ペットボトル・トルネードの
          究極ジョイント作り 
                          
 数年前に、仮説実験授業研究会でペットボトルを二つつないで、上部だけに水を
入れて、うまく竜巻をおこすと見事に上の水は下に落ちるという、とてもおもしろいお
もちゃ(実験器具)を見せている人がおられた。(尾坂紀生さんと河上温和さんとのこ
と…林秀一さんレポート)
 ここで使われていたのは、プラスチックで初めから製品化されたジョイントで、なか
なか丈夫にうまくできていた。わたしも、2個ほど買って帰った。
 その後、このジョイントを使ってわたしの勤務している野外活動センターなどにこの
ペットボトル・トルネードの装置を置いて、センターの利用者に楽しんでもらったりした
いた。
 たまたま、昨年7月に笠岡市立図書館で科学遊びの会をするということで、夏場だ
し「空気と水」のプログラムを組んだ。その時に、ひらめいたのがこのペットボトル・ト
ルネードである。これは、授業書「空気と水」の追加問題としてもおもしろい。
 そこで、ここで使われているジョイントをなんとか子どもたちも簡単に作れるような方
法はないかと、いろいろ思いめぐらせた。最初に思いついたのは、ペットボトルのキャ
ップに穴さえ空けておけば、二つのキャップをつなぎ合わせることは子どもたちの工作
としてもでもできるということである。これは、簡単なようでも実際にやってみるとなか
なかめんどうだったが、なんとか下記の方法でやってみた。
 
・キャップの穴空け 
 ペットボトルのキャップに穴を空けるのは、やはり、図書館などでは一度にむつかしい。
そこで、この穴だけは先に空けておくのだが、大量に穴あけする方法も苦心した。
 初め、電気ドリルで簡単に穴は空けられると思っていたが直径8mmものキリ(針)をま
わすと、プラスチックのキャップにドリルの針がくい込んでしまってなかなか一度には空け
られない。
 次に考えられるのは、革製品などを作るときの打ち抜きポンチを使う方法がある。これ
は金槌で何度かキャップをたたくとうまく穴は空くが、これも
100個近く穴を空けるとなるとかなり疲れてくるし、ポンチも切れ身が悪くなってくる。
 そこで再度電気ドリルに挑戦した。電気ドリルをスタンドにしっかりと固定し、ドリルのキ
リ(針)は値段は高いが木工用ではなく金工用のものを使い、ゆっくりとゆっくりと徐々に下
のキャップに力を加えていく。キャップは回らないようにしっかりとつかむ。そうすると、なん
とか楽に穴が空けられることがわかった。こうしてだんだんとそのコツがのみ込めるとかな
りスピーディーに、穴あきキャップを量産することができた。
 
・キャップの接着
 次に二つのキャップを背中合わせにくっつけるのであるが、これも先にボンドをつけて作
っておくのなら簡単であるが、やはり、これくらいは子どもたちにもその場で作らせたい、
とするとボンドではすぐに乾かない。そこで、両面テープで二つのキャップを接着し、周りを
ビニールテープで巻くことを試みた。両面テープも「強力テープ」と名のつくものを東急ハン
ズで購入してきて、それを使うとよいことがわかった。この方法なら、なんとか水ももれず
に子どもでもうまく作ることができる。
 
・実際にやってみて
 こうして用意した穴あきキャップと両面テープ、ビニールテープを、笠岡での科学遊びで準
備した。子どもたち50人ぐらい来てくれていて、「空気と水」の予想問題にも盛り上がったが、
このペットボトル・トルネードも大人気であった。さっそく、キャップのジョイント作りにも取り組
んでくれた。
 しかし、やはり元気な子どもたち、せっかく作ったペットボトル・トルネーダーも、ぐるぐるぐる
ぐる回しているうちにはずれるものも出てきた。子どもたちは力の加減までしないので二つの
キャップがときどきすっぽぬける場面もあった。この方法でも8割はうまくいったが、少しは水
漏れがしたりはずれたりした。はずれた場合については、「家でボンドでつけてください」と話
したりした。でも、自分で作ったペットボトル・トルネーダーを回して、何回も楽しんでくれた。 
     
