○ 繊維博物館で見聞を広める |
この日はプラート産業連盟での懇談の後、午後からは現地企業訪問・懇談になっていましたが、予定よりも案外と早く終了したため、明日の午前中に訪問する予定になっていた繊維博物館へ向かいました。途中にかなりの規模のチャイナタウンをバスから見、イタリアにも有るのかと驚きました。
3時前に繊維博物館に到着し、館内の展示品などをご案内いただきました。この施設は1975年にオープンしたもので、個人コレクターの提供で出来上がっています。1800年代からあった工場敷地が10,000uを超えており、ここに1860年に、染色を中心とした織物工場がつくられ、その工場施設をそのまま転用したため、当時の織機を始めとする様々な繊維関係機器も保存されています。 |
館内には3〜4世紀頃の布地や衣服(ウール・綿・麻など)もあります。遺跡の発掘で出土した物も展示され、またそれらの絵柄などの多くが「キリスト教」に関するもので、まるで教会の中の資料を見ているようです。またルッカ地域で作られ、イスラムの影響を強く受けた衣服も一部ですが、展示されています。
これが繊維博物館の入り口です → |
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フィレンツェの地域でよく使われていた高価な生地(シルクをベルベットのように見せる14〜15世紀の生地)なども飾られ、当時は家具やインテリアにも多用されていたようです。
16世紀に入ると格段に技術が進み、近代と同様の高価な絹製品などが目立ってきます。特にこの当時、フランスのリヨンで作られる製品は花柄や立体感があり、先進的で技術力も高く、多くの人がリヨンに学び、帰国した人々がいろいろな工夫をこらして各地へ広めていったようです。
また19世紀に入ると、プリント技術が導入されたことから、織り込んでいくのではなく、上からプリントするために様々な濃淡・デザイン・絵柄が表現できるようになっていきます。室内は写真が厳禁とされているため、これらのことを言葉で表現することは本当に難しく、適切に表現できているか分かりませんが、ご理解ください。
2階へ上がると、中世から今までの織物機械を展示しています。またその側で、2004年に発表される予定の極薄の生地も置かれています。さらに、同じ素材を使ってどれだけ感触の違う物が作れるのかというコーナーや、防弾用の生地なども展示されています。実際に触れてみて、こんなに感じが違うのかと驚く物もありました。
そして、西暦2000年を祝う大聖典の際に、ローマ法王が着用された衣が、それを伝える新聞写真とともに展示されています。衣は赤・金・青などで煌びやかな物ですが、その材質がビスコースやアルミニウムであると聞かされて、私たちはすっかり驚きました。約2000年前、人の手によって素材を自然のままに使用し、さらに工夫をこらし、近代科学の発達の中で、それを様々な形に活用・変化させてきた私たち人類の歩みに、何か遥かなるものを感じました。 |