2007,9
手軽に100%成功するリングキャッチャー
西村寿雄
2年前の仮説実験授業夏の大会の後,リングキャッチャーのとりこになってから,しばら
くこのお遊びとは遠ざかっていた。成功率が必ずしも良くなかったからだ。
ところが, 先日,〈静岡自然を学ぶ会〉会報76号の記事を見て,またまたリングキャッチャー
にはまり出した。同会報には,リングキャッチャー用の〈装置〉が紹介されていて,この〈装置〉
を使って「10割の確率を維持している」と書かれていたからだ。しかし,同会報に書かれてい
る〈装置〉を作りながら「もっと,シンプルにしたら子どもも簡単に作れるのに」と思いだした。そ
して,超簡単〈リングキャッチャー装置〉にこぎつけた。
まずは,私の2年前の記事を採録すると
お料理糸で リングキャッチャー 2005年9月 西村寿雄 輪になったチェーンをリングの中に入れ,持っていたリングを離すと,見事に,リングにチェーンがからまるという不思議なおもちやがあります。(「たの授」281号,283号,297号紹介) わたしも,昨年の夏の大会で手にして,しばし,その不思議な〈からまり〉 のとりこになっていました。しかし,どうも理屈が納得できませんでした。したがって,リングがからまる 成功率も低いのです。そのうちに,熱はさめていました。 ところが,「たの授」2005,7(297)号に国友浩さんの記事が出ました。 「こういうのを,とことん追求する人もいるものだ」と感心して読みました。国友さんは木やプラスチックのリングなどいろいろ試されています。その結果,リングの絡まるしくみを解明されています。 「リングが鎖に触れながら落下すると,鎖に振動が起き,共振で鎖の先端が跳ね上がり,落ちてきたリングにかぶさるのです」 と書かれています。 「なるほど,それならなるべく鎖を広げて持ち,リングに触れやすいようにしてリングを落とせばいいのか」と納得しました。事実,そのように持つと,1/2の確率で成功するようになりました。その理屈どおりになっているのかビデオ撮影してみました。低速で再生してみるとたしかに,チェーンの下はリングの下で跳ね上がっています。これで,やっと〈納得〉できました。 すると,また欲が出ます。 「こういうのは子どもたちも簡単に手にできればいいな」と思いました。でも,子どもたちが一人一人手にするのには,ちょっと値がはります。(1セット924円仮説社) 「たの授」297号の国友さんの記事では,ファイル用のカードリング(大)もうまくいくことが報告されています。これは安く手に入ります。100円で7〜8個(径4cm)買えます。 次は〈チェーン〉です。チェーンは,ホームセンターあたりでは1m 200円前後で買えます。これでも,かなり安いのですが,まだ子どもにとっては値がはります。金属のチェーンではそれ以下の値段は無理なことが分かりました。 そこで,チェーンもほかの物で代用できないのか,思いをめぐらしていました。少しガタガタしていて,リングに触れると振動を起こすものがいい。そういうものはないか,探していると「たこ糸」に気づきました。さっそく,100均の店へ。 少し太めのCook String(ちょっと太め2mmφ)という糸が目にとまりました。これなら,糸の表面はかなりザラザラしているし重さも手頃だしうまくいくかもしれないと買って帰りました。 この糸をリングにして,ファイル用カードリング(径3.5cm)を落としてみました。見事にキャッチ!成功率は1/2 ぐらいでリングキャッチャーとほぼ同じ確率です。
みなさんも,試してみてください。 |
さて,今回読ませていただいた〈静岡自然を学ぶ会〉会報76号に掲載されていたリングキ
ャッチャー〈装置〉は下記の図のとおりである。
阿部廣重図(静岡自然を学ぶ会会報76号)
片方に洗濯ばさみを取り付け,裏側には2枚の板をL型ヒートンでつないである。
落とし方はこうだ。チェーンをくぐらせたリングを,2枚の板の隙間にはさみ,リングの端を洗
濯ばさみに挟む(断面図参照)。そして,洗濯ばさみのバネをゆるめると,リングは回転して落
下し,見事にチェーンにからまるというわけである。
さっそく試作してみた。別に木材の形はこの図のように丸くする必要もない。ふつうの角材
の切れ端でことたりる。ドリルで穴を開けヒートンをつけて,洗濯ばさみを取り付ければ完成で
ある。簡単と言えば簡単だが,子どもたちにはちょっとサポートがいる。それに,洗濯ばさみの
外側が金属製の平らなものがいる。これは最近では入手しにくい。たいていは,洗濯ばさみに
ついているリングとか突起が出ている。私は,仕方なしに片面を削って平らにした。
さて,完成した装置にリングを挟んで,洗濯ばさみをゆるめると,リングは見事にチェーンに
絡まって落下した。成功率はほぼ100%である。
さて,ここまで作って気がついた。こんなことなら,別にこのような〈装置〉を作らなくても,よう
は,チェーンをぶら下げて,リングを回転するように落とせばいいのではないか,それなら,一
枚の板で十分である。さっそく,次の図のようなものを作ってみた。
一枚の板に二本のネジくぎを取り付けただけのものである。
〈装置〉とはとても言えそうもない。
やり方も簡単である。リングの片方を,板を持った手の指で
ささえ,左手でリングの反対側をささえる。そして,そっと左手
を離すとリングは回転して落下し鎖にからまる。
これでも,仮説社扱いのチェーンとリングなら成功率はほぼ
100%である。
ここまで作ってさらに気がついた。これなら,なにもネジを使って板に止めるほどでもない。小
さな釘をポンと打つだけでいい。いや,低学年の子どもたちには,釘や板を使うこともない。小
手の紙切れにピンで止めておけばいいがこれはピン先で手を突くおそれが
ある。やはり少し厚手の柔らかい板か,厚さ10mmほどの発泡スチロール
か,段ボールを二重にしてピンを止めればいい。
そして,究極の〈装置〉は? ただの厚紙一枚である。巾8cm×
5cmほどの厚紙に糸を絡ませてリングを落とせば,リングの絡まり
も100%OK。
なんとシンプルな〈装置〉だろうと,我ながら感心した。
さて,子どもたちにはできるだけ安いリングと糸を提供したい。今のところ最初に取り上げた
カードリングが一番安い。ただ,径4cmのカードリングは細くて軽い。リングを落としても,たこ
糸の縁をするするとそのまま落ちてしまう。
では,どうすれば成功率100%になるか。
ア 径4cmのカードリングを2重にする
イ 径の大きいカードリングを使う
〈実験〉の結果はどうだろう。
わたしの〈実験〉では,「ア」はうまくいかない。しかし,径7cmのカードリンクならほぼ100%の
成功だった。重さと径の大きさ(回転力)が関連しているのだろうか。
径7cmのカードリンクは1個30円くらいかかるが,たこ糸は2円もかからないので,これなら
子どもたちにも安く提供できる。安価でだれがしてもほぼ100%の成功率がいい。
さて,2年前に書いた資料で,リングがからまる理由として「リングが鎖に触れながら落下すると,
鎖に振動が起き,共振で鎖の先端が跳ね上がり,落ちてきたリングにかぶさるのです」という国友案
に納得していた。しかし,どうやら,それ以上に,リングの回転作用がものいうようだ。リングがうまく回
転するしくみを考えることも重要な要素ということになる。また一つ謎がとけた思いだ。
子どもたちとともに,安価な回転リングで遊んでみませんか。
2007,09,09
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