・他の方法をさがして
 以来、あまりこのトルネードにはかかわらなかったが、最近になって、科学読み物研究会の
方で『科学あそび大好き』という科学遊びの本の続編(第3集・連合出版)を出すということで、
わたしもいくつかの原稿を書くことになった。そこで、このペットボトル・トルネードを取り上げた
ので、なんとか、もう少しうまい方法はないものかと再度考えるはめになった。
 そこで、何かいい方法はないものかと、もの作りには何かとくわしい滋賀の広瀬さんにメール
を送ると、高槻の林秀一さんが、フィルムケースで二つのキャップを挟む方法を考えられておら
れるというメールをいただいた。
 そこで、さっそくわたしもフィルムケースを輪切りにして二つのペットボトルのキャップをつない
でみた。ペットボトルのキャップの外径は約30mmで、フィルムケースならぴったりとキャップを押
し込むことが出来た。なかなかいいものに気がついたものだと感心した。ただ、何度か出し入れ
しているとフィルムケースが割れることがあった。
 しかし、手短に作るにはいい方法なのでこれも、『科学あそび大好き』に紹介したくなって、林
秀一さんに了解の電話をさせてもらった。
 
・さらに、楽な方法をめざして
 フィルムケースも大量に使う時に一度にたくさん集めるのも大変だし、それなら他のしっかりし
たもので、この二つのキャップをうまくつなげられないかと思案していた。すると、排水などに使う
経の大きいゴムホースではどうかと思いついた。そこで建材店に行くと、うまく手頃なビニー
ルホースが並んでいたので、2種類買って帰っていろいろ試してみた。市販されている太いビニ
ールホースは内径が25mmで、そこにペットボトルのキャップを押し込むのはちょっと無理がある。
 もちろん、これは少し加熱して柔らかくすればキャップが入らないことはないので、理科室など
ではうまくできる。しかし、これもガス等の設備のない場所でたくさんの子どもたちにするのは無
理がある。
 そこで、それならいっそのこと、このキャップを使わないでできないか、と次に考えることになっ
た。やってみると、うまいぐあいにこのゴムホースの中にペットボトルの口が入るではないか。測
ってみると、このゴムホースの内径25mmはペットボトルの口の外径とまったく同じである。
 これで、水漏れもなく、ある程度の強度があれば、ペットボトルのキャップを使わないでそのま
ま直接ペットボトルどうしをつなぐことを考えればいい。そして、二つのペットボトルの間に何か穴
の空いた輪っかをはさめばいい。もし、この方法でうまくできれば、ペットボトルのキャップに穴を
空けるというめんどうなことからも解消される。一挙両得だ。
 そこで次は、このペットボトルの間に直径10mmほどの穴の空いた外径25mmほどの輪っかを作
る方法を考えた。これは、プラバンなど薄いプラスチックの板などで簡単に作ることが出来る。薄
いプラスチックのシートなど、少し堅めのものも市販されているし何かのケースを使ってもいい。
また、このぐらいの工作なら図書館などでも、子どもたちにも簡単に切り抜くことができる。もし、
穴をあけるのがめんどうであれば、これこそポンチで打ち抜いてもいい。薄いので、ポンチにも負
担はかからない。
 
・究極のアイディア
 だがしかし、だがしかし、この輪っか作りもめんどうなこともあるので、なんとか初めから穴の
空いた手頃な丸くて安い既成の板はないものかと思いを巡らせていると、ついに思いついた。丸
座金を使えばいいのである。丸座金というのはボルトのネジを締めるときに挟む鉄の輪である。
ワッシャーとも呼ばれている。
 ちょうどいい大きさのがないか建材店を探すと手頃なものが見つかった。
  丸座金M12 外径25mm、内径12mm
これなら見事にこの工作にピッタリである。一箱30個入りで300円である。
 これで試作すると見事にトルネードした。内径が12mmなので豪快に水が落ちる。
 なお、ここで使うゴムホースは小型のハサミでは切りにくいので、肉厚のハサミで切るか、大き
めのカッターを使うとうまく切れる。
 この方法では、長さ約3cmのゴムホースと丸座金一枚で、このトルネード・ボトルは出来る。究
極のトルネード・ボトルではないかな。
 
・お礼
  なお、数日後に林秀一さんから以前(1997年11月)に発表されていたレポートを送って下さった。
これを見ると、林さんの方でもビニールホース(山田暁子さん案)が使われていた。そして、その見
本も送って下さった。林さんの試作品では、このビニールホースに、穴を空けたキャップを挟む方
法が取られていた。しっかりとしていて、これもなかなかいいものだ。林さんの試作品の方がいか
にも「竜巻発生器」らしく見える…。                           2000,11,29                          

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