民主党無所属ネット議員団・スペイン行政調査団
大阪府議会議員  中村哲之助


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JETROでスペインを知る(3月30日)


 いよいよこの日で今回の視察も終わりで、明日は帰国です。スペイン時間に慣れてきたのか、不思議にモーニングコールの1時間くらい前に目が覚めます。しかし、今日も雨です。よくこれだけ雨が降るなと感心します。地中海地域は本来雨の少ない地域で、普通なら今頃は20〜25゜程度の気温で、暖かい日は泳げるくらいのはずです。何十年ぶりかの異常な寒波のせいでこんなに寒く、雨ばかり。聞くと、私たちが帰った頃から普段の陽気が回復するようです。

 この日は午前11時に在スペイン・マドリードのJETRO=日本貿易振興会を訪問する約束になっています。そのため、朝一番に、国立プラド美術館を訪ねました。移動時間などを考えると、わずか1時間しかないため、ガイドにあらかじめ、有名な絵画などの紹介をしてほしいと依頼してあったので、ゴヤ・グレコ・ベラスケスなどを中心に駆け足で回りました。
 レンブラントの夜警(オランダ)、ボッティチェルリのビーナスの誕生(イタリア)とともに、やはり、世界3大人物画と言われる、ベラスケスの「宮廷の侍女たち」は圧巻です。遠近法・光の魔術は当時、余人の及ぶところではなかったでしょう。また、ヨーロッパ各国の王室の興亡が、プラド美術館が所有する至宝の絵画の中に表現されています。何年か先、もう一度ここを訪れるチャンスがあれば、ぜひ丸一日をとって、ゆっくりと鑑賞したいと思います。

 マドリード・ジェトロでは、小笠原ゼネラル・ディレクターに迎えていただきました。ここでも警備は厳しく、写真のようなカードを発行し、一人ひとりがこれをチェックポイントに通して入場します。


入場に必要なカード

ジェトロ事務所正面

 ここでは、スペインの最近のGDPや消費者物価の上昇率、失業率と移民、対日貿易の実態、日本企業の進出状況、列車爆破事件の政治的影響など、様々なテーマでの説明と質疑が行われました。主な説明と議員団からの質問などの論点は
  1. EU加盟国の拡大と通貨統一の中で、物価が非常に上がったこと。特に住宅の価格が大幅で、ここ数年で、30〜40%も上昇していること
  2. 少子化に歯止めがかからず、合計特殊出生率は1.0に近づいていること
  3. 海外からの労働者の流入と移民の受入
  4. アメリカのイラク攻撃への非難が益々強まっていること
  5. 政権党のPP(民衆党)の予想外の総選挙大敗北と社会労働党の躍進
  6. 日本企業のスペイン進出290社(内、製造業は67社)の状況
  7. 在留邦人約5,400人と日本人の移住の状況
  8. 対日貿易上の特徴
  9. ONCE(オンセ)の制度
  10. スペインにおける出産・育児休暇      などです。

オンセ・休暇制度に驚き

 オンセは、非営利団体で、視覚障害者の生活向上を目的とした団体のことで、月曜日から木曜日までの一般的な宝くじと、賞金額の大きい金曜日の宝くじ、年に4回のジャンボ宝くじを全国で販売しています。現在、スペイン全土で23,000人以上の視覚障害者が、オンセの宝くじ販売員として就労しています。
 オンセは視覚障害者の社会参加促進をめざし、1938年に創設された公共団体で、現在会員数は64,000人を超えています。わが国でも、障害を持つ人たち、とりわけ視覚障害者の就労・雇用がさらに促進できるよう、このような制度を大いに活用しなければと、全議員が熱心にメモをしていました。

 また、スペインの出産・育児休暇は国内法で詳細が定められ、ほとんど守られているようです。出産休暇は6週間で、母親は出産後、必ず6週間の休暇をとらなければなりません。さらに、育児休暇として両親のどちらかは、出産前後に10週間の休暇をとる権利が保障されています。また2人目からは、2週間ずつ休暇期間が追加されます。さらに、父親・母親の両方が同時に5週間ずつ休暇を取ることもOKです。わが国の出産・育児制度、そしてこの休暇取得状況と比べると、大きな違いがあることに驚きの連続でした。

 さらにスペインは、親族の結びつきが極めて強く、日本で「親戚」の考え方・繋がりが次第に弱まっていくのと正反対です。夏休みは大半の人が1ヶ月連続で取得しますが、その間に、親戚ばかりが一堂に会する日もあるようです。
 現在、スペイン国内での3大関心事は、1.移民 2.治安 3.失業率だという説明があり、大阪府の重要テーマである「雇用・安全(治安)」の二つが丸々同じであることに、何かすごい親近感を感じました。

 ホテルには午後3時ごろに帰り、これまでにいただいた資料などを整理するとともに、帰国に向けての準備を行いました。私は夕方、少し時間がありましたので、近くにあるマドリード三越へ買い物に出かけました。買い物客は先に5〜6人入店していましたが、日本人ばかりです。



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