け啓発資材を配布することや、養護教諭向けに従来の研修に性感染症を盛込んだ性教育研修を追加するなどの啓発を強化します。
 中村議員は、HIV検査と合わせ、chotCASTなんばと全保健所での検査機会を拡大するため、インターネット広告やコンビニへのステッカー配布など、感染症の多い層へのPR活動を徹底してほしいと求めました。

(表上をクリックで拡大)


12.JKビジネスへ条例

 女子高校生(JK)等がマッサージやゲーム、会話等で楽しませる接客サービスを売り物にする営業で、大都市を中心に様々な形態で広がっている、いわゆる「JKビジネス」への規制がようやく実現することになりました。府警の調査で現在、府内には約230店舗(大半はガールズバー)あると推測されています。
 JKビジネスは、表向きは適法な営業を装いながら、裏オプションとして性的なサービスを提供させる店舗が一部に存在し、社会問題化してきました。中村議員は2年前から度々、松井知事に「規制条例を早期に制定するべきだ」と提言するとともに、先に制定した東京都を訪問し、都の関係者や警視庁関係者から制定に至る経過を聞き、条例制定に向けた課題整理をしてきました。
 今回の条例は青少年(18歳未満)をJKビジネスの有害な役務から保護することを目的に、青少年健全育成条例の中に、営業者等への規制を設けます。専ら異性の客に接触(リフレ)、また異性の姿態を見せる(撮影・見学)、同伴させる(お散歩)、などを規制するとともに、店舗を設けずにインターネット上の広告をもとに客から指名を受けるなどして、女子従業員を待ち合わせの場所へ派遣する無店舗型の営業形態も同様に規制対象とします。また罰則として、6月以下の懲役または50万円以下の罰金も科せられます。
 今後は、青少年がJKビジネスで働くことが危険であることを伝える教育・啓発を、教育・警察関係者らが一体となって推進する必要があります。


13.保育園・幼稚園・小学校・中学校一貫教育を視察

 中村議員は議会終了後の3月26日、保育園・幼稚園・小学校・中学校を同じ敷地内に建設し、15年間の一貫教育を実施している全国初の千葉県南房総市の富山学園を視察し、この程、議会へ視察報告を出しましたので、これをご紹介します。(以下、報告文書)
 南房総市の富山学園の保育園・幼稚園・小学校・中学校の一体的運営が昨年春に新聞で報道された。保育という社会福祉事業(厚労省関連)と、幼稚園・学校という教育事業(文科省関連)が一体運営という全国初のことであり、現地を訪問し、このような施設をなぜ設置するに至ったのか、運営の実態はどうか等を調査し、参考にしたいと考えた。
昨年暮れから視察の打診を行い、今年当初から日程調整をし、それぞれの自治体の議会日程の関連で、3月26日に実施することになった。
 この日は、東京から高速バスで南房総市へ向かい、学園の近くのハイウェイオアシス・富楽里(ふらり)で降車し、市議会事務局の永井係長にお迎えいただき、富山学園に到着した。

学校の近くでここが地域の一大拠点になっている道の駅

富山学園(クリックで拡大)
 学園正面から小中学校棟に向かう途中、自転車通学の生徒の駐輪場があり、ここに表示されているのが何と、7年生・8年生・9年生であった。(写真)校長・教頭は私がカメラを向けたのを見て、「中学生はここでは、このように呼んでいるのですよ」とのこと。

 幼稚園・小・中学校は春休みであるために幼児・児童・生徒の姿はなかったが、保育園には通常どおりの子ども達が元気に活動していた。
 私は2階の部屋に案内され、相互の挨拶の後、教育長から「南房総に誇りを持ち、可能性にチャレンジする教育の推進」を掲げ、
  1. 学力の向上
  2. 教育環境の整備
  3. 南房総学の推進
  4. 「不登校児童生徒ゼロ」3年間での実現
  5. 就学前保育・教育、子育て支援の充実
の5課題実現に取組んでいるという説明と、これらの概要説明を受けた。
 続いて、パワーポイントによる富山学園の説明があり、意見交換を行った。

モニターには Welcome と表示されている

教育長はじめ9人もの方々にお世話になった

 私からの主な質問は
  1.  なぜこのような15年間の一体的運用を始めたのか
  2.  これを将来、全市的に拡大していく予定なのか
  3.  このような環境ではない一般の地域との間で軋轢は無いのか
  4.  15年間同じ顔ぶれで、閉鎖環境とはならないか
  5.  スクールバスによる通学支援を行っているが、負担はどうか
  6.  スクールバスの時間帯が退校時刻になるとクラブ活動はどうなるのか
  7.  いじめや暴力行為などの存在はどうか
  8.  放課後児童クラブの運営はどうなっているのか
  9.  乳幼児の病時保育、病後児保育は同対応しているのか
  10.  この間の成果はどうか
などであった。
 教育長や校長・教頭からは、保育・幼稚園の段階は「学びの土台をつくる」ことが大切で、「小中9年間で学びを進化させる」という方針であり、同じエリアにいることで、どの子がどんな性格か、どんな交友関係があるのか、またアレルギーなどへの対応等も常に情報を共有していることから、非常に円滑な運営が出来ており、当初の想定以上の成果が上がっているとのことである。
 また、市長が、南房総市を「教育先進都市にする」と宣言したことから、よりいっそう教育関連予算が充実するようになったと説明があった。ただ、これらの取り組みに対する千葉県の対応は満足できるものではなく、残念だとのことであった。
 また、南房総市は合併によって誕生した人口4万人弱の都市で、1時間から1時間30分あれば東京都心へ行けるが、市内の交通網は十分ではなく、市民の買い物、医療機関での受診等も困難なことが多く、もちろん通学などにも大変な苦労が伴っている。こういったことから、合併後も人口が漸減しているとのことであった。ただ、今回視察した富山学園は、そのような不安をまったく感じさせないほどに恵まれた環境にあり、大阪でもこのような取り組みが待たれるところである。

