181 2009年6月号
議会の表決方法

賛否は議員の責任で行うべき 会議規則は議会の自律権

 大阪府庁のWTC移転条例案は、3月24日未明の府議会で賛成46、反対65、無効1の結果で否決になりました。(詳細は本誌4月号)
 自民会派では賛否が分かれ、民主は会派の意見がまとまらず自主投票。表決(採決)が無記名投票であったことから、その後も、自民党会派内では紛争し、6人の議員が離団する騒ぎになりました。
 表決(採決)とは、「議員が賛成または反対の意思を表示し、これを集計する行為」をいいます。表決の方法には、@簡易表決、A起立表決、B投票表決があります。いずれの表決を採用するかは、事前に議会運営委員会などで賛否確認によって決めます。
 議案に対して全議員が賛成する場合は、「異議無し!」とした@簡易表決。賛否が明らかにわかる場合、議場で賛成者が起立するA起立表決。賛否が同数に近く起立では判別が困難な場合に投票表決を行います。この場合に、記名投票か無記名投票があります。
 記名投票の長所は、賛否不明投票や白票の防止、投票議員の明確化があげられ、短所は、原案反対でも、地域や会派事情で賛成しなければならないという真意でなくなる欠点があります。
 WTC移転条例案の時の表決方法は、議会運営委員会理事会で、投票表決することを決定、その方法に、記名投票と無記名投票の両方の要求が出されたため、いずれにするのか「無記名投票」決め、手続きは府議会会議規則によって民主的に進められました。
 しかし、橋下徹府知事は「地方分権のためには、記名投票は最低限の要件」と主張し、WTC移転条例案否決が気に触るのか、あらゆる場所で、無記名投票を批判しています。
 会議規則は、議員の合議体である議会の自律権の一つであり、知事も尊重しなければなりません。平成6年12月定例会で中川知事後援会の政治資金規正法違反事件で知事給与減額条例案や平成12年5月定例会の銀行税条例案では記名投票で表決しています。
 議員が議案の軽重を判断し、地域事情や利害団体の考えに制約されることなく自由な意思表示をするためにも記名投票とするか無記名投票にするかをその都度選択できるようにしてあります。
 国会では、議院内閣制の性格上、政党で態度を決めており無記名投票はありません。
地方議会の場合は、記名投票のみは、長野県、愛媛県、福岡県。無記名投票のみは、新潟県、静岡県、奈良県。それ以外の41都道府県は、記名投票と無記名投票のいずれかを選択する方式を採用しています。
 賛成したか反対したかは、議員個人の責任において選挙民に表明すべきことで、記名投票制度したからといって透明性が確保できるわけではありません。
 今回のWTC移転条例案も、府民が見られる議事録には「第136号議案・大阪府庁の位置を定める条例制定の件」とあるだけで、記名投票にしても賛否はわかりません。議案の表示方法の見直しこそ議論すべきです。


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