民主党無所属ネット議員団・スペイン行政調査団
大阪府議会議員  中村哲之助


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NGOが役所をリード(3月26日)


 この日は、午前中は世界遺産に登録されたグエル公園とバルセロナのオリンピック施設見学、午後はNGO団体と懇談し、その活動を学ぶことになっています。時差の関係でどうも熟睡ができず、少し体が重く感じられます。
 建築家ガウディの作品であるグエル公園は、元々分譲住宅を予定したものが、まったく販売見通しが立たないため、今日の姿を残すことになったようです。吹田市の万博跡地にある太陽の塔の作者・岡本太郎氏はここで長く学んだようで、その作品の原型がここにあります。またこの先、何百年と工事が続くだろうと言われる「聖家族教会」の工事現場は多くの人達が訪れ、宗教の持つ力のすごさに圧倒されます。

公共事業への考え方

 バルセロナ五輪のメーンスタジアムやプールなど、巨大施設を見学しましたが、ここで全員が感心するのは、「競技が終わった後の対策」についての説明です。
 例えば、わが国で少し前、日韓共催でのサッカーW杯が開かれ、各自治体が我も我もと誘致に励みました。そして、競技が終わった後、その施設の維持管理に今では手を焼き、大きな財政負担になってしまっています。バルセロナ市ではこれを防ぐため、様々な計画の下に建設され、現在は民間に運営を全面的に任されていますが、十分に採算ベースに乗り、地域の利用も結構あるようです。メーンスタジアムでは、地元の高校生やプロのサッカー試合はもとより、著名な音楽家の利用などで賑わうとともに、観光コースにもなり、その面でのメリットも大きいとか。

 また、会場の建設に当っては、できるだけ自然を破壊しないようにとの配慮から、道路の舗装一つにしても、写真のように、家庭ゴミとして出される空き瓶や、解体現場のコンクリート片などを材料として使用しています。これなら、一部が凹んだり壊れたりしてもそんなに目立ちませんし、修理もその部分だけで簡単です。
 世界遺産とオリンピック施設を視察した私たちは、バルセロナ市の港湾局が置かれている海岸へ向かい、ここでNGO団体のエコ・メディテラネア(以下、MT)の活動家とお会いし、バルセロナ市の環境政策とNGO団体の活動実態の説明を受けました。特に、活動は、
  1. 地中海の海水を美しくするための取り組み
  2. 港湾の事業が都市住民に及ぼす影響への対策
  3. 公共事業への積極的な提言
  4. 環境専門家の育成
 などに力点を置いているとのことで、これらの具体的説明に私たちは驚きの連続でした。
 とりわけ、セメント・石炭ガラなどの積み下ろしの際に、粉塵がどういうかたちで飛散するのか、それを分析し、そのためにどこへフェンスを張ればよいか、完全に遮断するための密閉化への取組みなどを、MTが市港湾局へ強く働きかけ、今では逆に、市役所からMTが仕事を依頼され、港湾の事業者が適正に仕事をしているか、他に新たな問題は生じていないかなど、日々を忙しく活動しているとのことでした。

 さらにその後、バルセロナ市民が気管支炎で悩む比率が全国平均よりも高く、何らかの問題があるのではないかと調査した結果、大豆の積み下ろしの時期にそれがよく発生することが判明(大豆に含まれるプロテインによる)。そのため、

  1. 大豆を扱う船をすべて密閉型にする
  2. 市が病人の追跡調査を始める
  3. 市は大豆の積み下ろしに伴う様々なルールをつくる
 などの「官・業・民」合同の取組みが始まったということです。当時、誰一人として、大豆が気管支炎の原因になっているなどと思ってもいなかっただけに、大変な成果だったと思います。
 わが国では、民は官の言うことを聞かされ、役所のルールに従わなければならないという風潮が極めて強いだけではなく、むしろ「世間から注目される大きな活動をする団体は目障りだ」と言わんばかりの言動や、時には排他的な行為さえも見られるだけに、MTの先進的な活動と、これを支える国民性に頭が下がります。
 最近では、船舶からのオイル流出対策、汚泥が堆積し始めた河川の流路変更対策、産業廃棄物と不法投棄対策などにも積極的に取組み、また一方で、地中海沿岸の他団体との交流も盛んで、そのリーダー的な役割も果たしているとのことです。今後の益々の活躍を祈ります。

写真中央が中村議員


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