非常に広く廊下が作られている

災害時の避難場所にもなっているため、障害のある人にも利用しやすいトイレ

教室棟に併設の放課後児童会は出入り口が別

預かり保育も実施

教育長と入り口正面で


14.注目の課題説明

 この議会では、《1》でご説明した、都構想、万博等以外でも多くのテーマが取上げられています。改めて、ご説明します。
○万博の誘致活動
 万博の大阪開催に向けた誘致活動が積極的に展開されていますが、開催経費に関する課題を無視することはできません。会場建設費(約1250億円)は政府・地元・経済界がそれぞれ1/3ずつ負担する取り決めですが、建設費が増額された場合はどうなるのか、またこれ以外の関連経費も相当発生する恐れがあります。このような場合、一体誰が、どの程度の負担をするのか、明確にはなっていません。府は厳しい財政状況の中にあり、先の東京オリンピックの開催経費でも大問題となったように、青天井のようなことにならないか、多くの府民が心配しています。
 中村議員は、「フランスが将来への財政負担の問題で万博開催から撤退したことは、ある意味凄い判断だ。府もその点は真摯に受け止め、将来への負担を最小限にしなければならない。国会議員団へもしっかりとお願いしていく」と語りました。
○カジノは不要
 万博予定会場に隣接して計画されている、カジノを含むIR事業は、今なお国民の多数が反対していることは、これまでの世論調査でも明らかです。民進党府議団はこれまでから一貫して、カジノを含む統合型リゾートIRには反対してきました。
 さらにこの問題では、いわゆる依存症対策をどうするのかという議論が盛んです。アルコール、賭博、薬物等で府議会でも取上げられています。現在でも依存症の人達が多数いる中、さらにその様な問題を心配せざるを得ないカジノ問題とはきっぱりと縁を切るべきです。

万博・IRの予定地の夢洲 (クリックで拡大)
○大都市制度
 大阪市を廃止して、中核市(一般市)のような規模の特別区に分割する「大阪市廃止構想=都構想」が再び議論されています。松井知事・吉村市長らは、「二重行政を解消し、大阪の成長のためには都構想しかない」と言い続け、今秋にもう一度、大阪市廃止を問う住民投票を実施したいと、既に法定協議会が3月末までに8回実施され、4月初めには特別区の名称や区役所の場所、それぞれの区の議会議員の数等が提案される予定です。
 今回の法定協では大阪市を4分割の計画ですが、前回の5区案とほとんど内容が変わらず、前回、膨大な経済効果があると言いながらほとんど効果のないことが分かった経済効果の件では、今回全く明らかになっていません。
 事務方の計画では、6月〜7月初め頃には大阪市廃止の協定書をまとめなければ、住民投票には間に合わないため、都構想問題は今春の最大課題になります。「都構想は百害あって一利なし」と、4〜5月はしっかりと訴えていく予定です。
○違法民泊問題
 いま民泊問題が深刻な状況になっています。とりわけ、大阪市内で民泊施設が急増し、マンションの隣部屋に不特定の外国人が多数訪れ、騒音がひどい、ゴミのルールを守らずに出される、深夜にインターホーンを乱打するなど、多くの問題が指摘されています。また先日は、非常に傷ましい事件も発生しました。これらの問題の多くは無許可の違法な民泊によるものと思われます。今年6月の新法によって、ますます民泊が増加すると思われ、悪質な事業者には警察とともに徹底した姿勢で臨まなければなりません。
 府は政令市等とともに住民の不安をなくすため、ガイドラインの見直しとともに、告発も辞さない強い姿勢で臨むとしています。
 大阪府でこの条例案が提出された時、住民の不安を解消するための方策がまだ十分ではなく、急いで府が条例をつくるべきではないと、条例案に反対したのは中村議員ただ一人でした。維新はもとより、自民、公明、共産までが賛成したこの条例制定がいかに性急すぎたか、改めて考え直さなければなりません。
 当時を振り返ると、松井知事は議会終了後に、中村議員のところに駆け寄り、「他の議員は全員賛成なのに、なぜ中村議員だけが反対なのか」と聞いたくらいでした。この時、「まだ解決しなければならない課題が山ほどあるのに、急いで実施したら大変なことになる。どうしても実施するのであれば、交通拠点の都心部と静かな住宅街などで、まず試行実施し、半年、1年の状況をしっかりと検証し、これなら問題ない、或いはこの点に配慮する必要があるなどを整理した上でないと大きな問題を抱えることになる」と説明したことに、知事は『よく分かりました』と答えていました。
○鉄道駅の安全柵の設置
 近年、駅ホームからの転落等が多発し、転落防止のための可動式ホーム柵設置を要望する声が多くあります。中村議員も昨年暮れ、松井知事に対し、「柵の設置を進めてほしい」と申入れしていました。
 府は平成30年度の当初予算に、可動式ホーム柵を主要駅に設置しようとする鉄道事業者に対して、7駅(JRの大阪・京橋・高槻、南海・難波、近鉄・大阪阿部野橋、阪急・十三、モノレール・千里中央)に約2億円(国・府・地元市とともに補助)の予算を計上しました。設置費用は1ホーム分で約3億円と言われ、鉄道事業者の負担は大変なため、中村議員らは国で一層の助成をしてほしいと要請しています。


 大阪府議会議員 中村哲之助ホームページ