2010.04.15.〜 04.22.
中村哲之助議員の訪問記
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POLの教育制度を学ぶ(4月19日) ・・・  ・
 05:00起床し、洗面。外はまだ暗い。05:20(日本は12:20)事務所へ電話すると、皆さんが心配しているようである。T氏は「本当に予定どおり帰国できるのか」とわざわざ問合せてくれているとのこと。当面、帰国予定後の24、25、26の3日間に計画されている行事などには「やむを得ず欠席になるかもしれない」ということを連絡するように指示。さらに、4月中に報告しなければならない2009年度の政務調査費の件は、できるだけ作業を進め、提出可能な状況にしておくよう連絡。
 この日は07:15モーニングコール、08:00 部屋の外へバッゲージダウン、08:55 ロビー集合、09:00出発の予定。朝食はロビー1階奥のレストランで、07:00から自由にどうぞとなっている。私は荷物をある程度まとめ、06:00フロントへ。散歩に1時間程出てくると告げてキーを預ける。堡塁で囲まれた旧市街地から外に出て、新市街地を見てまわろうかと思う。朝の出勤時間帯なのか、忙しそうに歩く女性や、バス停でバスの到着を待つ人を多く見かける。朝は日本よりもかなり少し冷え込んで寒い。堡塁の上部はどうなっているのかと登ってみる。堡塁はなだらかな傾斜で子どもでも簡単に登れる。高さは7〜8メートルくらい、その幅は10m以上もあり、雑草が生い茂り、タンポポも黄色い花を咲かせている。幅が4〜5mくらいの小さな川には鳥がスイスイと泳いでいる。降りてメイン道路へ出ると、バスがよくやってくる。歩道は広いが、道路は穴ボコだらけ。日本だったら、自転車やバイクが転倒するからすぐ補修‥‥だろうが、相当以前からの傷みに見える。
 ZAM市の人口から考えると、こんなに大きな陸上競技場が必要なのかと思うほど立派なグランドがある。その反対側にはフットボール場が建設中である。つい最近までここが県庁所在地だったので、こういう施設があるのだろう。またこのあたりでは、KRKのような弔旗は余り見られない。30分程して来た道をUターンし、旧市街地へ戻る。昨日の案内された道と別の方を通ると、歴史的な建物の大規模改修が目につく。
 07:30 ホテルへ帰り荷物をまとめ、トランクを部屋の外へ出す。07:45〜08:10朝食をとる。部屋へ戻って5分程するとドアがノックされ、府庁から届いたFAXを封筒に入れてもってくる。A4用紙が約40枚もあり、このホテルではこんな大量のFAXは初めてだという。中を見ると、大阪維新の会や児童虐待の事件などを大きく伝えている。08:50にフロントへ行き、チェックアウト。08:57に出発。ルブリン(以下、LUB)までは1時間20分〜30分くらいの予定という。私達が訪問するLUBでの調査テーマは「現在の教育課程と課題について」であることから、車中でMALさんがPOL国全体の教育環境(現行の休日制度)について少し説明してくれた。

POL国の義務教育は、6月20日過ぎの金曜日から8月末日までの約65〜70日間が夏休み、11月1日は日本で言う盆休みにあたり数日の休み、次に12月22日〜新年の1月2日がクリスマスと正月休み、冬休みは1月後半から2月前半にかけて地域毎に決める。例えばA市では1月20日から2週間、B市は2月1日から2週間というように、それぞれの地域が弾力的に運用していいそうである。次に復活祭、また5月は日本と同様にゴールデンウィークとなり、1日はメーデー、3日は憲法記念日などがあるので、連続して休みとなる。一方で、大学生の夏休みは5月末のテストがOKなら9月末までの4ヶ月間が休みとなる。しかし、POL国では大学の入試がない分を在学中に必死になって勉強しなければ卒業できないため、どの学生も夏休み期間中は個人個人が課題を設定して勉強しているとのこと。MALさんは「日本では大学に入るために猛勉強するが、入学してしまうと後はバイトに精を出して大学へは来ないとか、大学へ来ていても授業中に居眠りするという学生が多い。POL国でそんな現場を見つかったら、直ちに先生から教室を追い出される」と説明。


