2次案

  地震(じしん)の前には夜空が光る?

     光る石のひみつ
                            
                                             西村寿雄

 

 1995117,午前546,神戸・淡路(あわじ)(しま)を中心に大地
震が発生しました。たくさんのビルや建物が一瞬のうちに
(こわ),


くの人々が下敷きになりました。
高速道路から走っているトラックが転げ落ち
,走り出した電車もなぎた
おされ
,(だい)惨事(さんじ)を引き起こしました。同時に火災も各地で起
,
真っ赤な炎が夜空をこがしました。
亡くなった人はおよそ
600,こわれた建物は25万(とう)と記録に
残されています。

  この地震では淡路(あわじ)(しま)から神戸にぬける(だん)(そう)活断層
(かつだんそう)
〉が,
横に大きく動いたのです。

そのときの地割れが,田畑の多い淡路島で多く残されました。田畑が
引きちぎられ
,道路や階段が1mから2mも横にずれました。
 

 さて,その地震の前に,早起きして,散歩をしている人がいました。
神戸市
須磨
(すま)区に住んでいた岩石さんは,いつものとおり犬を連れて
近くの道路を散歩していました。もうそろそろ家にたどり着こうと
した時
,夜明け前の空が一瞬(いっしゅん)強く光ったのを見ました。


「すごい。ただの稲光(いなびかり)ではないぞ」

,岩石さんが思ったその時,足下がすくわれるような大きな揺れを感じ
たとのことです。

また,神戸市に住んでいた豊田さんは,()めてうとうととしてい
るときに寝床が大きくゆさぶられました。そのとき
,南側の窓を見ると
,
パッ,パッと電気がショートするような光を4,5回見たそうです。

〈大地震の前に夜空が光る〉ことって,ほんとうにあることなので
しょうか。あなたはどう思いますか。

 地球科学者の(りき)(たけ)(つね)()さんが,過去の地震について調
べたところ
,松代(まつしろ)地震(1965)をはじめ,濃尾(のうび)地震(1891)
,
関東大震災(1923)などでも,たくさんの人々が地震前に夜空が光
るのを見たという報告があるとのことです。どうやら
,地震前に夜空
が光る
現象(げんしょう)はよくあることのようです。

では,どういうしくみで地震の前に夜空が光るのでしょうか 
ある科学者は次のように考えています。

「岩石に力を加えて岩石の結晶が(こわ)れるとき, 電磁波(でんじは)(電波
のひとつ
)を出すことは実験で確かめられている。地震の時の発光
(はっこう)現象(げんしょう)もこのメカニズムで説明できる」と。

もしそうなら,光も電磁波の一つです。地震前に夜空が光るのも不
思議ではありません。
 

それなら,そのへんに転がっている岩石も強く力を加えると電磁波
が出ているのでしょうか。
暗闇(くらやみ)で石どうしをこすると光が出
るのでしょうか。
あなたはどう思いますか。

 では,ちょっと予想を立てて実験してみましょう。ここに, ちょう
ど良い大きさの二つの白い石を持ってきました。

    【問題1

この石ころを暗いところで互いに強くこすり合わせる
と光が見えるでしょうか。 

  予想  ア  光が見える

           イ  光は見えない

   暗いところで実験してみましょう。

 

  【問題2

    ついでに,瀬戸物(せともの)茶碗(ちゃわん)を二つ持ってきました。
  この茶
碗の底どうしを暗いところで強くこすると光は見
  える
でしょうか。 

 予想  ア  光が見える

        イ  光は見えない

  暗いところで実験してみましょう。



 ここに持ってきた白い石は
,石英で出来た石です。シュッシュッと
互いに強くこするとみごとなオレンジの光が走ります。この石はと
てもよく光るので
,フラッシュロックと名付けている人もいます。

この石は,(せきえい)片岩(へんがん)〉と呼ばれている石です。この石は,
高い圧力で石英の結晶が一つの方向に強く押し並べられてできた石で
す。きれいな形をした水晶も
, 二つこすりあわせるとよく光ります。

 

(ここで使った〈石英片岩〉は中
構造(こうぞう)(せん)の南側に細長
く横たわっている
三波(さんば)(がわ)
結晶(けっしょう)片岩帯(へんがんたい)
の中
に含まれていた石です。

この岩帯には細かな(しま)模様
のある
褶曲(しゅうきょく)した緑色や黒
色の岩が多いです。それらの岩の
間に
,この白い〈石英片岩〉が含
まれています。

この岩が石ころとして入ってい
る地層やその近くの海岸で
,白い
石を拾うといいでしょう。みな
さんの近くにないか, 先生に聞いてみましょう。

 茶碗の底どうしをこすり合わせるとどうなりましたか。やはり,オレン
ジ色の光が
,底の線に沿って光りましたか。茶碗でも,中に入っている石英
がこすり合わされて
,一部の結晶がこわれて光を出します。
 

結晶を押しつぶすと光が出るというのなら,砂糖(さとう)の結晶〈氷砂糖〉は
どうでしょうか。氷砂糖は小さいので
,
互いに強くこすり合わせるのはむ
つかしいので
,ペンチにはさんで一気に押しつぶしてみましょう。どうな
るでしょうか。

 

  【問題3

   氷砂糖をペンチで力強く押しつぶすと光は見えるでしょうか。


     予想  ア  光が見える

        イ  光は見えない

 

   暗いところで実験してみましょう。

       さあ,どうでしょうか。

 
 
  氷砂糖も,ぐっと力を入れると青白く光ってぱらぱらと(こわ)れていき
ます。少し
,
光が弱いので注意して見ましょう。やはり,砂糖の結晶をこ
わすので光が出るのです。

 このように, 岩石を強くこすったり,氷砂糖を強くおしつぶしたりする
,岩石や氷砂糖から電磁波や光を出すのです。ですから, 地震の前に夜
空が光ることもありうることです。そのときの電磁波で鳥や動物たちも
さわぐと言われています。
 

 今も,淡路(しま)北淡町(ほくだんちょう)にある震災(しんさい)記念館では,10分ごと
の電磁波の数と強さをいつも測っています。また
, 大阪大学でも,遠くの
学校と協力して電磁波の観測を続けています。

 このような研究がすすめば, 地震が起こる前に地震が起こることを知る
予知
(よち)〉ができるかもしれません。そうなれば,どんなにか地震によ
る被害は少なくなることでしょう。
 

 さあ,近くにある白い石を暗い場所でこすって遊んでみましょう。足下
に白い石は転がっていませんか。庭石に敷く石にも光る石があるかもし
れません。白い小さな石ころであれば
, ペンチで押しつぶしてもいいで
しょう。やってみましょう。
 

                 2004,7,2
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