民主党無所属ネット議員団・スペイン行政調査団
大阪府議会議員  中村哲之助


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 バルセロナ市の都市政策  

 私たちの公式に計画した日程とは別に、現地ガイドとの話し合いや、現地の姿そのものを見ることも大きな課題です。バルセロナ市で特に気付いたことなどを少しまとめてみました。

少子化と労働力・暮らし

  スペイン全土の合計特殊出生率(以下、出生率)は今、1.0〜1.1だということです。わが国よりもさらに少子化が進み、このままでは大変なことになってしまうと、危機感が強いことを知らされました。このため、慢性的な若年労働力不足に陥っており、海外特に中南米やモロッコなどからの移民も相当数に上っています。これがまた、現在の雇用情勢と絡み、一層複雑な状況を生み出しているようです。わが国のこれからのことを考えると、他人事ではありません。
 また、極端な少子化は住宅事情にも大きく影響しています。スペインの持ち家率は約90%ですから、ほとんどが持ち家と考えられます。つまり、出生率が1.0〜1.1ということは、新婚夫婦が将来、親が所有する家のどちらかに住んだとしても、一方の家が余ることになります。そのため、スペインではわが国のように、生活費の中から多額の「住宅費」を出費しなくてもよく、さらに医療費・教育費はほとんど無料ということで、この面でも生活費の構成はわが国と大きく異なっています。
 スペインの平均的な所得は20万円〜30万円で、消費税は日本の約3倍です。実際には中間管理職クラスが40万円程度で、大半のサラリーマン・職人・単純労務者は平均的に10万円余りのようです。この国は完全な職能給ですから、経験年数の長短で所得はほとんど変わらず、わが国の勤労者に比べると、かなり所得水準は低いものになっています。しかし、前述のような理由で、生活水準は結構高く感じます。


高齢者に優しい街づくり

 また、町は高齢者の生活を守るために、一周100〜150m程度(A,B,Cなどのそれぞれの区画)のエリアに、薬局、雑貨屋、食料品店、理・美容店などの日常生活の上で必要なものは、

 ほぼ配置されるようなつくりになっています。大きなアパート・マンションはほとんど1階が店舗、2階は事務所などで、住居部分は3階以上です。
 また、そのような観点から、市の政策として、旧市街地内では大型店舗の進出規制をかけ、町内で永年続いてきた「小さな個人商店=小売店」を擁護する姿勢を打出しています。郊外へ出かけると、日本と同様の大型スーパーを時々見かけますが、スーパーといえども、日曜日は営業を許されていません。
 わが国では何でも規制緩和され、大規模店舗やコンビニの進出ラッシュで、街の中に古くからある市場や個人商店が衰退していくのとは大違いです。郊外のスーパーへ買い物に行けない高齢者にとって優しい、「都市政策・暮らしの基本」を、私たちは今後、スペインの制度に倣ってつくり上げていかなければならないでしょう。  なお、スペインなどのヨーロッパの国々では、私たちの言う1階は0階(L階・G階などの表示もあり)、2階は1階と呼んでいます。


都市交通の見直しへの取組み

 私は2日目の朝、比較的早く目が覚めたので、何か新しい発見はないかと、カメラを持ってホテルの周辺を散歩しました。
 この街にはケバケバしたネオンや広告もなく、実に落ち着いた、通勤・通学の人達の朝の風景です。日本のような交通渋滞とまではいきませんが、それでも結構、車は多く、混雑しています。そのような中で、トラムが空っぽで走行しているのに遭遇しました。これはバルセロナ市街の交通体系を見直そうとして、現在、トラムの導入のための「試運転」だということです。日本と同様に、この地域でも「市電」がかつては重要な乗り物であったのが、時代の流れの中で次第に車に主役を奪われ、ついには廃止されてしまったトラムを、もう一度、主要な都市交通機関として復活させようという計画です。

 昨年、フランスのストラスブールへトラム(LRT)の視察に出向いているだけに、アレッという思いが強く、そのトラムが停止する駅の状況はどうなっているのかを見に行きました。プラットホームは道路から約20cmの高さで、緩やかなスロープが設けてあり、車イスでも楽々と乗車できるストラスブールとそっくりです。各国の中心都市は一様に、「車の洪水」による交通機能低下に悩み、次代の都市交通のあり方を検討し、具体的な施策の必要性に迫られていることに気付きます。後に、このことを現地のガイドに質問すると、本格的な営業が実現するまで並大抵ではないようです。

これは一体どう説明すればよいのか?

 私たちの視察は、近距離の移動は専用バスで行いますが、視察目的地・港湾局の近くにある「ジプシー村」の隣の公園で、「異様な風景」を目撃しました。それは、いわゆる「注射」をしているのです。荒れ果てた公園・広場のようなところで、10人、20人以上が固まって交代で注射をしているような風景は異様としか言いようがありません。
 このことが早速、バスの中で話題になり、帰りのバスでもう一度ここを通り、これをゆっくり視察しました。現地通訳の説明では、彼らはエイズなどに侵されているようで、街の中で時々、注射器を持って人に近づき、「この針を刺されたくなければ金を出せ」と、強盗のようなことをする者がかなり出てきたため、市が「治安・感染防止」の両方の立場から、彼らを一ヵ所にまとめ、軽い成分の注射液と注射器を支給し、これで一般市民の生活を守っているとのことです。始めて見た異様な風景に、ひょっとして日本でも‥‥と、心配になります。



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