 そんな説明を聞いていると、「皆さん、車の左側をご覧ください。大きな黒っぽいモニュメントが見えてくる。それが一昨日のAUSと同じようなマイダネク強制収容所だ。規模はこちらのほうがずっと大きい」とMALさんが指を指す。私は急いでシャッターを押す。モニュメントのかなり向こうに霊廟が小さく見える。私達は先日来から、ある程度強制収容所についての知識を入れていたので、「エッ、これが?」と思う。AUSの方は特に有名であるが、歴史的にはこちらのほうが古く、規模などもずっと大きかった。
1日に1,000人もの遺体を焼いた焼却炉は今も完全な形で残されているし、横にある霊廟の中にはここで焼却された人々の灰が積まれているようだ。270Haもの敷地に点々と当時のままのバラック(収容棟)が目に入る。このような場所が今なお残され、多くの人々がここを訪れ、人間の負の遺産に触れる。人としての尊厳を奪われ、ガス室へ送られ、そして焼却‥‥。何と思いテーマを私達に負わせ続けるのだろうか。
 10:20 雨が降り出した。周囲が少し暗くなり、私たちが走る国道17号では対向車の内の何台かがライトを点けている。まもなく、LUBに到着である。
 人口が約35万人のLUB市文部教育省に到着した私たちは早速、2階の会議室に案内された。
 10:30 調査団を代表して冨田議員が「お忙しい中をわざわざ時間をとっていただいて感謝している。また、今回の不幸な出来事に対して心からお悔やみ申し上げる。追悼行事などで大変だろうが、これを乗越えられ、貴国と貴市が発展されるよう祈る」と挨拶。
・応接者 ピョートル・ブレク 文部教育副部長 他1人
・テーマ LUB市の現在の教育と課題
 ピョートル・ブレク 文部教育副部長は歓迎挨拶の中で、「当初は部長が皆様方に挨拶・説明する予定であったが、WAWでの追悼行事で体調を害し、出席できなくなった。大変申し訳なく思う。今日は私が変わって説明する」と述べられた。
 同氏はまず、全ヨーロッパにおける各都市の「文化教育活動のプログラム」を評価する制度があり、LUB市は2016年の選考で選ばれるように努力している。ここで選ばれることはヨーロッパ全体から「文化・教育分野の先進都市」として認定されるからだと説明。
 同氏は、
  • POL国では6〜19歳までを義務教育期間としている。6歳になるまでは幼稚園などに通わなければならないという決まりはないが、6歳になると、幼稚園もしくは小学校の「ゼロ」というクラスに入る。
  • 親は子どもを6歳で入学させるか7歳で入学させるかを選択することができる。
  • KRKでも説明があったとおり、全て9月1日から新学期となり、卒業試験は小学校・中学校・高校全てで行われている。
  • 中学・高校は各自が自由に学校を選択できるが、全て直前の卒業試験の成績によって希望校に入学が○か×となるかが決まる。
  • 希望校に入学できない場合は教区内(日本の校区)の学校に進む
  • 義務教育は誰でも卒業できるが、常に成績で評価されるので、成績が低位の生徒はリッツェルンといわれる学校(上層中等課程学校)へ進む。ここを卒業するといろいろな資格はとれるが、就職はかなり困難なようだ。さらに専門学校に似た学校もあり、ここでは2〜3年間学び、卒業後は建設現場などで働く者が多い。
  • 希望校は3校まで選べるが、全てコンピューターによって順が決められる。希望校への入学が不可能なときは自ら進路を探すことになる。
  • 一般的な学校とともに支援学校・音楽学校の設置、さらに遠方からの生徒のために寮も4ヶ所開設し、児童虐待などへの対策としての児童養護施設もある
などの説明が続いた。議員団からはあらかじめテーマをお伝えしていたので、資料を作成して丁寧に説明していただいた。
 さらに議員団からは、
  1. 学校選択のあり方
  2. 私立学校との関わりと財政援助はどうなっているか
  3. 虐待や養育放棄の状況
  4. 少人数学級と小中一貫、中高一貫などの効果
  5. 他の地域との比較
  6. 2012年からの教育制度改革への取り組みと市民からの声
などについて活発な質問が出され、意見交換が行われた。
 私達は、相当な競争教育が実施されていること、2012年からの新たな教育制度改革に対して保護者はかなり戸惑いや反発があることなどを知った。長い間の社会主義体制による教育が、いま少しずつ改革されているようであるが、国民性にあったいい制度となるよう期待している。しかし、これからの改革はこれまでと違い、グローバル社会の中にあって、例えば、いまゆっくりと始まっている市場経済化が国民生活にどのような影響があるのか、娯楽環境などが一変した時、日本の子ども達のゲーム機などはどのような広がりを見せるのかなど、大いに注目しなければならない。